外食




日曜日の夜は



だいたい外食をする。



それは、普段仕事から帰るとすぐキッチンに立つ私を



休日くらいは楽をさせようと思う



彼の優しさのひとつだと受け止める。



普段、帰宅した私が



すぐキッチンに立つと



『おいおい。ちょっと休憩しろ。

そんなすぐ料理する事ないんだから。

ケン子は

料理するために居るんじゃないからな。』



と言うけれど…



子供たちと一緒に暮らしている時から



そんな風に動いていた私には



そんな癖みたいなのがついている。



だから…そうしないと落ち着かない。



日曜日も…



本当は外食ではなく



家で作りたい。



そりゃ、外食は楽だけど…



外食してる間中



罪悪感がつきまとう。



料理に追われ苛ついて怒る母…



そして…母からとばっちりを受ける子供たち



それを思うと



楽をしてご飯を食べる外食中は



罪深い気持ちに襲われる。



母や…



子供たちの顔が



私の目の前で



早送りの様に流れては消えて行く。



そして私は



彼に聞こえないほどの小声で呟く。



『ごめんね』と…



もうひとつの顔




彼への感情で



怖いと思うことがある。



出逢った頃は



とにかく怖いとしか思わなかった感情も



彼を知る毎に



少なくなっては行ったけど



時々、怒鳴る様な声を出す彼を



やはり怖いと思う時もある。



本当の彼はとても優しい人だけど



人前で怒鳴り声を出すと…



「あの人は怖い人」



と言うレッテルを貼られてしまうのは



世間では、一般的なこと。



私と出逢うまでに



色々なとこで怒鳴り声を上げた彼は



限り無く一般的な私との今を大事にするため



怒鳴り声を出さなくなった。



まあ、私にはたまに



もう一人の自分をたまに見せるけど。



でも、そんな怖い彼を見るたびに



彼とは住む世界が違うと実感する。



野生の虎と



人間界のニワトリが



結婚した様なものかも。




















しょう太の正夢




最近…



あれだけいがみ合った母と



少しだけ距離が縮まった。



仕事帰り…車の所に



時々、母が作った料理が届けられたり



電話で話をする様になった。



私も子供たちの為に



母から聞いた、子供たちの朝食の一部である



『豆乳』や『果物』を



時々、父に託したりする。



そんな昨日の朝…



また、子供たちの食料を届けに



実家に立ち寄って見た。



まさに1年ぶりに



子供たちの居る家に踏み込んだ。



母が子供たちを後押しする声が響いている中



母だけに見える位置に私が立つと



母が目を丸くして



子供たちに向かい



私を指差す。



子供たちは不思議そうな顔をして



ふすまから顔を出す。



そこにはちゅう太としょう太が居て



学校に行く準備をしていた。



しょう太は大きな声で言った。



『わぁぁぁっ

お母さんだ

お母さんだ!!

今朝見た夢は

正夢だぁっ!

お母さんが家に来た夢を見たんだ!』



大声で言った。



私は嬉しくなって笑った。



母も…ちゅう太も…しょう太も…



笑っていた。



久々に帰った家は



模様が変わっていて



私がいた頃とは違う部屋になっていた。



ふと、ちゅう太としょう太の足元を見ると



まだ裸足…



『ちゅう太、しょう太?

靴下履いてないじゃない!』



私が言うと



『あーーーっ。

そーだった!』



二人は慌てて靴下を履く。



しょう太はキョロキョロして



何かを探している。



『お母さん!これあげる。』



しょう太は私にキーホルダーと写真をくれた。



少し前の写真。



しょう太がバスケの大会に出た時の



集合写真だった。



こうしてしょう太は自分の存在を



私の頭に焼き付けようとする。



そんな事…



ホントは普通じゃないこと。



私が来たことを正夢だと喜ぶなんて事も



普通じゃない。



いつも一緒に居ることが



本当の親子の普通なんだから…









届かない当たり前




子供たちと過ごした当たり前の日々…



怒ったり笑ったり泣いたり…



そんな時間は幻の様に



夢さえも届かない。



子供たちとは全く会えない訳じゃない…



朝、早めに家を出て



通学路で待ち伏せすれば



会えるのは珍しくないこと…



そして誘いをかけ



土曜日に会って出掛けたり



時間を共に過ごしても



子供たちの良い子な姿しか



見ることはできない。



子供たちは



『お母さんと一緒に過ごす

せっかくの時間だから

喧嘩したりはやめよう』と



決してケンカをしない。



そんな



取り繕った現実しか



今の私には



ない。



子供たちと



泣いたり…怒ったり



苦悩を共に乗り越えてこそ



本当の親子の絆が育つだろうに…



その



当たり前さえ



私には…届かない。






思い出の場所



子供たちと行った思い出の場所…



この町には沢山ある。



私が通勤の道中に通過する



子供たちが住む町には



思い出が多い。



思ってみれば今の職場に勤めを決めたのも



もしかしたら子供たちと



偶然会えるかも知れないと



そんな下心があったからだ。



それは上手くも的中し



子供たちを見かける事も



日々、多くなった。



でも、それは嬉しくもあり



辛くもある。



この町には



子供たちとの思い出が詰まっている。



その思い出のど真ん中をくぐり抜け



仕事へ向かうのは



何とも辛い。



泣き顔で出勤するわけに行かないし…



帰りは帰りで



子供たちが通ったであろう道を



犬の様にクンクンしながら通過するのも



はっきり言って



しんどい。



子供たちから近くても遠くても



結局は同じであろう現実が



私の心に重くのしかかる。











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