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この街の太陽は沈まない70

「そぉらっ!!」
「っ、」
静かな、さびれた集合住宅街の路地裏で、鉄のぶつかる音と発砲音が交互に響き渡る。
「ちィ、ちょこまかと――!」
“ランサー”はひらりひらりと攻撃をかわしていく男に舌打ちをした。
彼は、「勝手に漁られたものを取り返しに来た」と言っていた。それはつまり、雀蜂の情報に他ならないだろう。そしてさっさと立ち去らずに店に残っていた辺り、情報を調べた本人である“キャスター”の口も封じるつもりだったであろうことは、“ランサー”にも容易に想像できた。同じ屋根の下で暮らしている自分もその対象であろう事も。
だが男は、恐らく自分を殺すつもりはあるだろうに、どうにも決め手に欠ける戦い方をしてくる。慎重なのか確実を取りに来ているのかは知らないが、なんの面白味もない。
「オレを殺してぇんなら、もっと気合いいれなァ!!」
「っ!!」
“ランサー”はそう一喝すると、一気に距離を縮め、槍を思い切り男へと叩きつけた。あまりに速い打ち下ろしだった。
男はわずかに目を見開き、咄嗟に交差させた両方の銃でそれを受け止めた。今さら気がついたが、男の銃には銃口の下の分に刃がついていた。随分と変わった銃剣を使うものである。
槍と刃が拮抗し、ミシミシと金属が悲鳴をあげる。
「チッ、野蛮な男だ。さながら貴様は獣だな――!」
――そうして、その攻撃に男も頭脳戦は通用しないと悟ったか。男は“ランサー”の槍をはじくと瞬間的に回し蹴りをくりだし、そうして僅かにあいた“ランサー”の脇腹へと銃剣を突き刺すように飛び込んできた。
「そうこなくっちゃあな!」
ぎらり、と“ランサー”の目が光る。“ランサー”は振り上げた足で男の銃剣を上へと弾き、後ろ手に地面に突き立てた槍に身体を預け、もう片方の足で男の顎を蹴りあげた。
「ッ、」
唇でもきれたのだろう、わずかな血が宙を舞う。“ランサー”はそのまま槍を軸にして後転すると、すばやく引き抜いた二丁拳銃を男に向け、ためらいなく発砲した。
男は蹴り飛ばされた衝撃をそのまま流して同じように後転し、そのまま低く伏せて上体を狙っていた“ランサー”の弾を避けた。そうしてその体勢のまま、地面を蹴って砲弾のような勢いで飛び出してくる。“ランサー”は放りあげたデザートイーグルをがちりと歯で噛み口でもつと、空いたその手で槍をひっつかみ、男の剣部分での攻撃を槍で受けた。
片方の刃は槍にぶつかり停止した。が、男は反対の腕を、ぶつかったことで固定された腕の方に乗せ、銃口を“ランサー”の額にピタリと当てた。
「っとォ!」
“ランサー”は咄嗟に上体をのけぞらせた。躊躇いなく撃たれた弾丸が、わずかに首を掠めていく。かすったような痛みのあと、じんわりと首が熱をもつ。
“ランサー”は、ニィ、と笑うと、再び槍を軸にして足を振り上げた。その攻撃は察していたのか、男はすばやく後ろにとびずさりかわした。
“ランサー”はそのまま槍を支えにして身体を回し起こした。
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