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:†暁星短編怪奇譚・壱†:



【暁星短編怪奇譚・前置き】
※この話は、私こと暁星燈乃が体験した・或いは知人から聞いた不気味で奇妙な出来事の細やかな一部です。時系列入り乱れまくりの続編を含むお話もあります。
私の妙な体質の都合上、『怖いお話』と言うよりも『不気味なお話』が多いです。

よろしければどうぞ、日常の片隅に佇む仄暗い深淵を覗いてみては如何でしょう?



【:†黒いコートを来た人影†:】



これは私が高校生の頃に聞いた話です。
夏休みに入る少し前。部室で時期的に怪談風な話題で盛り上がっていた中のこと。

当時高校二年生だった私の後輩で、何人か『見える人』―所謂霊的なモノを見ることが出来る子が何人かいまして。当時の私は『結構多いんだなぁ』と言う感じで、内心自分でも驚いていたのを覚えています。

そんな訳で、個人的な不思議体験も交えながら、後輩たちの不思議体験談もおっかな吃驚面白おかしく聞いていたんです。

その中でも、個人的に少し不気味で興味を覚えた話がありましたので、今回はそちらをお話し致しましょう。

見える子の後輩の一人(ここでは仮にNちゃんとしましょう)から聞いたお話。
Nちゃんは、物心ついた頃から夏になると妙なものが見えるらしいのです。

特にソレを良く見掛けるのは、Nちゃんの実家に近い人通りの多い道路。横断歩道を渡る時に、ソレは人と人の間に紛れて現れるのだそうです。

Nちゃんの見掛けるソレは、真夏なのに真っ黒なコートを着て、上から下まで真っ黒な出で立ちの奇妙な人影(聞いた話だと、手には白の手袋を着けていたとのことです)。それだけなら、未だ『夏の暑さにやられた変な人』と言う位置付けで片付けられますが、勿論そんな訳がありません。

そう。黒いコートの人影は、首から上が無かったのです。明らかにこの世の者ではありません。そんな不気味過ぎる存在がいるにも関わらず、周りの人は素知らぬ顔で横断歩道を渡って行き、黒いコートの人影はNちゃんだけに見えるらしいのです。

ソレを見掛ける度に、Nちゃんは目を合わせないように努めていて、その黒いコートの人影の方も、Nちゃんを気にすることなく横断歩道を渡って行くのだそうです。

『見えている』と言うことは、『そう言ったモノ』と霊的な波長が合っていることが多く、何かしら向こうからのアプローチが有るのがお約束なんですが、その黒いコートの人影はNちゃんに何を求めるでもなく、横断歩道や道に現れては去って行くだけなんだそうです。

Nちゃんに何かを語り掛けるでもなければ、Nちゃんを襲う訳でもない。憑いて来る訳でもない。横断歩道を渡るだけです。
真夏の炎天下の路上。すれ違い様、茹だる様な暑さの中で、黒いコートの人影の周りだけ温度が冷たく、明らかに周りの空気と違うのが分かった…と言います。

結局。その黒いコートの人影は浮遊霊か地縛霊の一種なんじゃないかと言うことでまとまり、Nちゃんの体験談はお仕舞いになったんですが、未だに不気味なお話として、私の記憶に残っています。

大阪の某駅の広場に現れる『赤いコートの女』の話と雰囲気が似ていますが(←コレが見えた人は絶対に関わってはいけません危険なのでその場から即全力で逃げて下さい)、未だに存在自体が謎ですね。

そこにいる不気味。そこにある不気味。
いまいち正体の分からない、あやふやで曖昧な不安を宿している恐怖。そんな日常に潜む奇妙なもの見た、Nちゃんの真夏に体験したお話でした。

真夏の横断歩道。逃げ水の向こう側に、人に紛れて現れる不気味で奇妙な異形には、皆様十分お気を付け下さいませ。


…ではでは、あまり怖くなかった上にやっちまった感が満載ですが、ここまでありがとうございました(お辞儀)


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