話題:最近読んだ本

江國香織の左岸を読んでいると好きという気持ちがよくわからなくなる。ぐちゃぐちゃに混ざり合った絵の具のように最終的には黒になるような。まだ半分しか読んでいないのに恋をしたくなくなってきてしまったのにまだ上巻。
最近読んだ本は、現実味をおびていなかったり、共感ができなかったりしている。左岸を読み終えた現代っぽいの読みたいから綿矢りさの私をくいとめてを読もう。唯一、よしもとばななのハネムーンは近いものをかんじた。小川洋子のやさしい訴えは、チェンバロを通して越えられない壁、世界があり、時に美しく、そして気持ちわるく感じた。世界をふたりだけに切り取ることはわるいことでないのに、そこで疎まれた主人公がどうにも不憫におもえ、どす黒い感情に支配されてしまうのもまた。抱擁、あるいはライスには塩の世界観もふしぎなもので、社会から孤立しながらも独立し確立しているお屋敷に住む一族は、左岸とおなじく1970年代前後の話なのでイメージが容易には浮かばないのだが、おもしろいなとはおもった。一族のなかでの暮らしが窮屈であるものもいれば、この窮屈さが心地よいものもいる。世間知らずとはこのことかと思わずにはいられないようなやり取りのなかでも必死に生きようとしている姿はたくましかった。

本を読むのも映画を観るのも余裕があるからできること。そして、客観的になれているということ。自分ひとりの世界に閉じ籠っているときは、なにも見ようとせず、ひたすらに黙々と閉じ籠る。客観性をもたないとひとと対峙するのはむづかしい。