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:†創造的怪談・其の陸夜†:



*都市伝説創造怪談シリーズ第陸譚。
*夢の中の回廊を堂々巡りするお噺。
*夢は時に現とは違う場所へ繋がる。



―…昔々、不思議な夢の中で現れる少女がいたらしい。



【:†夢渡しの怪・夢子さん†:】



(長い真夏の夜の夢の中で)
(覚めない惨劇の幕が開く)


下り続ける階段を下り終え
溶けて崩れた絵画の大地に

毒蛾の燐粉で導かれるのは
髑髏の積み重ねられた墓場

腐り落ちた林檎の樹の並木
烏の姿と鳴き声轟く夜の空

空虚な廃屋に招かれたなら
さあさ、椅子へと腰掛けて

卓へ並べられる欲望の数々
(ヨモツヘグイ)召し上がれ

溶けかけのアイスクリーム
梨と未熟な桃と葡萄の甘さ

飴に蝕まれる執着の代償は
足下の暗い穴へと支払われ

高い塔の上から見下ろすのは
お喋りな黒猫と翼の折れた鳥

白と黒の逆さまの虹が浮かぶ
太陽と月の昇る奇怪な空模様

星月夜の下をさまよう吸血鬼
鍵の合わない扉の下には毒茸

喪服の郵便配達人は凶を運ぶ
断ち切られた手首を食べる狐

咲き誇る花を鋏で切り取って
橋の上で会えた人は死を誘う

そんな凶夢ばかりを集めた物語
夢を渡って収集した不吉の楽園

どの夢が出口へと通じているかは
極彩色の夢を見てからのお楽しみ


(脳髄の暗い片隅で泡立つ血潮)
(現と夢の狭間でさまよう意識)

(あなたの夢へと通じる回廊へ)
(鍵を開けて流し込む悪夢の毒)

(目覚めへの逃げ道踏み潰して)
(また一つお気に入りが増える)





はい。皆様こんにちは〜。
都市伝説創造怪談シリーズ第陸譚です。
『夢渡しの怪・夢子(ユメコ)さん』は、夢に出てくる神出鬼没の怪奇です。
夢占いで言うところの『凶夢』を集めた楽園を作り、人の夢に介入して、自分の楽園に人を招いて殺してしまうと言う、『猿夢』とか『フレディー』みたいな得体の知れない存在になってます。

夢子さんの設定は特に決まっていません。生まれたきっかけは定かではありませんが、夢占いものが解明されて来た中で生まれ落ちた都市伝説だと思われます(殴)

ちなみに、夢の中で物を食べること(特に甘いもの)は一部を除いて凶夢とされており、記憶や嗜好以外の暗示的意味合いとしてはあまりよろしくありません。腐敗したり未熟な果実もこれに近いですね。
創作文の中で『(※)ヨモツヘグイ』を用いたのは、凶夢の意味合いを強く表現出来ればと思い(寧ろ現と夢は別世界と言う概念を根底に置いて)引用してみました。

また、創作文の括弧文以外の一行一行に、凶夢とされている事柄が各々含まれていて、そちらも手元に有る『夢占いの本』を参考にさせて頂きました。普段は不気味とか不吉と思われている事柄が、一概に悪いとは言えない辺りが、深層意識の奥の深いところだと思います。逆も然りですが。

夢子さんの召喚法はありません。気に入った夢があったら、ちこちょこ渡っていると思うので…予防策としては、ドリームキャッチャー辺りをお勧めします。


ではでは、今回はこの辺で☆


*


【プチ豆知識】
(※)『黄泉竃食(ヨモツヘグイ)』
黄泉の国の竃と火で煮炊きされたものを食べること。食べると黄泉の国の住人と見なされ、現世に戻って来られなくなるとされている。



*

:†創造的怪談・其の伍夜†:



*都市伝説創造怪談シリーズ第伍譚。
*喪失を埋め合わせようとするお噺。
*悲しみと傷痕は同じ色をしている。


―…昔々、影を無くして彷徨い続けた少女がいたらしい。



【:†影送りの怪・影子さん†:】



(あなたの影を下さいませ)
(消えてしまった私の為に)


理不尽に投下された悪意が
平穏の全てを焼き付くして

出来上がったのは悔恨と悲哀
その傍らで佇む擦り切れた私

よく晴れた青空の下で
家族と影送りをしたの

きっとあの時に私たちの御霊は
空へ昇ってしまったのでしょう

瞬きもせずに壱から順に数えたら
手を繋いだ影が私たちを見下ろし

どこか寂しげに微笑んでいた
その意味が今やっと分かった

あの頃に在った私の本当の御霊は
既に青い空のお花畑に旅立ったと

此処に在るのは焼き付いた残影
生きたいと願った私の未練の形

生きながらに苦界に曝された
様々な想いが混ざり合った黒

無くなってしまった私の分身
埋め合わせる術無く泣き崩れ

青空に縫い付けられた傷痕に
消えない悲しみが重なり合う

失ってしまった存在の形と
生まれてしまった虚無感を

いつか埋めてくれる新しい影を
いつまでもここで待っているの


(よく晴れた青い空の下で)
(壱から拾を数えて影送り)

(空に昇った残像は時を越え)
(悲しみは満ちて染みて行く)

(欠けてしまった想いの形を)
(その場所で待ち続けながら)


『―…ねぇ、私と影送りしましょう?』





はい。皆様こんにちは〜。
都市伝説創造怪談シリーズ第伍譚です。
『影送りの怪・影子(カゲコ)さん』は、場所に憑いている遭遇系の怪奇です。
基本的に影子さんのテリトリーに入らなければ、何の害もない…シリーズ内でも比較的温厚な存在だと思っています。
題材にしたのは、小学校の教科書に載っていたお話です(←今も載っているのか疑問ですが)。子ども心に人の死を活字で見て、一番印象に残っていた作品ですね。
今読んだらきっと泣けると思います←

設定としては、影子さんは戦時中に死んでしまった少女です。原爆投下等の惨劇で、生きながらに壁や地面に焼き付いてしまった影の思念から生まれた怪奇ですね。
自分の影は焼き付いてしまってその場から動けないので、動ける形を持ちたくて他人の影を欲していますが、本当は誰かと遊びたがっている寂しがり屋さんです。

ちなみに、召喚法は影子さんのテリトリーの中で『影送り』をすることですが、影子さんに影を取られると、その人は近い内に死にます。影子さんと遊ぶと影を返して貰えるので比較的良心的ですが、影子さんからの遊びの誘いを断ると、二度と影を返して貰えないので、興味本意でやらないことをお勧めします。
(※ホラーフリーゲームで言うと分岐ですね。ゲームだと下手をすると詰む可能性が有るので、こまめなセーブが必要です)

『どう頑張っても絶望』タグはギリギリ回避出来そうな怪奇ですが、遭遇しないことが一番ですね。お気を付け下さいませ。


ではでは、今回はこの辺で☆


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