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:†創造的怪談・其の参夜†:



*都市伝説創造怪談シリーズ第参譚。
*棄てられた命の成れの果てのお噺。
*不幸は忘れられた頃にやって来る。



―…昔々、駅のロッカーに置き去りにされた、女の子の赤ちゃんがいたらしい。



【:†駅のロッカーの怪・匣子さん†:】



(例えあなたが忘れてしまっても)
(私はあなたを忘れない…永遠に)


生まれ落ちたのは閉塞の闇
産声だけが鼓膜を揺らした

あなたと繋がっていたヘソの緒が
あなたが私を宿した唯一の証明で

産まれて死んだ未練だけで
こんな姿になってしまった

この場に染み付いた無惨さと
狂い果ててしまった過去とを

死してなお闇雲に食みながら
あの頃とは違う私を形作った

この暗い奈落を孕む匣は
あなたの子宮より冷たい

暖めてくれる血潮の温もりも
共鳴してた鼓動も聞こえない

だからあなたに会いに行こう
歪に伸びた手足で地を踏んで


『アなタの居場所ハ分かッているヨ』
『あナたと私トを繋ぐ血が叫ぶカラ』


ねぇ、会いたかったよね
私は凄く会いたかったよ

あなたに望まれなかった私が
あなたの命を望んであげよう

あなたが会いたくなくたって
あなたに会いに行ってあげる

産みの親の喜びを感じさせてあげる
私の存在でもって分からせてあげる

きっとあなたも嬉しいでしょう
だってあなたは産みの親だから

ねぇ、私が行くまで待っててね
絶対に、絶対に、絶対に絶対ニ

アナタを見付ケ出シテあげるカラ
何処ニ行っテモ何処マデ逝ッても

あなたが私を愛してくれたように
私も同じくあなたを愛してあげる

アナタが愛シテクレタアノ愛シ方デ
私もアナタヲ愛シテ愛死テアイシテ


(とある駅中のコインロッカーにて)
(奇妙な女性の変死体が発見された)

(四肢があべこべに折れ曲がった躯)
(子宮は内側から突き破られていた)

(そんな奇怪で陰惨で無残な光景の中)
(何処からか少女の声が響いたと言う)


『―…ヤっト会エたネ、お母サん』





はい。皆様こんにちは〜。
都市伝説創造怪談シリーズ第参譚です。
『駅のロッカーの怪・匣子(ハコ)さん』は、都市伝説の『コインロッカーベイビー』と『仄暗い水の底から』を元にした怪奇です。人と言うよりも場所に憑く怨霊ですね。産まれて直ぐに死んでしまった後も天に昇れなくて、ロッカーに纏わる闇と陰惨と悲しみを糧に育った子なので、母親に愛されたくて堪らない可哀想な子です。恨み辛みよりも愛情を求めています。どちらかと言えば怖いより悲しい雰囲気ですね。

確か聞いた話によると…赤ん坊とか子どもの霊って、純粋だからこそ動機に忠実で、それ故にそれを満たす為なら何でもするので、下手な浮遊霊より行動が怖いんだそうです。子どもの地縛霊が、友だちが欲しくて生きた人間を連れて行ったりするのは、怪談でよくある話ですよね。

また、駅には忘れ物が多いですので、その観点からも『忘れられても覚えている』と言う言い回しを紡いでみました。恨み辛みが深いからこそ、愛情は同じ重さと意味合いを兼ねているのだと思います。
例え、それが当事者にとって、どんな恐怖や惨状となって降り掛かるとしても。どんな残酷な結末が用意されていようとも。

ちなみに召喚方法は、匣子さんの死んだとされる曰く付きのロッカー(詳細及び所在不明)に、自分の所持品を入れて一週間忘れ続けると、匣子さんに遭えます。
ロッカー(=子宮)に物(=自分)をいれた人が匣子さんから見れば母親に当たるので、匣子さんに愛されたくない人・匣子さんを愛せない人はやらない方が懸命です。

誰かに理不尽な痛みや死を押し付けておいて、素知らぬ顔で平然と生きていける人は…まぁ、早々いやしないでしょうが。
そんなに都合の良く出来た現世ではないので、忘れた頃にやって来る呪われた忘れ物には、十分お気を付けを…。


ではでは、今回はこの辺で☆


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