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神域第三大戦 カオス・ジェネシス45

「場所に関しては通信でダ・ヴィンチちゃんに聞けば分かることです!今観測してくださってるはずですから…!」
「あ、確かに」
マシュの言葉に、はっ、と二人は冷静さを取り戻す。だがそんなマシュの言葉を台無しにしてしまうかのように、ヘクトールがうーん、と唸った。
「…でも通信したとき、座標が少しずれてるけどイングランドだ、って言ってなかったか?ってことはイングランドなんじゃねぇのか?」
「イングランドならクーリーの牛争いのことをあんなに身近に語るか?」
「…あっ、そういえば大陸は微妙に移動してるんだから、今のイングランドの座標にアイルランドがある……とか……?」
「………そんなに、移動するもんか…??」
「少しずれてるってどの程度よ」
「知らねぇよ」
うーん、と、5人はその場で頭を抱えた。イングランドなのかアイルランドなのか、現状は確認する術がない。
藤丸はこて、と、首をかしげた。
「……というか、場所がどっちかって、そんなに重要なの?いや、なんか、申し訳ないんですけど」
「ン……いや、どうにもここは普通の特異点とも違うみたいだからな。特異点として観測できた場所とも異なる、となった場合、ここは果たして特異点なのか?という問題も出てくる。虚数空間なんてのも通過してることを思うとな」
「…だが正史と異なる異常は起きてるぜ?それは特異点たる特徴でもある」
「だが異常は神々の間でだ。サーヴァント…人の願望程度で神が左右されるとは考えられないから、神々の存在の方で発生した異常と捉えるべきだ。ただでさえケルト神話というのは、後の存在証明が薄い世界だ。神秘性が高い、と言ってもいい。私にとっては現実だが、人間から観測できる現実なのか、それは正直分からない。そうなった場合、ここは君らが今まで解決してきた特異点と同質のものといえるのか……?」
「……………それは…………」
「………とにかく、通信で分かるんなら、通信できるとこまで行こう。召喚サークルあるとこまで戻れば通じるだろ、急いで戻ろうか」
「あ、最初に街を見つけたときみたいに凪子さんのコンパスでもっと広い範囲見れたりとかは?それなら大体分かるんじゃ…」
「……………………………」


凪子はゆっくりと藤丸を振り返り、ピッ、と親指と人差し指をたてた両手を藤丸に向けるのだった。
「そういやその手があったわ」
「お前なぁ〜!」
「うるせぇな疲れてんだよ怒んないでぇ?」
凪子はごそごそと鞄を探り、コンパスを取り出して地面に置いた。
「観測開始。領域拡大、高広域表示」
コツン、と拳で叩いて指示を出せば、さながらドローンが空へ浮かび上がっていく様のように立体映像が展開していった。
映像はどんどん範囲を広げ、やがて海とおぼしき境目が見えはじめた。
「………イングランドじゃないね」
―――そうして見えたのは、アイルランド島の方だった。5人の間に沈黙が流れる。
「…ダ・ヴィンチ達の観測が合っているのか、早急に確認しないとな。急ごう」
一行はヘクトールの言葉に、大きく頷いた。

―――

 「まだ通信通じないの??確かにタラニスの森から近いところは通じなかったけどさぁ、もうちょっと通じてなかったっけ?」
「わかりません、ここは大気のマナも非常に濃いので…!」
「まぁいいか、この林越えたらもうリンドウの森が視界に入る」
行きと同じ道をたどり、森とまではいかないが木々が密集し林のようになっている丘と丘の間を一行は通過しているところだった。行きの段階ではこの林で通信は通じていたはずだが、なぜか回復していなかった。
ざわざわと風が吹く。日は大分地平に近づき、まもなく黄昏時が訪れようとしていた。
「まぁ、このペースなら日没までには戻れるだろ」
「……あの、場所の話になる前の話なのですが………もし仮に、特異点の起点がダグザであったとしたら、それは戦争を起こしうる神なのですか?」
ふ、とマシュが話題を戻してきた。唐突に凪子が場所を気にしたために頓挫していた話題だ。
あぁ、と、凪子は思い出したように呟く。
「…んー……私の知る限り、彼は戦争を好む神じゃないし、正直ダグザが、というのは個人的には考えられないことなんだが……少なくとも、彼が何かを為そう、とするならダーナ神族はよほどの事情がない限り味方するだろうし、まぁ、敵対する神も勿論いるだろうな、というのはある」
「ダーナ神族が戦う相手といったら、フォモール巨人族か?」
「ダグザも戦った相手、という意味ではそうだな。ま、ダーナ神族を追い出したミレー族という可能性もある。…まだ分からないけど」
「ダグザではない、と?」
「そんな風に誰かにそそのかされるようにも、過去を改修したいというような願いを持つようにも見えないってだけさ。大体、何かを為したいなら自力でできる実力者だ。…ただまぁ、それはどの神にも言えることだから、分からん」
「そうですか…」
「タラニスは下手に関わったら死ぬ、みたいなこと言ってたけど……」
「そりゃそうだろうなぁ、タラニスは神性が低い方だ。神話サイクルで語られる神々はもっと神性が高い、側にいるだけで生命に異変を来してもおかしくない奴等だ」
凪子の言葉に、藤丸とマシュはうーん、と唸った。
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