千百五十八日目。
昨日も一昨日もそのまた前も、お月さんがきれいです。今日なんか星がきれいに見えて。
するってぇことはつまり。放射冷却ですよねー。ねー…。
明日寒いんだろうなァ…。よかった、うちの愛車ことエッちゃんは、屋内駐車場で。霜下りるって…。
さてと。
ようやく仕事が出てきた感じがします。今日はともかく、明日はちゃんとお仕事あり。
今日だって普通に仕事ありましたけどね。一応。久しぶりにパイを作ってたんで、それの処理とか。明日のためのクロワッサンの仕込みとかー。
あ。クロワッサン! ちょっと前に言ってた粉にも種類があるってお話。試供品で貰った粉を配分して今日仕込んだんですけど、匂いが違うことが発覚。すげぇ小麦粉の匂いがしました。なるほど。風味豊かとはこういうことか…!!! 焼き上がりが楽しみだなこれ…! どうなるかなッ!
…こほんッ。それはそれ。これはこれ。
ええっと、とにかく仕事があります。明日の朝は。
クッキーだって久しぶりに焼くし、パン生地の仕込みだってクロワッサンの他にもあるし。タルト生地のしき込みとかー。文字だけ見ると一般の人には何をしてるのかよくわかんない仕事が結構ある。
こうやって忙しくなっていくんだろーなー、なんて思ったりします。いいことだ!
ううう、時間経過と共にどんどん冷たい…。ホットカーペットから動きたくない。もう五分うぬうぬしたら動こう…。
自分が魚だと言い張る年下の先輩(二十歳の眼鏡っ子。)
生粋の関東人だとゆーのに、どうもノリが関西人ッぽい。ぐいぐいくる。
それはまぁ、早朝からそんな感じでして。
「おはよーございまーす。」
「おう。おはよう。」
「寒いですねー。」
「んー。」
「っていうか、ここ寒い! まだ厨房の方が暖かい!!」
トクメーの働く場所は実は一人だけ外れてる。
皆厨房で働いているんですけど、トクメーだけはそこからちょーっとばかり離れた、販売エリアの裏側とゆーか、ストック用の冷蔵庫があるエリアで作業してるんですよね。場所がないので。
…ここが寒いんだぁ…。
火も遠いし。暖房ないし。人も来ないから人熱も期待できない。そもそも冷蔵庫がフル稼働してるし、材料入れてるから開け閉めするたびに寒い。
「…そんなことないよ。」
「ええ? そんなに寒さに強いんですか?!」
「いや。そんなことはない。」
「…着こんでる、とか?」
「三枚だねぇ。」
「あれ? 三枚も? 薄くないですか?」
「ヒートテックだもん。」
「へぇ、じゃぁ温いですねー。」
「着古してるからそんなに温くはない。」
「…じゃぁなんなんですか?」
…そりゃぁ。あれだ。
「…寒いって現実を受け入れてないだけ。」
「まさかの現実逃避!?」
「寒くない。今日は寒くない。全然寒くない。」
「いや寒いです。認めましょう。寒いですよ今日!」
「皆よってたかって寒いね、って行って暖かい厨房に戻っていくんだ。」
「厨房も中々寒いですけどね…!!」
「現実見ろよ。暖かいんだろ。」
「そりゃここよりあったかいですよ! ここが寒いんです!」
「さむくない。」
「待って。待ちましょう。今日は寒いです。現実を見て。」
「見たら寒いって分かっちゃうだろ…!! 寒くたってここで仕事しなきゃいけないんだからさぁ…!」
寒いよ! 寒いさ! 寒いに決まってんだろ!
あんまりにも寒いから、バター入りのクリームが作ったそばからさっさと固まっちゃってスゲーやりにくいんだからなッ! 最近作ってるミルフィーユとか本気で大変なんだからなッ!?
それに! 朝の品出しだって! トクメーが触ってるのはたまに半解凍程度しかされてなくて超冷たいとか多いんだからさぁ!
寒いんだよ! 今日は足元から冷えが上がってきて本気で辛いんだよ!!
「…。」
「…。」
「…なんだよ。」
「…今日、寒いですね。」
「いい笑顔で言ってんじゃないよ! いじめて楽しいか?!」
「凄い楽しいです。」
「ヤダこの子すごいイイ笑顔ォォオオオオ!!」
こんなくだらない日常(これ絶対関西ノリだって…。)(いいけどね? やってる側は楽しいから?)
「ねーねー!」
「…なんだい。」
「今日、寒いですね!」
「ええい、そのテのギャグは三回でお腹いっぱいなんだよ畜生!」