ちゅう太との約束の場所に着くと
ちゅう太は自転車の横に立っていた。
右手を上げてニコッと笑うと
ちゅう太は車に乗り込んだ。
久々に会うちゅう太は
いつも口数が少ないのに
車の中でずっと喋っていた。
『お母さん?今夜ねぇトトロがするよ。
しょう太ね、トトロを楽しみに
学校へルンルンで行ったよ。』
そしてトトロのあらすじや
ジブリの話を延々とした。
私は運転をしながら
ずっと聞いていた。
目的の場所に着いたが
ちゅう太の話しは止まずに続く。
このまま…時間が止まればいいのに
そう思った。
その話しの合間に
ちゅう太と買い物に店内に入ると
ちゅう太が欲しがっていた
『モンストのウエハース』を
1000円分買った。
こんなプレゼントで良いなんて…
質素だな…とは思ったが
持ち帰って追求される恐れを考えると
小さな物しか
買ってやれない。
それに…ちゅう太が一番欲しいのは
モノなんかじゃない。
私との生活が一番欲しいんだろう…
そう思った。
『ちゅう太、何かカバン持ってきた?』
買ったモノを持ち帰る袋が無い事に気付き
もう一度店内の百均へ行く。
黒い巾着と
ネックウォーマー
カルパスを百均で求め
車に戻る。
そして
黒い巾着に全てを詰め込んだちゅう太と
また話を始めた。
後部シートを振り向くと
ちゅう太が目を真っ赤にしている。
私は思わず後部シートに移り
ちゅう太をギューッと抱き締めた。
『ちゅう太。ごめんっ。
でも、ちゅう太…
お母さんはずっと忘れた事ないよ。
いつもいつも
ちゅう太の事、思ってるからね。
それだけは忘れないで。』
ちゅう太も私も
泣きながら
暫くの間…
抱き締めあった。
あっという間に時間は過ぎ
ちゅう太を送り届ける時が来た。
ちゅう太は寂しそうに
『お母さん…今度はいつ会える?』
そう聞いてきたので
『お父さんに秘密で会うのは良くないから、今度からはちゃんと話して会おうね。
お父さんに、お母さんが契約して
ちゅう太にガラケー渡していいか
聞いてみるからね。』
そう言うと
少し安心した表情で
ちゅう太は自転車を走らせる。
私は途中まで
ちゅう太の後ろに付いた。
そろそろ別れの場所…
ちゅう太は私に大きく手を振る。
私も大きく手を振った。
『ちゅう太…またね。』
そう言って車を走らせると…
私の車を白い車が煽ってきた。
母だ。
「びーびびびびびびびびぃっ」
クラクションを鳴らしながら
私の車を
追いかけてきた。
。