必ずしも気づくわけではありません。
そして相手も。必ずしも直球で来るとは限りません。
でも自分の知らない感情を知る機会って、多分そういう場合が多いんじゃないかと。
えーっと。なんでこんな状況になったんだっけ?!
告白しましょう。
いやさ。うん。
一番初めは普通だった。ちょっと常識ないけど普通だった!
放課後、軽いノリで遊びに行ったわけで!
いつも仲良くやってる、女友達一人と男友達四人で、トランプやろうぜって!
何故かは知らないけどとりあえず、そのうちの一人の家に遊びに行ったわけで!
ええっと、一体何処から普通じゃなかったっけ?
そう。ゲームやる直前でだ。
女友達が眠いなぁとか言い出して。それ自体はよく在るんだけど。
ソレに反応してどういうつもりだったかは知らないけど。
「膝枕してあげよっか?」
と。男友達一人が言い出して。
うん。ここまではいいよ。ここまでは。
これもよくある話だもんね。よくやる。こういうノリをこの男は。
「えー、どうしよっかなぁ…」
で、ちょっと女友達が迷ってたッポイから、私も悪乗りしてですね。
そう。ちょっとした悪乗り! 別に何を狙ってたわけでもなく!
「なら、私が膝枕してあげよっか?」
そう! 多分此処からおかしくなった!
で、結局女友達は男友達の膝枕の方に行ってですね。
変わりに別の男友達がさらに悪乗りをして。
「俺のほうも来るかい?」
で。私が乗って。
ああうん、冷静になればちょっとおかしかったあの空間!
なんで皆で膝枕しあいっこ!?
一瞬扉開けた友達のおにーさんかおとーとか知らないけど、ビビッてすぐふすま閉めてたじゃん!
ああうん。ちょっと落ち着こう。自分。
ああそのうちに、一人が言うわけですよ。
「なー、膝枕して?」
ついうっかりそのノリでオッケーしちゃってですね。
いや。別に構わないんだけど。嫌じゃなかったけど!
膝枕してやったら刈り上げられた髪の毛がちくちくしてまぁ
「…痛いよ。あんたの頭。やっぱ退いて。」
「――――――くすん。」
うん。ちょっと怪しい雰囲気あったかもしれない。
そんなこんなでゲーム初めて、一ラウンド終了して。
なんでかまた膝枕ブーム。
そのあと誰かがお姫様抱っこしたことないとか言ってですね。お姫様抱っこをやりあうことに…。
ああうん。これは違う。コレは違うから別に問題にならないけど。
その後が問題なんだって。
「なー、膝枕して?」
「え。いいよ。」
「やり!」
そんなに膝枕がいいかねー。とか思いつつ、さっきの男友達にしてやるわけよ。
オプションでなんとなく頭なでながら。
クセなんだよね。人の頭なでるの。
「あー。いいわ。コレ。ずっと永久にしてもらいたい。」
「普通に考えて無理だろ。ソレ。」
「ああ、それなら一日おきでも週に一回でも月に一回でもいいから。」
「ん――、それならいいかな。」
「マジ!? 好きだぜ愛してる!」
「あー、はいはい。ありがとう。」
「うへへーー。ねぇ結婚しよう!」
そう! ここ!
「結婚って。その前にまず清く正しいお付き合いからじゃない?」
「あ。そっかぁ。じゃぁ付き合って。」
「じゃぁって…。っていうか。付き合うってどうするんだっけ?」
一瞬。沈黙が流れた。
「まぁ何でもいいから。付き合って付き合って付き合って付き合って。」
「あのなぁ…。」
うへへうへへ言いながら言われてもさぁ…。
まぁいつものことだし。聞き流す。
それでもアイツはまだ言い続けて。
「好きだぜ愛してる。なぁ、だから付き合って?」
――――ちょっと待て。なんかおかしくないか?
「……おーけー、ちょっと冷静になろう。」
「うん。なってる。」
「ねぇ。」
「なんだいハニー。」
「…まさか、本気って言うオチじゃぁ、ないよね…?」
「マジだよ?」
「まじまじ。本気。愛してる。」
―――――――――――?!
「ちょぉ、おい。どうした?!」
理解した瞬間にとりあえず膝枕してる頭落として一番に目に付いた男友達の背中へ回り込む。
なんかいわれてるけど気にしない! 気にすんな! 大丈夫!
ええええええええええっとですね。ちょっとまて。情報を整理しよう。
なんかちょっと離れた位置から聞こえ続ける台詞があるけどガン無視!
え? 好きだぜ愛してる付き合って?
つまりは。そういう。
好きだぜ愛してる。―――――つきあって?
「オイ! お前なんか顔赤いぞ!?」
「紅いかもしれないけどちょっと待って。ほんとちょっと待って。」
「って言うかお前も! なんで今この瞬間に告白!?」
―――――――こ、告白!?
「うへへ。好きだぜ愛してる付き合って!」
「ちょっと止めろよお前! すごいことなってるぞコイツ!!」
「うへへー。ねぇ付き合って付き合って付き合って?」
「え。ソレ、照れてるの!? 照れてそうなるの!? どっちが照れてるの!?」
「うへへー。」
まって。まって。マジでまって。
え。そんなのちょっと待とうよ。ナニソレ。ナニソレ!
そんな感情向けられるなんて考えもしなかった!
「ああああああああああああちょっとまって! 考える! 考えるからちょっと待って!」
「落ち着け! なんかすごいことなってるから」
「耳まで赤いし! 大丈夫かお前!」
「ソレよりか、オイ、本気だったのか付き合ってに結婚!」
「まじまじ。伝わってなかった?」
「アレで伝わるわけねぇだろぉぉぉおお?!」
「フツー、こういうのって二人っきりで言わないか?!」
「そうだよ! なんでよりにもよってこの場所で?!」
「うへへー。」
ああうん。確かになんか変だとか思ったよ。
だってさ。だってさ。
アイツ、ゲームの愛称占いで「ベストパートナー」って出て以来。
嫁、またはハニーとか言ってたし。
いや、引きずるし長いな。とか思った。でもそういう親愛の情を示してくれてるもんだとばっかり…っ!
「ああああああああのさ! この後習い事あんだよね! マジで!」
「え。そうなの。」
「お前ちょっと黙ってろよ! そしてお前は落ち着け!」
「落ち着いた! 落ち着いた! 考えるからちょっと待って!」
「落ち着いてねぇよ!」
「習い事あるから先帰るし! バイバイっ!」
「話聞けよッ!」
とにかく立ち上がってコート着てカバン持って。
玄関までダッシュ。
「じゃぁ、応えはなるべく早くなー。」
「だから何も言ってやるなよ! ものすごいあわててるぞ!?」
靴はいて。ドア開けようとして。
がっしょん。
がっしょがっしょがっしょがっしょん。
「カギ。しまってる。」
「ああああそうなんだ?!」
「…大丈夫かよ。」
「オッケー。大丈夫。何とかなる。」
とりあえずドア開けて、後ろ向いて、帰りの挨拶だけでも―――
「じゃぁな。」
「――――っ!」
目があったぁぁああああっ!
がっしょん。
扉閉めて。乗ってきた自転車にまたがって駆け出す。
火照った頬に、風が涼しい。
『好きだぜ愛してる付き合って?』
「―――――――ああもう!」
どうしてくれるんだ。すごくうれしいじゃないか!