うそつきA




ドキドキしながら



アルバムを手にすると



アルバムの表紙にまる文字で



タイトルが書かれていた。



『◎◎&○○』



彼の名前と前の彼女の名前…



『あー、前の彼女との写真なんだ』



すぐわかった。



前の彼女の話しは



何度か聞いていて知っていたけど…



あからさまに



その軌跡を



今、私が開封しようとしているんだ



そう思うと…



見ない方がいいような
でも、見たいような



そんな心がケンカをする。



結局…



私は



表紙を開いてしまった。



なかむつまじい彼とどこかの女性。



思ったよりショックは少なかった。



やはり少し前の写真だからか



彼は今より若いし



ヘアスタイルもロンゲ。



顔も今とは違う。



別人だと思込めば



へっちゃら。。。



とは思ったものの…



私が知らない彼の姿…



胸にグサッと包丁が突き刺さる。



北海道にも行ったんだ…



行ったこと無いって行ってたのに。



いつも二人で寄り添って



くっついて写したんだ。



あれ?



これって…ここの台所?



ここの家に入れた女は



元嫁と私だけって聞いてたのに。



そんな



嘘の真実や



そのアルバムが



簡単に見える場所に置いてある事が



私の胸にはキツかった。



そして



何と言ってもキツいのは



彼と私には1枚も写真がないってこと。



一緒に撮ろうともしてくれない。



それって



かなりキツかった



私たちには何もない。



記念に残るふたりの軌跡…



そんなものないし



彼は



ホンとにうそつきだ。











うそつき@




彼の留守中…



掃除機をかけようと



押し入れを開けた。



いつもの場所から掃除機を出し



掃除機をかける。



『気付いてくれるかな?』



そんな事を思いながら



掃除機をかけていた。



そして掃除機をしまうために



また押し入れを開ける。



『あれ?

こんなアルバム見たことあった?』



ピンク色でキティちゃんの付いたアルバム。



今まで古めかしい
色々なアルバムを見せてもらったけど



こんなキャラアルバムは見たことないなぁ…



いや、見たことあったのかもなぁ?



そう思いながら



そのアルバムに手を伸ばす。



少しだけ



ドキドキした。



















優しいだい太




差し障りのないメールが届いた数日後…



また、だい太からメールが届いていた。



数分遅れで気付いた私が



だい太からのメールを見ると



そこには思いがけない言葉が綴られていた。



『職場の喫茶にある

名物から揚げ買ったから あげる。

どこかで渡せる?』



仕事帰りの道々からくれた優しいメール。



私は思わずだい太に電話をした。



だい太はすぐ電話に出てくれて



だい太と私の中間地点まで



から揚げを渡しに出てきてくれた。



『だい太、ありがとう。

家にもから揚げ買ったの?』



私が聞くとだい太は言った。



『いや、家のは買ってない。

給料前だから

もう、お金無いし…』



と…



私は気になって



だい太の財布を見せてもらった




すると、なんと…



だい太の手持ち金は70円。



そこまでして

私にから揚げを

買ってくれたなんて…



そう思うと居ても立っていられず



財布の中にこっそりと



2000円忍び込ませた。



親ばかな私と



優しいだい太の話し。






だい太からのメール




だい太からのメールが来なくなって



ひと月が過ぎた頃



いつもの返信の様に



だい太からメールが届いた。



もう…



だい太とは



親子の縁が切れたと思っていただけに



嬉しかった。



でも



だい太のメールの中に



『お母さん』と言う文字は



出てこない。



そう言う会話に



ならないからかも知れないが



連絡をくれる様になっただい太にとって



今の私は何だろう?







記念すべき今日の危うい関係




一緒に居る。



いま、一緒に暮らしている。



一緒に居ることも…
一緒に暮らしている事も



本当は無かった事。



私の人生の予定表には



そんな計画は立ってなかった。



だから



誰も予想もしない事で
誰にも予想できない事で…



でも



その『いま』は



とても危うく…



何か小さなしずくが当たったら



パッと一瞬にして



消えそうな『いま』にも感じられる。



夫婦?



夫婦なんだけど…



本当の夫婦じゃないような。



市役所に出した紙切れで



確かに夫婦になったんだろうけど



戸籍上で夫婦になれたとしても



明日の保障はない。



そんな



些細なすれ違いで



いまが…パッと消えてしまいそうな



私たちに思える時…



入籍して



1年目の今日が



終わろうとしていた。







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