四百五十七日目。
「残念だよなぁ、お前も。」
「…は?」
「その身長でもうちょっと痩せてたら、かっこいいのに。」
「…こと美容に関しては全く努力していないことは、否定しませんが。いきなり何ですかね。」
「本当もうちょっと頑張ればなぁ…。」
「…。」
…、職場の仲がいいキッチンのにーちゃんとの一幕です。
ええまぁ? 否定しませんよ? デブいってほど、デブくはないが。痩せているとは言えない感じ。
そもそも隣にトクメーと同じ身長で、体重が誤差十キロ以上って驚異のスレンダーボディーのお姉さんがいらっしゃいますから。
ちなみにお馴染みになりつつある、仲がいいホールのお姉さんのことです。
ふ…。この手の話題を無視し続けてきたトクメーですが。今回ばかりは聞く気になりました。真剣に。
何でかってーと、つい先日、全速力で走ったのに電車を乗り過ごしたのがかなりショックだったからです。
必死で走ったのに。最後足が上がらなくって終いには歩いたし。
持久力。どこいった俺の持久力。
もうちょっと走れた。平均値より上の体力あった。
代わりに瞬発力があればよかったんだろうけど。そんなものも欠片も存在していませんしねぇ…。
体は衰えるって聞くけど…、ここ数年でガクッて来たかも…。
つまりナニが言いたいかって、ダイエットといいながら筋トレ、もとい、体力作りでもしようかな…と。
腹筋背筋? 腕立て伏せ? でも腕に筋肉つくと、ただでさえ着るものに困ってるのにさらに困りそうだし…!
腕の筋肉は侮れない。上腕二頭筋は、ゴツい。
じゃぁ、やっぱり腹筋背筋? あ、スクワットもか。通勤時間はこれ以上長くできないから、一駅歩くとかは却下の方向で。
とにかく。体重落として脂肪の代わりに筋肉を導入する。
ゆくゆくは店から駅までダッシュして、電車に間に合う時速と体力を身につける。そんな地味な肉体改造…!!
ちょうどいいかもなぁ。ネタにもなるし。
ついでに体重もきっちり計って、日々記録してやろうか。食事メニューと一緒に。夏の終わりまでにマイナス七キロとか五キロとか。
…菓子屋のブログのネタではないな。確実に。どっちかって言うとOLさん?
「っていう、一幕がありまして。」
「『うっせーテメーばーか』って言った?」
「言えないです。」
「そこは言わないと!!」
「だってーー。」
のち。上記の報告をホールの仲がいいお姉さんとした時の話っす。
あのお人。最近お客さんが来ないもんで結構暇してるから、かなりの確率で話しかけに来てくれるんだ。おかげでトクメーはうれしい。
「正直努力全くしてないことに対して、反論ってできなくないですか?」
「…ん?」
「こう、勉強とか努力してちゃんとやってる人間に対して『もうちょっと頑張ったら?』とか言った奴は
そいつに刺されたって文句言っちゃだめだと思うんですよ。
もしくは『じゃぁお前、やってみろよこれ。』とか言われて撃退される。」
「例えが…。いやまぁ続けて?」
「えーと、つまり、…私もどこから影響受けたかもう覚えてないんですけど…、何の努力も払ってない部分を指摘されて、『もうちょっと頑張ったら?』って、正論じゃないですか。」
「うんまぁ、そうだけど…。」
「正論言われて怒るって、それはちょっと個人的に許さないというか…。
自分がそういうのやられるの嫌だからやらないようにしてます。なので体重云々言われたら素直に聞き入れますよ。」
「…真面目だねぇ…。」
「で。とにかく考えたんですけど。無理なく続けられる運動以外ないと思うんです。私が体重減らすには。」
「食事制限は?」
「そもそも食べる量が年齢で減ってるのにこれ以上減らしたら、一体何を楽しみに人生生きてるのか分からなくなるから嫌です。美味しいものお腹いっぱい食べたい。」
「なるほど。」
「減らした体重をキープするのも、その運動を続けなきゃいけないんですから。楽なもので。」
「…ソレって体重減るの…?」
「半年で五キロ。多分これならいけます。」
「…気の長い話だね…。」
「私。突発的犯行よりも、計画的犯行って言葉の方が好きなんです。」
「ダイエットって犯行だっけ。」
こんなくだらない日常(本人は、真面目。)
「とりあえず寝る前に、腹筋背筋柔軟をセットでやります。続けられたら、帰りの駅までダッシュを追加。」
「頑張ってねー。」
「有言実行。人に言った以上多分私の性格ならやる。」
「…なんか、自分のことなのに聞いてると他人事っぽく聞こえる…。」
「やるのは未来の私であって現在の私ではないので、他人事で合ってます。」
「…。」