柄を交わす




ここ数日…



私たちの心は擦りきれていた。



叔母の脅迫じみたメールから



見えない影に警戒し



モニターを監視する日々が続く。



彼の疲れもピークに達し



後…10日と言う日々を



待てないでいた。



そんな時…



彼が言った。



『柄を交わそう。

どこか知らない地に行き

少し身体を休めよう。』



私たちは地元の駅から汽車に乗って



宛もない駅に降りた。



そして



その街で



5日間ほど



身柄を隠す事にした。











怒鳴り込み




ついに…



母が職場へ怒鳴り込みに来た。



やっとのやっとで採用が決まった



この職場を…



数日後に私は



去ることになるなんて



この時は知る由もなかった。



6月16日から勤め始め



やっと少しずつ仕事を覚え始めたのに



6月28日から



休みを貰うことになった。



それもこれも



母が怒鳴り込みに来た声を



昼休憩中の他職員に聞かれたのと



また再び職場へ怒鳴り込みに来れば



患者さんに悪影響が出る。



その最悪な状況を避けるために



取りあえず1週間



お休みすることになった。



100日まで…



あと11日…



探偵




叔母からメールが来た。



彼の名前をフルネームで突きつける



攻撃的なメールだ。



私がいる場所を



突き止めた事を指している。



そして



彼が昔、ヤクザだったことも



記されていた。







先日のアレだ!



ビビっとひらめく。



あの安っぽいハーフパンツの男…



私の車の下に潜り込んだのは



GPSの回収だったんだ。



要するに



叔母は…



私の居場所を探し当てるために



探偵を雇ったのだ。



叔母のメールは



一時、途切れた。



離婚後100日まで



後13日。



GPSで追われている私




最近のこと…



彼が怪しい人物を発見した。



それは



彼の家の4方向についているカメラに



ふと写し出された男性だ。



彼は『何となく怪しい』



そう言っていた1週間前の



水曜日の夜のこと。




その話を聞いた彼の仲間が



昨夜やってきて…



その映像を巻き戻して



見ることになった。



すると



大変な映像が映し出される。



確かに変な人物がうろついている…



私の車をじろじろ見ながら



その男は去っていった。



なのに数分後…



また現れて



次の瞬間!



私の車の下へ



上半身ほど潜り込んだ。



そしてサッと立ち去った。



ところがまた…



その男は戻ってきて



今度は私の車の前方に潜り込んだ。



ポケットに手を突っ込んだり



帽子を脱いだり



落ち着かない男は



実に30分くらいの間



私の車の下に



何度も潜り込んだ。



隣に置いてある彼の車など見向きもせず…



私の車の下や
周辺を…



ウロウロ繰り返していた。






カメラを何度も再生した後…



彼は仲間と一緒に



私の車の下に潜り込んだが



雨も降っていたりして



何も発見されていない。



しかし…



私の車のどこかに



何かの機械が取り付けられたには



違いない。



私の身体は



GPSで追われている。











懐かしい笑い声




私が洗い物をしていると



彼が…空き缶捨てに出た。



彼とよく散歩に出る私は



少し離れた缶捨て場に向かう彼を



追いかけた。



洗い物の途中だったが…



彼の元へ向かった。



その途中のこと



懐かしい笑い声が。。。



何処かの家庭の団欒なのか



変声したてのお兄ちゃんと



弟か妹の様な甲高い声…



笑いながらバトルが始まっていた。



懐かしいバトル…



懐かしい子供の叫び声…



私があのバトルの中にいたのは



そんなに前の事ではないのに



何故か…



たまらなく懐かしい。



そんなよその家庭の灯りを



立ち止まって…



ぼんやりと見ていた。




前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2016年06月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30