とある国の王が望んだ。
黒檀の木のように黒い瞳に血のように赤い唇。
その金の髪は金糸の如く柔らく。
肌は雪のように白い…なんて前フリの物語。
美に執着していた母は、どんどん美しくなっていく娘に嫉妬し、また自分を見てくれない夫に悲嘆して、娘を森に捨てた。
森にいた7人の小人の家にたどり着いた娘を、以後3回に渡り殺めようとする。
例えば腰紐を締めてあげる振りをして締め上げて。
例えば毒の仕組まれた櫛に刺さして。
例えば半分だけ毒を仕込んだ林檎を食べさせて。
……私はそこで死んでもよかった。それが母の望む結末なら。その執着が、唯一、娘に対しての愛ならば、私はその愛を食らって死んでもよかったのだ。
けれど物語は、運命は……。
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暗い世界から暗転。
ぼんやりと開いた瞳で目を開けば、そこには父上と父上のお付きの医者がいて。
「ブランカ様、おいたわしや」
「ブランカよ、体のどこも傷付いておらんようで良かった」
心底哀れんでるような医者とは裏腹に、商品を見るような瞳と物言いで言う父上。
吐き気がする程嫌いな父上に、やっとの事で聞く。
「……母上は?」
「今、処罰を考えておるところじゃ」
「……そう」
私はぼんやりと頭を動かす。
このまま母上は殺されるのだろうか。
「父上」
「……なんじゃ?」
「母上にどんな処罰をする予定かしら」
その場にいた人間が目ををあわせる。
何か口裏合わせをしてるような。
……嗚呼、うんざりするわ。
「結局未遂で終わったんだからお咎めなし、で如何?それに」
言ってやらないと分からない?
そうね、察してほしいは罪だわ。
「父上、貴方がそもそも他の女性に行く浮気者だったから、母上がより、“美しさ”という概念に囚われたのではなくって?処罰を受けるなら、貴方も同罪だわ。直接、じゃなくても、私を殺そうとしてるのよ」
何か父王の罵倒が聞こえた気がするけれど、同時に医者が止めに入ってるのが聞こえる。
「もし、母上に処罰を与えるなら、私もそのまま死ぬわ」
どうせこの国にいる限り、私は道具なのよ、と頭の片隅で考える。
私はゆっくりと、再度眠りについた。
貴方の生存を願った所で
(貴方は私を愛しはしないでしょうけれど)
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※ブランカが若干自分の存在に対して投げやりなのは、多分誰より自分が『物』だと無意識に思ってるのと、どうせ貴方達に対して、どんなに頑張っても無意味なんでしょう?の意味。
もうちょっと自分の事を大切にする事が出来るようになったら、彼女にとっての成長