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神域第三大戦 カオス・ジェネシス41

「おい春風、分かったことがあるなら話せと再三言っているよな…!」
「知っとるわバーカ!今分かったこと話せるかァ!!」
横入りするように、恨みがましげにそう言ってきたクー・フーリンに凪子は思わず怒鳴り返した。気持ちは分からないではないが、仮にも神を前にしているのだから少しは空気を読んでほしい。そんな気持ちを込めて睨めば、勝手に一人で理解して先に進めてんじゃねぇ、と言いたげな視線が返ってきた。どっちもどっちのようだ。
「……、いいだろう、深淵なる内のもの。貴様には前から興味があったんだ。平行世界であれ未来であれ、貴様が“異常”の為にわざわざ来た、というのは興味深い」
「!」
タラニスの言葉に、はっ、と五人はタラニスを見た。タラニスは、ニヤ、と笑いながら凪子を見ていた。いつの間にかその手に持っていた槍は姿を消していた。
「何が異常なのかオレには知ったことではないがな。貴様らの目的に興味はないし、人間の世界なぞ更にどうでもいい。が、貴様がオレを興じさせるだけの話をするなら、多少の見返りは施してやろう」
「…それはまた、随分と豪勢な申し出で。ありがたいが、さて、それだけの話ができるかな」
「元より期待はしていない。そら来い、オレの気が変わらない内にな」
タラニスはそう言って座り込むと、ポンポン、と自分の隣を叩いた。どうやら近くに座れということらしい。
いつの間にかマシュの宝具で作られた城壁は消え去り、タラニスの火焔で燃えていたはずの大地にはすでに植物が芽を吹き出し始めている。
「(……生命を司ってるわけでもないのに…神性ってのは、ここまでの効力を持つのか。知識つけてから改めて見るとつくづくヤバイな)」
凪子はそう心のなかで呟きながらも、おとなしく指示に従い、タラニスと膝を付き合わせる形で座った。置いていかれた他の四人も、その場から追い出されるようなことはないようだったので、藤丸のところに全員が固まって座りこんでいた。
タラニスは四人を一瞥して鼻をならした後、凪子の方を見て頬杖をついた。
「さて。貴様の噂は聞いている」
「…そんな風に噂されてたとは初耳だ」
「関わりがあったのに、知らなかったのか?」
「あー…生憎関わるようになったのは、罰を受ける立場になったからでね。友好的ではないから、そういう話は全く。深淵なる内のもの、と私に呼び掛けてきたのも記憶では一柱だけだ」
凪子の言葉に、タラニスはくくく、と声を殺して笑う。
「ははぁ、昔の貴様はお転婆が過ぎたようだな。神を殺そうとした、と言っていたな。何故殺したかった?」
「…、死なせたくない人間がいた。本来の私には死の概念がないものでな、死の概念を司るものを消してしまえば、人間からも死が消えるのではないかと考えたんだ」
「それでオレ、か。道理は通るな」
タラニスは、自分を殺そうとした、という話を聞かされてもあっけらかんとそう返してきた。不敬も不敬である発言であるというのに、寛大なのか狭量なのか、どうにも掴みにくい相手である。
凪子もそんな反応に思わず眉をひそめた。
「…罰を受ける立場になった、というのは、つまりそういうことなんだけど」
「ん?……あぁ、なんだ、貴様の記憶ではオレは貴様に殺されたと?」
「そうだ」
「はっは!!そんなことがあるとはな!!まぁ、神とて限界のあるものだ、死ぬこと自体はないことではないが、まさかそんな終わりがあるとは!滑稽じゃあないか!」
「えぇー……一応自分のことだろ………」
思いきって殺害を告白してみれば、タラニスは腹を抱えて大笑いし出す始末だった。完全に別世界のこと、と捉えているのだろうか。仮にも自分の話であるのに他人事のように笑うタラニスに、凪子はげぇ、と顔をしかめるしかない。
タラニスはそんな凪子の反応すら楽しむように笑うばかりだ。
「…それで?貴様の目的は果たせたのか?」
「果たせるはずもない。結局死んだ」
「ははっ、であろうな。貴様は全くの徒労を費やしたわけだ、馬鹿馬鹿しくて仕方がない」
「せやな。………、結果、そちらの死も無駄死にになったわけだが」
「人間なんぞに利用されるくらいならば無駄の方がマシだろうよ」
「成程そういう考え方」
「………物騒な会話をしていやがる……」
二人の会話を離れたところの四人はそわそわヒヤヒヤとしながらも聞くしかない。ぽつり、とヘクトールが呟きを漏らしはしたが、その声は二人には届かなかったようだった。
凪子以外の四人は完全に置いていかれてしまっているが、宝具を乗っ取ったり、拒絶の対象にならなかったりするような相手に、なすすべがないのだろう。
タラニスはごろり、と左手にいた凪子の後ろに寝転がるようにもたれこみ、ずい、とその顔を凪子の顔に寄せた。スンスン、と匂いを嗅がれて、凪子は露骨に顔をしかめる。
「変態さんかよ」
「…んー、いや。深淵なる内のものの異常性はよく聞いている。その貴様が何故使い魔なぞの容をとっているのかと疑問でな。…あの3体とは微妙に違うな」
そんなことが匂いで分かるのか、と凪子は僅かばかり驚きつつも、あー、と小さくぼやく。
「……彼らや私は、サーヴァントと人は呼ぶ使い魔でな。基本的に、座という…なんだろう…概念というか、そういうのに登録された英雄を呼び出して使役する。そういう意味では私は座に登録されていないし、実際生きている状態で、正体不明のものに呼び出されてる。だからあの少女が正式な主、というわけでもない。微妙に違うかもね」
「主でもない?ならば何故?」
「利害の一致というやつだ。どうやら一仕事終えないと元の身体に戻れないみたいだし、世界の異常とやらには興味もあった。だから共同戦線というやつだな、私はここに詳しいし」
「へぇ」
聞いてきたわりには興味の無さそうな声でタラニスは言葉を返した。
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