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神域第三大戦 カオス・ジェネシス89

「…………………………………」
「ははぁ、これは流石にあのドルイドの占いも外れたかな?」
『マーリン』
「なんだいロマニ・アーキマン?」
『ちょっと黙ってなさい』
一方のルー側は、というと。
洞窟に姿を見せたクー・フーリンに、ルーはあからさまに顔をしかめていた。クー・フーリンの方はというと、リンドウの言葉に本当に吹っ切れていたのか、そんなルーの表情をどこ吹く風で見つめていた。挑戦的である、ともとれなくはない態度だ。
そんな二人の様子に、ぷっ、とダグザが小さく吹き出した。カルデアとルーが取引している間に目覚めていたらしいタラニスは、疲れを見せる顔で泉に浸かったまま、呆れたように二人を見上げている。
「はっは、なんだ、似た者同士だなお主らは。親子を語るだけはあるというこか?」
「………何が言いたい翁…」
「なぁに、子はいつまでも子ではないという話よ。それでもお主が己が戦場に馳せ参じさせたくないというのなら、それはお主の我儘にしからなんぞ、ルーよ」
「そんなことも分からぬ愚か者に見えるか翁よ。…………フン、仕方ない、私も焼きが回ったということだけのことだ」
「………………」
ルーは自嘲気味にそう言うと、諦めたようにクー・フーリンから顔をそらした。クー・フーリンは一瞬何か言いたげに口を開いたが、何も言わずに閉じた。
洞窟の奥の出っ張りに腰を下ろしたルーは、身体の前に垂れた髪の束を後ろへ払うとサーヴァントの面々に向き直った。それを会話の開始と捉えたか、ダグザも身体ごと向き直った。
「さて、儂も話は聞いておった。お主らがルーの戦闘補助とやらの立候補者か?」
「そうなるとも、長老。こちらは幼い姿での顕現だが、真名をギルガメッシュ。半神半人、神性の高いものほど捉えて離さぬ鎖を所有する、人類最古の英雄と謡われる人物だ。もう一人は紹介も要らないかな。こちらの浮いているのはロマニ・アーキマン。カルデアの司令塔たる人間だよ」
ダグザの問いかけに、元からルー側のマーリンが簡単に紹介を済ませる。ギルガメッシュの説明にダグザは、ほぉ、と感心したように声をあげ、小さく浮かび上がるロマニを興味深げにまじまじと見つめている。タラニスは興味がないのか、口を出す権限はないと言っていたことからも参加する気がないのか、横目で見るばかりでこれといった反応は示さなかった。
「…ふむ、人間の指揮者とは果たして如何程なものかと思ったが、興味深い者じゃの」
「…ただの怠慢な男ですよ、彼は」
「そうか?手厳しいことじゃの、まぁよい。しかし、ある程度立ち回りが出来ないことにはすぐに死なれるだけだろうからのう…。タラニス、お主は戦ったんじゃろう?どうだった」
ダグザに唐突に話を振られたタラニスは僅かに驚いたように身動いだが、うーん、と複雑な表情を浮かべた。
「どう……と。盾の女子の防御力、セタ坊のからくりじみた魔術は面白くはありましたが…………」
「特別強くもないが弱くもない、奇妙な技を使うが抜け穴はある、といったところか」
「まあ、そうだ」
抜け穴はある、というルーの言葉に、自身の乗っ取られたウィッカーマンや軽々と乗り越えられたマシュの城壁を思い出しか、クー・フーリンはしぶい表情を浮かべた。子ギルも切られた自身の鎖の事を思い出したのか、拗ねたような表情を浮かべている。
マーリンはそんな二人を面白そうに見たが、すぐに視線をダグザへと戻した。
「判断しかねるといった顔だね、長老」
「まあのう…」
「…僕の鎖は本来、神性の高いものにはどうあがいても破れません。貴方の剣はどんな鎖も切り裂くそうですね、だからこの場ではその因果の方が勝ったようですが…バロールがそうした因果を持つ武器を持っていなければ、僕の拘束は破れませんよ」
「ほお。まぁ確かにお主は幼い姿で顕現したとか言われておったから、破れぬ鎖と鎖を破る剣、同等であったとして、今のお主が破れるのは道理であろうよ、そう拗ねるな」
「別に拗ねてるわけでは…」
図星を刺されて気まずげに子ギルは目をそらす。ダグザは幼子をみるように楽しそうに目を細めたが、すぐに真面目な顔に戻った。
「だが、その鎖とて本来この時世にあるものではない。ということは、お主が死ねばその鎖も消える、そうではないか?」
「………、それは、おっしゃる通りです」
「であるなら、バロールはお主の本体を間接的に殺す手段を取るだけであろうよ。その時にお主が死なぬだけの力があるのか?ということが問題だ」
「それを言い出したら無理な話なのでは?あのクソジジイの邪眼を防げそうな能力があるようには思えんですよ」
「タラニス、あの邪眼をまともに防げるものなぞ神にもおらんだろうて」
ケッ、と毒を吐くタラニスをダグザがたしなめる。
確かにケルト神話において、バロールの死に様は戦争で死んだだの、たまたまあるものを殺した話をしたら相手がその息子でそのまま殺されただの、いくつか語られはすれど、それの効果を防いだという語りはない。戦争での死では投擲により後ろを向いた目に味方を死なせてしまったという記述がある辺り、無差別に殺してしまう魔眼であるようだ。
無差別であるということは制御できる代物ではないということであり、それはつまり、非常に強力だという裏返しの説得にもなる。
『…魔眼の効果を呪いと捉えてよいならば、即死ではなく、死ぬまでいくらかの耐性をつけることは可能だと思う。だろう、マーリン』
「そうだねぇ。今の私は祭司者というドルイドの側面が強く出ているから、出来ないことはないかな」
「ほう」
「でも、そんなに強力な魔眼であるならそちらはどう対策するつもりだったんだい?何かは考えてるんだろう?」
「………………」
探るようなマーリンの言葉に、ピクリ、とルーの指が跳ねた。
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