「…うまい!!!!」
「あ。そっすか。よかったァ。」
某イベントに出店して早々に依頼主が商品を引き取りに来た。窯に長く入ってハラハラドキドキした上に面白半分でかった青マンゴーパウダーを使ったケーキを渡したんですけどその場で包装破いてバリムシャァ…。
そこそこの大きさのケーキだったのに。あれです15cmパウンドケーキ。これを2本。チョコバーか何かのノリでむっしゃむっしゃ…。いやいいけどさ。
なんか説明したらめっちゃ気になったらしい。おいしく作ってるのはそうなんだけど、こうやって反応が見られるとほっとすると同時にちょっとうれしいし照れる。
「もういっこない? 家までもたない。」
「ないっすね。ご注文分しか作ってない。」
「えー。新作にしないの?」
「一応棚に納まりきる分しか作らないって言う心情があるので。今満車なんです。」
「これは?」
「依頼なのでノーカウント。」
「えー。…じゃあ次の出店の時にまた作ってくんない? お金は出す。」
「…そんなに気に入ったの? これが?? いやそりゃもちろんおいしいと思って作ってるけど、これが?」
「うん。過去イチうまい。」
「ええええ…わたし2個前のとか結構好きだったんだけどな…。」
「あれはあれもおいしかったねぇ。朝鮮ニンジンのケーキだっけ。」
「それはさらに一個前のやつですね。まさか漢方持ってくると思わなくて途方に暮れたんでよく覚えてます。」
「おいしかったよ!!」
「アザッス。その一個後なので頂いたお茶でケーキ作って出しました。」
「トウキのお茶ね。あれもおいしかったなー。アンタなんか変なの作らせた方が上手でおいしいよ。」
しゃくぜんとしねぇ。
という一幕。ちなみにマジで気に入ったんだろう、追加製造をお願いされてまた別のイベントで引き渡しってことになりました。
…なんだろう。うれしいしありがたいのは本当なんだけど、そろそろ予算が心配になってくる。大丈夫かあのお客さんマジで。
特殊依頼だから結構お金は取ってる。それでいなくなるならそれでよしってテイにしてるんですけどそれでも買うんだ。大丈夫か。心配になってくるな。
それになー…。あのお客さん毎回ほめるもんだから、だんだんハードルが…。うっかり朝鮮ニンジンケーキにしたあたりから怪しくなってきたけど、どんどん変な食材持ち込んできそうで…。
タンポポ珈琲とかは楽勝だった。あれは普通に味の足りない珈琲扱いで出来た。その後なんか知らん名前の果物持ってきてこれもまぁいい。砂糖で煮詰めれば焼き菓子になる。カフェイン飲めない人用のルイボスティーパック、サフラン、…この辺で怪しくなってきたな…。代用ココア、中南米原産の謎の黒豆、朝鮮ニンジン、やったらめったら渋い漢方のお茶。この辺で一回余ってる食材に戻ってうにゃうにゃ。
作っておいて自分で言うのもなんだけど「お前はなんか、お菓子じゃない気がする…。」って出来上がりの朝鮮ニンジンパウンドケーキのウケがいいってのも釈然としなかったんだ。作るけど。できるけど。
まだ粉末だったからさー…。混ぜた後味覚を頼りに調節するだけでいいんだけどさ。…なんかなぁ!!
青マンゴーのパウダー。お前はいいやつだよ。素直ないい食材だよ。少なくとも朝鮮ニンジンと謎の渋いお茶より悩まず済んだ。しばらくあの依頼主を引き付けておいてくれ。