新しい職場の上司はどうやらさぼり癖があるらしい。



今の職場はどの店舗も真正面からシェフに文句を言う人間がいないのでいないところで延々愚痴ってる。真正面からけんかを売る奇行主なトクメーには警戒心が無いのか、そーゆー無防備なところをよく見ます。つーーか。文句を言われてないシェフなんざ見たことないけどなぁ。昨日もちらっと書いた通りで。


「いやでもだって!! 昨日!! うちの店はそりゃ婚礼とかの準備してましたけどそれでも終わってますやん?! 今日だって婚礼二件入ってもこの時間に終わってますやん!?
じゃぁなんで同じ人数で作業してる予約が一個も入ってないむこうの店の作業がまだ終わってないのってなりますやん!!! 仕込も終わってないし片付けも済んでないしどうなってんねんとか言いたくなりますやん!! むしろ手伝いに来いよ!」
「なんか仕込んでたんだろ。」
「いーや、ないね! だって向こうの店ほんとに何も入ってないじゃん! 二月になるまでもう予約ないじゃん!! 何の仕込みを! するの!!」
「スープのネタとか冷凍できる奴。」
「冷凍庫パンパンやわ!! 結構詰まってるわあっちの店の冷凍庫! 知ってるから!!」

おちつけ。

「なんで俺らが手伝いに行かなきゃいけないんすかーー!!」
「素直にその旨シェフに訴えろよ。」
「嫌ですよ機嫌悪くなってまたグチグチ言われるでしょ! あの人太鼓持ちしか受け付けないんだから!」
「よくもマァそんな人んところに私持ってきたな。」
「俺らみんなそう思ってますゥ! 毎日ハラハラしながらやりとり見てますゥ! 地雷の上で全力で踊ってるような感じですからね正直!!」
「マジか。そんな危ないことしてんのか。自覚ないわ。」
「でしょうね!!! シェフにはとにかく「さしすせそ」!!」
「さしすせそ。」
「流石ですね、知らなかったです、すごいです! そうなんですか!!」
「せ、がねーけど。」
「シェフの料理本当においしいです!」

かすってねーけど。

「とにかく料理を適度に褒めてたらどうにかなりますから!! やり過ぎたら「嘘やろ…。」って言われて機嫌悪くなりますけど!!」
「たまにおいしくないのある。」
「そっとしておいてあげて!!」
「わかった。」
「後適当な料理出したらぶっ飛ばされますから。」
「まかないぜったいにつくらない。」
「その方がいいと思います!」


はーー。


「君らは真面目だねぇ。」
「何すか急に。」
「いやぁ。だってなぁ。」


私だったら我慢できないからなぁ。


「…とか言いつつちゃんと手伝いに来てるじゃないですか。」
「いや、だって暇じゃん? でもシェフ置いて帰ったら怒られるんだろ? だったら仕事するよ。暇だし。ケータイ弄ってていいなら弄ってるけど。」
「やめてください。」
「大きめの小学六年生のおもりしてるようなもんだろ。」
「大きめの小6…。」
「会話が成立して理性的に物事を話せるからなぁ。小3とかじゃねーと思うけど。自覚なく問題行動をするあたりがそっくりだ。公平な視点ってのが育ち始めてるところだから、変なことを言うとガンガン理論で反発してくる。でもまだ自己的な面が強いから公平な視点っつーよりも自分の利益目線が多い。反抗期の初期段階によくあって、引率の時に手を焼いた覚えがある。でも基本放置してても問題ない。楽だけど面倒な小6。」
「どんな場所でどんな仕事してたんすか。」
「子供会でキャンプの引率バイト。日給図書券一枚。」
「安ッ。」



先輩にかかると何でもかんでも面白い話になりますね。そんなつもりは一切ないぞ、という会話が成立した昨日。今日もたぶん向こうの店の方が終わるの遅いんだろうなぁと思います。
何してるんだと思わなくもないけれど、いかんせ料理人の仕事は分からん。同じアジア人でもいわば中国人だぜ。言葉も通じないし発想も通じないし常識も通じない。

割と有名な例題で、古池や蛙飛び込む水の音、とか聞いても静かな湖畔に水音ちゃぷんじゃなくて二十匹ぐらいドバドバ飛び込む音と解釈するってのがありますけど、同じレベルの意識の違いだと思う。そりゃ明言してないけど雰囲気ってのがあるだろ!



世の中は面白いなぁと日々思います。知らん人が知らん顔で知らんことしてる。