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神域第三大戦 カオス・ジェネシス22

『アンサーモンプログラミングスタート。霊子変換を開始します』

『レイシフト開始まであと3,2,1 ......』

『全工程クリア。グラウンドオーダー実証を開始します』



「(………ほぉ、よくは分からんが、大した技術だ)」
凪子はマシュの指示通りにコフィンに搭乗し、遠くから聞こえたアナウンスのあとに感じた感覚に漠然とそう思った。
流石の凪子でも何が起きているのか、自分自身の感覚ですべて理解するのは難しい。ただ、随分ややこしいことを、随分手間をかけてやっているらしいことは分かった。
「(これ真似したらタイムリープできるようになるってことなのかな…いや、でも時間の概念は……うぬぬ分からなくなってきた)」
手を伸ばした気がした。実態の感覚があやふやなので、伸びているのか手があるのかも分からない。霊子変換とやらで肉体が分解されているそうだから、本来ならこんな風に知覚できるようなものではないのだろう。これはやはり、凪子の特異性ゆえだろうか。
自分が解体されている感覚を味わいながらも、凪子は存外平然とレイシフトに身を投じていた。
「(…こうやって異常のある時間帯に跳んで、異常の原因を排除して正常に戻す、と……。何が正しいのかで迷いそうなもんだけど、そうでもないのかね。まぁ、知ったこっちゃないけ………ん?)」

―凪子に、レイシフトの経験はない。
だから、『それ』が異常なのか通常なのか、凪子には分からないことのはずだった。

「!!異常発生です!」
「これは…虚数空間!?どうしてこんなところに?!」
「!レイシフトに割り込まれます!!」
「まずい!すぐに中止するんだ!!」
「で…できません!!コフィン、制御できませんっ!!」
「なっ…!?どうにかするんだ!」

「(…………虚数空間?そんなものまで使うのか…?)」
―そもそも、本来なら解体されているのだから、近くに何があるなんて、分かるはずもないのだ。
「(…いや!なんか嫌な予感がする!!)」
――だからその行動は、凪子の野生の勘とも言うべき直感であった。


――――
――――――
――――
――





「うおっ」
唐突に感じた風に、凪子は思わず声をあげた。
気が付くと凪子は、広い草原の中に立っていた。魔力が豊かに含まれた空気を肌に感じる。夏だろうか、日射しは強く、からりとした雰囲気がある。

それはどこか、懐かしさを覚える。

「…づっ……なんだ……何が起きた…!?」
「あてて…なんだいまた変なところに飛ばされたのかい…?」
「おっ」
ぽかんと突っ立っていたら、呻きながらもそう呟く声が聞こえてきた。そちらの方を振り返れば、気だるげに起き上がるクー・フーリンとヘクトールの姿があった。
「お嬢さんがたは?」
「マスター?おい、マスター、どこだ!」
「いてててて…」
「ううん………」
クー・フーリンが声を張り上げると、二人がいたのとは凪子を挟んで対称の位置から藤丸とマシュの声が聞こえてきた。
「よかった、全員無事か」
「?なんだいそれ」
「や、えーっとね。あそうそう、マシュ」
「?なんでしょう」
サーヴァントの姿になっているマシュが藤丸を助け起こしながら、きょとんとしたように凪子を見た。凪子は結界の中から取り出した鞄を腰に巻き付けながら、とっとこそちらへ駆け寄った。
「レイシフトって奴の説明は君が軽くしてくれたけど、レイシフトって虚数空間通るもん??」
「え…!?いえ、そんなことはありません。何故ですか?」
「あー違うのか、よかったよかった。なんか嫌な感じしたのよね」
「おい待て、虚数空間を通ったって言うのか?」
同じく藤丸の方へ寄ってきたクー・フーリンは、凪子の言葉に訝しげにそう尋ねた。
「うん。そういうもんなのかなーとも思ったんだけど、なーんか妙に嫌な予感がしてね。ちょっくら細工をして虚数空間の影響受けないようにしてみたんだけど、やってよかったみたいだね」
「え…!?ま、待ってください、一体どういう…!?」
「…とりあえずカルデアと連絡とった方がいいんじゃないか?」
ヘクトールが冷静にそう提案してきて、どこか興奮気味だったマシュも落ち着いたようだった。マシュと藤丸が通信の準備をしているのを横目に、凪子は回りを見渡した。
「…これレイシフトっての、成功してんの?」
「………恐らくな。しかし…アンタ、よくわかったな、レイシフト中だってのに」
「普通はわからんもんなの?」
クー・フーリンは凪子の言葉に目を細め、黙ってフードを目深く被るだけだった。
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