*文豪/ストレイ/ドッグスで短篇夢譚。
*登場夢主は乱歩の相方で福沢の養女。
*日常系なほのぼの話を目指してます。
*夢主が『願い事』を考える閑話な譚。
【:†願い事を綴る七夕の日の譚†:】
無尽蔵に転がる選択肢や願望の中で。
それこそ、星の数程のそれらの中で。
たった一つだけ、選び取るとしたら。
私は一体、何を手に取るべきだろう。
◇
「はい詩歩、コレあげる♪」
「……これって、短冊?」
書類を纏めている最中。重ね合わせた白い紙面の上に被せる様に差し出された長方形の色紙を受け取り乍ら、小首を傾げる。
渡された色紙は、淡く柔らかな橙色だ。
「今日は七夕だからねぇ。折角だから、皆でコレに願い事を書かないかって事になったんだよ。今夜は晴れるみたいだしね」
私の問いに、乱歩は上機嫌で返答する。
それにつられて、他の社員の机(デスク)を見遣れば、皆各々思い思いに短冊に願い事を記入している最中らしく、賑やかだ。
社員たちが行事を嗜む姿は、伝統を重んじると云う風よりも、それに便乗して、ワイワイ楽しんでいる意味合いの方が強い。
「詩歩は、願い事に何て書くの?」
「……う〜ん」
乱歩に問われ、私は再度小首を傾げる。
昔――、社長(義父様)と乱歩に救われた当初は、願い事の意味すら知らなかった。
それが意味を帯びて輝きを宿した頃には、私は探偵社の最古参の一人になっていた。
乱歩の背を支え、乱歩の隣に在る事が、私の欠けた空白の部分を埋める様に自然と、探偵社に於ける私の役目になっていた。
武装探偵の社員になってから十数年。
事務員統括主任になってからは数年。
薄暮の刻に正義の旗を掲げ打ち立て続けて来て、今に至るまでを振り返り乍ら、改めて、今此処に在る温かな情景を見遣る。
「……」
太宰は国木田に絡んでは、例に漏れず投げ飛ばされている。大方、太宰が国木田の書いた短冊の内容でも揶揄ったのだろう。
潤一郎とナオミちゃんは、お互いの短冊の内容を見せ合い乍ら、人目も憚らず恒例の仲睦まじい触れ合いを繰り広げている。
天井に着く高さの竹を運んで来た賢治君は、里芋の葉に溜まった朝露で墨を擦って、習字の手習いをして来たと話している。
その話を聞く傍らでは、晶子ちゃんが願い事を書き乍ら彦星に悪態を吐いている。年に一度しか河を渡れないとか根性無し云々の旨を溢しつつ、苦笑を浮かべている。
敦君と鏡花ちゃんは、如何やら七夕の行事が初めての様で。願い事を彼是悩み乍らも、楽しそうに会話に花を咲かせている。
「……」
斬った張ったの荒事を領分とする武装探偵社の、平穏な一時。その情景と短冊とを見較べ、口許に笑みが浮かぶのを感じた。
「……これは、難しいね」
「ふぅん? 願い事を書くだけなのに?」
私の内心を察しているだろう乱歩は、悪戯っぽく、楽しそうな声音で訊ねて来る。
「……昔には無かったものが、沢山増えたから。願い事も、選ぶのが難しいよ」
乱歩に応え乍ら、胸ポケットから万年筆を取り出して、短冊に願い事を記入する。
温もりを宿した星たちを『幸せ』と云うのならば、自ずと願い事は定まって来る。
選ぶのが難しいのなら、その願いに当て填まるものを全部一纏めにして仕舞えば良いのだ。そうすれば迷う必要は無くなる。
「……うん、出来た」
短冊の記入を終えて頷くと、私は社員たちの賑わいの中へと、足を進めた――。
◇
例え、この願いが天に届かなくても。
例え、この行為に確実性等無くても。
私は、願いを願わずにはいられない。
それが、私の望んでいる最上だから。
『この平穏が長く続きますように』
◇
はい。皆様こんにちは♪
山間の家にも関わらず慣れない熱帯夜に最近やられ気味の燈乃さんです(´△`;)
夜間の熱中症にはご注意下さいませっ!!
さて。今回載せましたのは、久々の文スト乱歩夢でございます。しかも閑話です。
そして。何気に七夕当日に上げられなかったネタの雪辱戦だったりします(Σヲイ)
織姫と彦星のあるあるネタでは無く、夢主の『願い事』に対する彼是を綴ってみました。あと、夢主視点から見た、社員たちの動きやそう言った感じの諸々を色々と。
寒地鼠の案件で本家が未だ修羅場から落ち着いていないので、ほのぼのを投下(爆)
昔には無かった大切なものが増えて来た上で、それらを守ろうとする夢主の思想は、社長から受け継いだものの一つですね。
勿論、武術も同等に受け継いでいます。
その辺りの過去の出来事も、少しずつ綴っていけたらと考えています。道は長い←
そして多分。この後、探偵社では流し素麺とかのイベントが行われると思います。
で。太宰が盛り上がった雰囲気に止めを刺しに行くと思います→国木田激怒の図。
……はい。そんなこんなで。今回もここまでお付き合い頂きましてありがとうございます。乱歩夢とか称して今回はあまり乱歩さんと絡んでないので、次回はもう少し夢主との絡みを多くしたいですね(*^ω^*)
ではでは、今回はこの辺で☆
*