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神域第三大戦 カオス・ジェネシス97

藤丸たちが再びリンドウの家に戻り、またダグザとの打ち合わせを終えた面々が戻ってくる頃には、空は日の出を迎え、明るくなり始めていた。
「………そういえば戻ってきた頃もう夜だった…」
明け空を見て思い出したようにそう呟いた藤丸は思わずマシュと顔を見合わせ、ぷっ、と小さく笑いあった。タラニスとの戦闘以後、張りつめていた気がようやく抜けたといったところだろう。
サーヴァント陣もさすがに無茶をしたという自覚があるのか、苦笑いを浮かべて互いを見あっている。クー・フーリンが笑い合う二人に近づき、ぽんぽんとその頭を叩いた。
「見張りは交代で俺たちがやるから、マスターたちは少し寝とけ。すぐにって訳じゃあないにせよ、休むべきだ。そういや、凪子の野郎はどこに行った?」
「あぁ、あれならドルイドの霊薬で回復したと思いきや、なんだか一時的なものだったようでね。だから我がマスターの神々と仲良く湯治の最中さ!」
「あー…まぁ人間の握力で腕千切れるくらいの損傷はそう簡単に治りはしねぇわな」
「えっ!?」
「おっと、口が滑った。安心しろちゃんとくっついてたろ」
「寝るなら家の中にどうぞ。私も少し休ませてもらいたのいだけれど」
「おお、休め休め、お前さんに無茶させたら凪子に殺されそうだ」



―――こうして、それぞれがそれぞれの立場と役割において準備を重ね、整えていった。
ルーとダグザによれば、理由は不明だがバロールは拠点から早々動くことができず、転移することで移動をなすが、一度それを実行すると再び転移できるようになるまでに7日ほど時間がかかるらしい。つまり、バロールはタラニスを襲撃したが故に、向こう6日は確実に拠点にいる、ということになる。

「ん?それはわざわざ自分とこに帰ってるのか、バロールは?毎回?」
ルーと同盟のようなものを締結した、その翌朝。
どのようにバロールを襲撃するのか。泉にとんぼ返りする羽目になり、ついでにその相談をしていた凪子はルーの説明に首をかしげた。カルデア側の代表として来ていたクー・フーリンと通信機越しのロマニも、同様に顔に疑問を浮かべていた。
凪子同様に泉につかっているルーは、小さく頷いた。タラニスは相変わらず参加する気はないようで、少し離れたところで眠っているのか、微動だに動く気配を見せていない。
「帰っているな。強制帰還のようにも見えた。恐らくだが奴は甦ってから精々月の満ち欠けが一周と少しした程度、まだ存在が不安定なのだろうよ」
「つまりそれを安定に保つための何かがある?」
「あぁ。あの辺りでは見かけない、白い樹があった。奴に豊穣の権能なんぞが付随されたことを見ても、その樹が要だろう」
「…ふむ。それを破壊すれば弱体化も叶う?」
「それはやってみないことには分からんな」
ルーはそう言って肩を竦めた。凪子はクー・フーリンと思わず顔を見合わせたが、話を続けろと言わんばかりに促されてルーに改めて向き直る。
「しかし、それを知ってるとなると、お前さん襲撃かけてたのか?敵の本拠地で??」
「私がかつてどのように奴を殺したか、貴様は知っているか?」
「遠距離から槍だか石だかを投擲して目を貫いた、んじゃなかった?戦争の場合は」
「…戦争の場合以外あるのが謎だが……まぁ、その通りだ。最初に衝突したのから14日後、奴の本拠地を見つけ、二度目の衝突の際には転移される前に同じことをしたのだがな」
『投擲対策はされていた?』
バロールの魔眼は視界のものを殺す。つまりそれは、近づけば近づくほど不利だということだ。かつて投擲を持って倒した相手と、何故わざわざ近距離戦闘になる上に、敵の本拠地などという相手に都合のよいところで戦うようなことになったのか。
遠回しにそう問うた凪子に、暗に投擲が通じなかったのだとルーは仄めかした。ロマニが確認をとるように尋ねた言葉にルーはちらりとそちらに視線をやったあと、頷いて肯定を返した。
「そうだ。そして向こうから仕掛けてくる場合、転移で近くに跳ばれるからな。奴の目的が現状私と闘うことだけにあるようだとはいえ、その為だけに生き返るほど生き汚い神ではない。何か他に、目的を持っているはずだ。であるなら、奴にはなるべく本拠地に籠ってもらっていた方がいいだろう?」
「……確かに。そんだけ移動に制限があるなら、お前さんと戦うためだけに出てくる、ってのはコスパが悪い、何か他のことをしている可能性はあるか」
「故に、三度目の時はいっそのことこちらから出向いたのだ。深遠のが戦っているのを見かけたのはその時だ。私が侵入を終えた頃にはいなくなっていたがな」
ルーの話を聞きながら、ひいふうみ、と指折り日数を数えていた凪子は、ふ、とその指を止めて考え込む様子を見せた。
「…三度目。復活してから3週間程度。リンドウの話から計算すると、この時代の私がリンドウの前から姿を消したのは3週間前…」
「時期は一致するな」
「そうさな…それで、三度目でも決着はつかず?」
ざばり、と泉から腕をだし、鞄から引っ張り出したボードにカリカリとメモを残し始めながら、凪子は衝突の時の様子を尋ねた。
ルーはどこかぶすっ、とした表情で不愉快そうにうなずく。何度も衝突しているのに勝負がついていない、ということに思うところがあるようだ。
「あぁ。奴には転移の時間制限があるが、こちらも奴の目が効果を発揮するほどまでに開くまでという時間制限がある」
「……ここに時計があるんですけど、分でいうとどれくらい??」
「………………………そうだな……何も妨害しない場合、15分といったところか」
秒針の動きをおってある程度の時間間隔を測ったのち、ルーはそう概算を出した。
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