簓
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暗転した世界。
漆黒の闇の中、ただ独り歩く。
とは言え、其処には何もなく、本当に歩いているのか、それとも留まって居るのかというのは、本人さえも分からなくなるくらい、静寂に包まれた空間だった。
やけにくっきりと映し出されている彼女は、怯えながら進む。
彼女には、分かっているのだ、この後の展開が。
ずっと真っ暗の中歩かされて…その後は大量の手に首を絞められる。
今宵も何ら代わり映えの無いラインナップだった。
いつものように締め上げられ、骸骨の女と目が合う。(と、言っても目は既に腐り落ち、存在しないのだが、不思議と簓は目が合ってると認識している)
そして彼女は薄ら笑って、何かを言うのだ。
ほら、今日だって彼女の口元に目が行く。
「貴方は××××××××。」
それは何処か懐かしい声音で…。
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「………朝?」
窓に目をやる。
外では小鳥の、ちゅんちゅんという囀りだけが、聞こえた。
まだ空は明けきっていない。
簓はぼんやりとそのまま天井を見て、いつものように思い出せない夢を思い出そうとした。
空虚
(また夢の中では見る度に思い出し、現実では何も思い出せずに、毎夜悪夢を見続ける)