こちら。テーマはドクロ、オーストラリアガマグチヨタカ、の二単語を必ず入れること、というもの。
なのでドクロの方に的を絞って話を構築しました。
何気にお気に入り。どくろ君。
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職業菓子屋が書くくだらない日記がメイン。たまに創作、なブログ。基本は毎日更新。誤字脱字が非常に多いんで前後で文章察してください。常にネタを追いかけまわす日々を送ってます。二次創作もこっそり放置。初来店の方はカテゴリ「初めに」をご覧ください。
こちら。テーマはドクロ、オーストラリアガマグチヨタカ、の二単語を必ず入れること、というもの。
我輩は骨格標本である。
立派でぴかぴかな大腿骨(足の太ももの骨である。)と、美しいウエーブの鎖骨(肩を支える骨である。)を備えた骨格標本なのだ。
その時、我輩は頚骨(首の骨なのだ。)をじーっと見ていたのだ。
どっしりと構えたあのライン。
きちんと整えられた軟骨部分。
何処もかしこも、ちょっと古いがキレイなのだ。
だから一番上のひしゃげた接合部分が恨めしかったのだ。
今よりちょっと昔の話になる。
吾輩はお気に入りの頚骨に座っていた。
文化祭の頃で、たくさんの生徒が外が暗くなってカラスが鳴く頃までうろうろしていたのだ。
「ねー、このガイコツ、セットにちょっと使えない?」
「そうだねぇ。使えるとおもうよ。」
いつの間にか女子生徒が我輩の目の前に居た。
おかっぱ頭とお下げ頭の女子生徒だった。
一体どんなセットに使うのかは知らぬが、我輩を選ぶとは見所がある。
我輩よりキレイなウェーブの鎖骨を持つ骨格標本はそんなに居ないのだ。
ちょっと誇らしげになっていたとき、
「バラバラに出来ないかな? 使うんだったらバラバラの方がよくくない?」
「それもそうだねぇ。ちょっとやってみようよ。」
なぬ? 我輩バラバラにされてしまうのか?
いくらなんでもそれは待つのだ!
我輩、頭だけ腕だけならすぐ外れるが、いきなり胸骨(胸の骨なのだ。)とか、肩甲骨(腕の付け根あたりにあるのだ。)はちょっと無理なのだ。
そうこうしているうちに、片方が我輩の肋骨(胸骨にくっついてる骨なのだ。)を掴んだ。
「引っ張れば取れるかな?」
待つのだ! 無理に引っ張ったら――――
ベキ。がっしゃん。がちゃがちゃがちゃばきん。
我輩。この後の事はよく覚えてないのだ。
肋骨を引っ張るときに、背骨(脊髄が通っているのだ。)が支柱から外れて、床に叩きつけられたのは判った。
もちろん件の女子生徒二名は教師により説教を受けた。
我輩、その後教師に組み立てなおしてもらったのだ。
「あっちゃー。ココ折れてるよ…。」
頚骨の我輩を乗せる部分が折れてる事に気付いた。
つまり、もう我輩はあの居心地のいい頚骨に座れないのだ。
酷いのだ。
我輩が何をしたというのだ。窓辺に突っ立っていただけではないか。
我輩の頚骨。我輩のお気に入りの場所。
もう二度と乗れないと思うととっても悲しかったのだ。
我輩は飽きることなく横目で鎖骨だの肋骨だのを眺めていた。
あのとき、落ちたせいで自慢の鎖骨にちょっと傷が入ったのだ。
酷いのだ。思い出すと泣きそうになる。
頭無しでは物理室の窓辺に突っ立ってるわけにもいかず、我輩は薄暗い物理準備室の中に移された。
お情けか何か知らぬが、愛しの体の傍であるのが救いなのだ。
ああ。お日様が懐かしい…。
「おや。」
む。男子生徒が一人。準備室なのに珍しい。
準備室と言ってもココにあるのは本ばっかりなのだ。
我輩以外にはオーストラリアガマグチヨタカの剥製ぐらいしか居ないのだ。
だからめったに教師も生徒も入ってこない。
「ふむ。科学部の部室にあるにはちょうどいいですね。」
科学部? そんな部活この学校にあったか?
「やれやれ。ホコリまみれじゃありませんか。」
周囲を見渡しつつ、男子生徒が言う。ホコリまみれで悪かったな。
我輩だって好きでホコリと同居してるわけではないのだ。
「部員を呼んで、まずは掃除ですね。」
男三人しか居ないのに掃除は妙にスムーズだった。
我輩、ずぼらな男しか見た事無かったのだ。
こんな几帳面な男もいるのだなぁ。
「その骨格標本は僕がやります。
貴方たちはそれぞれ好きなものを持ってらっしゃい。」
他の二名は頷いてなにやら色々持ってきたのだ。
テレビとか。扇風機とか。漫画。おおぅ。ここは学校ではないのか。
そんな中で最初の生徒が我輩の胴体に手を伸ばす。
伸ばされた手が、いつかの女子生徒と重なる。
止めて欲しいのだ。また壊されたらたまらない。
が。しかし。
「…手馴れてますね。」
「ええ。こういう細かい作業は大好きなもので。」
外からの指摘どおり。扱いは上手かった。
手が動くたびにゆっくりと体がばらけて行く。
全てをばらし終わってから丁寧に布でホコリをぬぐう。
すごい。手際よすぎなのだ。
「よほど乱暴に扱われたんですねぇ。傷がたくさんありますよ。」
「あ。ホントだ。」
「ちょっと磨いたり詰め物するだけで直りますよ? やりましょうか?」
「そうですか、やり方を知っているならお願いします。」
我輩、どんどんキレイになっていったのだ。
ちょっとゆがんでた肋骨も、ホコリを被ってた大腿骨も、ヒビの入った鎖骨も。
みーんな新品同然まで復活したのだ。
それと一緒に、殺風景だった準備室もどんどん変わっていった。
暗幕を取り払い、本棚を掃除して、ソファーを入れたら、普通に人間が居てもおかしくない空間になった。
「ああ、やっとぴかぴかになりましたねぇ。」
「そーですね。」
「この子はこのまま置いておきましょう。部室にあるに相応しいですし。」
「…マスコットみたいな?」
「え。それってちょっと微妙じゃないですか?」
「いいじゃありませんか。マスコットで。」
それから、その生徒はこういったのだ。
「あなたの名前は『どくろ』です。どくろ君と呼ぶ事にしましょう。
―――よろしくおねがいしますね。」
我輩の名前は、どくろ。
物理準備室であって、科学部の部室である部屋にある骨格標で、立派でぴかぴかな大腿骨と、美しいウエーブの鎖骨を備えた骨格標本なのだ。
我輩にはもう、ホコリまみれの体も、ゆがんだ肋骨も、ヒビの入った鎖骨もない。
きれいに磨いてくれて、我輩の名前を呼ぶ奴らがいるのだ。
彼らはすぐに我輩の前から居なくなる。
でも、我輩はこの事を忘れないのだ。
遠く遠く。我輩が居るよりも、ずーっと遠く。我輩が居なくなるそのときまで。
我輩は、あの日のことを忘れないのだ。
性 別 | 女性 |
地 域 | 奈良県 |
系 統 | ヤンキー系 |
職 業 | 夢追人 |
血液型 | A型 |