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この街の太陽は沈まない75




「―クァァァァァアッ!!」
―――オルタは咆哮しながらメリケンサックを叩きつける。男―雀蜂のボスは女王蜂というそうなので、女王蜂と呼ぶことにしよう―女王蜂は、紙一重でそれをかわしていく。ギリギリオルタの方が速いのか、時折女王蜂の身体を刃がかすめていく。
「ちぃ、今日は狂暴な連中とよく会うな!」
女王蜂はそう毒づきながら、すばやく後ろへと後退しつつ、壁を蹴って跳躍し、オルタの頭上を越えていく。オルタはそれを目で追いつつ身体を捻り、自分の攻撃で誕生した瓦礫を蹴りあげ、まるでバッターがボールを撃つかのごとく、メリケンサックの刃でその瓦礫を打ち、振り抜いた。
「!」
女王蜂は上体を仰け反らせ、それを間一髪避けた。そのまま男は手をつくと足を振り上げ、くるりと回って立ち直した。
そして起き上がると同時に銃口をオルタに向け、発砲した。オルタはその攻撃を予測していたので別の瓦礫を放り投げ、盾のかわりにした。そしてその盾が機能している間に大きく遠回りをして走りながら、女王蜂との距離を一気に詰めた。
「オラァ!」
オルタはそのまま息をつくまもなく拳を腰にかまえ、正拳突きの構えで拳を振り抜いた。メリケンサックは男の顔を掠め、壁へと叩きたけられた。
女王蜂はすぐ側で破壊されたことにより生じた衝撃波に目を細めながら、銃剣の剣でオルタへと斬りかかった。
オルタは片方の銃剣は反対の手のメリケンサックで受け止め、もう片方の攻撃は後ろへ跳躍してかわした。女王蜂はそんなオルタを追撃するようにすばやく発砲するが、それをオルタは素早く横にとんでギリギリでかわしていく。
オルタは銃撃が追ってくるのを走って避けながら曲がり角で物陰へと転がり込んだ。
「…チッ」
女王蜂は、オルタをあぶり出すようにガンガンと角を遠慮なく撃ってくる。耳障りな音にオルタは舌打ちをしながら、ちらり、と腕時計を見下ろした。
そう長く戦闘していたつもりはなかったが、すでに五時間近くたっていたらしい。それほど戦いに自分が集中していたことに驚きつつも、道理で息が上がってきたはずだとずいぶん他人事のように納得をする。
長時間の戦闘で刃こぼれしていたらしい、メリケンサックの刃をスペアのものに変え、ぐ、と拳をつくってちゃんと固定されているのを確かめる。相変わらず撃たれ続けているところを見て、撃ちながら女王蜂がじわじわ近付いてきていることをわずかに聞こえる音から察する。
「!」
オルタは懐から手榴弾を取り出すとピンを引き抜き、女王蜂がいるだろうと薄々目安をつけた位置めがけてそれを放り投げた。目安はドンピシャだったのだろう、一瞬銃撃が止み、オルタはその隙に飛び出した。
「貴様、」
女王蜂は驚いたようにオルタを見た。自分が手榴弾を投げた、その着地点に飛び出してくるとは思わなかったのだろう。
その驚きで、一瞬女王蜂の反応が遅れる。オルタはその隙をついて思い切り女王蜂を蹴り飛ばし、降ってきた手榴弾はさらに上空へと弾き飛ばした。
「言っただろう、腹の中身すべて見せてもらうとな。そう楽に死なせやしねぇよ」
上空で手榴弾がはぜ、欠片や火花がぱらぱらと落ちてくるなか、オルタはニヤリと笑ってそう言った。蹴り飛ばされた衝撃で地面を転がったのだろう、えぐれた地面に尻餅をつく形で身体を起こしていた女王蜂は、しかし、オルタの言葉に笑みで返してきた。
「フン、いってくれる」
女王蜂はさしてダメージを受けていないのか、軽々と身体を起こし、マガジンを装填し直す。今までの戦闘で交換していたマガジンとは、少しことなるようにも見えた。
「このまま貴様に拘束されてやるわけにもいかないのでね。本気でいくとしよう」
「あ?今までも本気だったろうが」
「本気なものか。奥の手はそう易々と見せるものではないからな。おっと、貴様はそういったものすら持たない主義が?それは失礼した」
「……は、口は達者だな。なら、多少乱雑にしても壊れねぇな―!」
いちいち嫌みが多いやつだ、と思いながらオルタは勢いよく地面を蹴った。
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