薄く朝露のように透き通った髪と、青空を映して閉じ込めたように美しい瞳。いつか泡で消えてしまいそうな、そんな儚い光。そんな彼の腕を引きたくて手を伸ばす。
……どうやら、少しばかり眠っていたようだ。僕は木に背を預けて、木漏れ日の中で空を掴んでいた。
「……おや、こんな所でどうしたのですか?シトルイユさん」
同職の者、ドミニクが声をかけてくる。
「んー。ちょっと寝こけていたみたいで。歳ですかねぇ」
ははは、と乾いた笑いを浮かべると、彼は呆れたように息を吐く。
「こんな所で寝てたら、それこそ風邪ひきますよ。夕方過ぎるとあっと言う間に寒くなるんですから〜」
「それもそうですね」
土埃を軽く払い、頭を掻く。
ふ、と柔らかな布生地に指先が触れた。彼”がいた事が事実であると、嘘ではないと、僕らを繋ぐ白いシュシュが語る。
「……さて、我らが教祖がお呼びです。いきましょう」
「はいはい」
僕は半分聞き流しながら、空を見る。一番会いたい君に会うのは、あともう少し。そう、その時がこの国の実態が外の世界に知られる時だ。
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14/金星 泡・繋ぐ・一番