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神域第三大戦 カオス・ジェネシス27

―――

「…カルデアに、人理焼却、未来、レイシフト………。あはは、これでは駆け出しの詩人の語る夢物語の方がよほど現実的だね」
マシュから一通りの話を聞いたリンドウは、暫し黙ったのちに、どこか楽しそうにそう言った。凪子がどんな話でも平気だと言ったからか、マシュは本当に全てを語った。
もう少し私を疑った方がいいんじゃないのか?と凪子は思いながらも、隣で笑うリンドウに視線を向けた。
「まぁそういうわけで、実は私もお前の知る私じゃない」
「はは…おや、そうなの?」
「おう。……というか振っといてアレだけど、よく信じるねお前」
じとり、と自分を見る視線にリンドウは薄く笑い、片目を瞑る。
「私にとって、それが嘘かどうかなんてことは簡単に分かることだから。真実を語るなら一先ずは信じるさ。君についても、確かに君はもっと髪が長いものね。単に切っただけかとも思ったんだけれど。……しかし、そうか。2000年か。それだけ生きても、君はまだ死ねないのか」
ひたり、と、リンドウが凪子の頬に手を触れてきた。リンドウの視線は穏やかだが、どこか悲しげな色をともしている。凪子は僅かに驚きもしたが、そういえばこの友人は恐ろしく優しいやつだった、と、不意に思い出す。
「…………お前は、私と人間は未来永劫相容れられない、と言ったな」
「そういえば、言ったね」
「喜べ、お前のその先見は今のところ当たっているぞ」
「また君はそういうことを言う。先見が当たってこれほど嬉しくないのも珍しい」
ぶすっ、とリンドウは唇を突き出した。凪子はにや、と笑ってぽすぽすとリンドウの頭を叩いた。
「ははっ。そう言うな、長生きも悪くない。まさかまた、お前とこう話す機会があるとは、思いもしなかった」
「彼らの話通りなら、私と君の知る私とは、微妙に違うかもしれないのにか?」
「こまけぇこたぁいいんだよ。微妙に違おうが、お前はお前だ、だろ?」
「なんだい、そんな口説き文句まで覚えたのか?これは野生のままにしておいた方がよかったかな?」
「オイ」
「あー、イチャイチャすんのはその辺にしといてくれねぇかね」
やんややんやと盛り上がる二人にマシュと藤丸は相変わらずポカンとしていたが、痺れを切らしたようにクー・フーリンがそうぼやいた。リンドウはぱちくり、と瞬いたあと、くす、と小さく笑って凪子からクー・フーリンの方へと向き直った。
「それで?君たちは、私に何を求めに来たんだい?」
「あ…ええと、本来なら特異点は大きな歴史の転換期に発生します。なので問題の特定もしやすかったのですが…」
「成程。自分達が修復すべき歪み、それが分からない、ということかな」
「おっしゃる通りです」
「この時を生きている人間に聞いて分かるようなものではないんだろうが、似たようなニュアンスで戦士と話した時に、お前さんの名前が上がってな」
「おや、随分買われているらしい。私はただのしがないドルイドなんだが」
リンドウは困ったように笑いながら立ち上がり、壁にかけられている棚から何かの枝を持ってきた。その枝を藤丸の頭に、ペチリ、と一度当てる。その後、何かをぶつぶつと呟いてから、机の上に立てたそれから手を離した。
枝はふらふらと揺れたのち、ぱたり、と倒れた。
「北東が吉とでた。一先ずそちらに向かってみなさい」
「えっ!?」
「今のは…占い?」
マシュはぎょっとしたように、藤丸は驚いたようにそう声をあげた。リンドウはそれらにニコリと笑って返す。ヘクトールとクー・フーリンは、倒れた枝をうさんくさそうに見た。
おおよそ信じていないのだろう。何せ端から見れば頭を叩いた枝を倒しただけだ。凪子は四人の反応を見てそう思いながら、枝をひょいと拾い上げた。
「…北東か。他に何かある?」
「えっ、春風さん!?」
「ン…そうだな。車輪に気を付けろ。今分かるのはそれくらいかな、もう少し目的が明確なら、先の見ようもあるのだけど」
「………車輪か。了解」
「ちょ、ちょっと待ってください春風さん!」
あっさりと立ち上がった凪子をマシュが慌てて止めた。凪子は、仰々しいほどにそんなマシュに驚いて見せた。
「なんだ、信じないのかお前ら?お前らの話をこいつは信じたのに?」
「う、」
「そいつの占いは当たるぞ。嫌なくらい当たる。まぁ不安だって言うなら残っててくれてもいいけど」
「っ、そういうわけには行きません、が…」
マシュは困ったようにリンドウと凪子とを見あった。凪子の言葉だけでは信用するには足りない、ということなのだろう。リンドウは疑われているにも関わらず、気にした様子もなく茶を口につけていた。
「…なぁ、リンドウっつったか」
「ええ」
埒が空かない、と判断したのか、クー・フーリンがリンドウの方に向き直った。
「俺の正体を当てろ。そしたら俺たちもアンタを信用する。どうだ?」
リンドウはクー・フーリンの言葉に僅かに目を見開いたのち、困ったように笑った。
「…私は占いは得意な方だけど、占い師というわけではないのだけどね。無理に信じてくれなくても構わないよ、君たちの旅路は君たちのもので、私の旅路ではないのだからね。それに正直な話、死者を導くのはやったことがないんだ」
「…!」
はっ、と、クー・フーリンは息を呑んだ。
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