銀行に振り込みしたかったので、帰りに寄ってねって柏木に頼んだ。
最寄りの駅にあるから、耳鼻科から補聴器屋へ向かう途中に振り込めば良かったけど、
一昨日は意外に耳鼻科が混んでて、電車に間に合いそうになかったから。
マギーの足を気遣って、座ったままで補聴器屋まで行こうと柏木。
「各駅停車を途中で快速に乗り換えても10分くらいしか違わないでしょう」って。
本当はマギーに許されてる時間を考慮して、快速で行きたかったの。
だから、快速待ちの間に補聴器屋に予約を入れる電話。
時間指定して置けば、他のお客さんを後にして、お店がマギーを待っててくれる。
「最近はよく補聴器屋に電話してるね」
不思議そうに訊く柏木。
柏木は今はマギーしか扱ってないらしいから、1分でも長くいればお金になる。
逆に、けちなことを言う様に聞こえるだろうけど、マギーは1分でも惜しい。

それで、銀行の話は?
「補聴器屋の近くにあったと思ったよ」
けど、柏木の記憶は間違っていたの。
「服と靴見て行く?」
「ごめん。 今日はもう長くは歩けないよ」
それでも二人で昼食して、地下鉄からJRに乗り換える駅で銀行を見つけた。
この時も、柏木なりに責任を感じていたんでしょうね。
最寄りの駅近くで良いよってマギーが言っても聞かなかった。

それでもマギーは柏木を好きだよ。
選んでくれる服や靴、バッグのセンスは良いし、
的外れなことも多々あるけど、彼女なりに気を遣ってくれてるのが解るから。
マギーは速歩も階段も平気。
寧ろ、エレベーターを探して長いホームを人を避けながら行く方が負担なの。
長時間歩かなければならない時に、何処かでしゃがんでも休憩したいの。
何度も柏木にそれを伝えてるけど、どうしたら彼女に憶えて貰えるかな?