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友達以上それ以上

靂+琉輝


友達以上それ以上




「琉輝ー。」

靂が大声で俺を探す。

困っているのが楽しくて、宙に浮いたまま笑った。

後もう少し、こうして浮いていようかと思う。

自分もふわふわ浮いてるのに、地面近くを浮いているからか、全然気付くそぶりを見せない。

ちょっと抜けた靂。

からかうのが癖になってて、ついいつも意地悪をしてしまう。

樹の下を通り過ぎようとしているのが見えた時。

身軽な動作で俺は幹から垂れ下がった。

「っ?!!!」

靂の瞳が大きく開かれる。

同時に大きく、盛大に跳ねた。

驚きすぎると声も出ないっていうけど、本当らしい。

その証拠に靂は口をパクパクしている。

まるで地上にあげられたコイキングみたいだ。

俺はひょいっと下りると、何食わぬ顔で挨拶をする。

「よっ。何か用?」

そう言うと、靂はやっと意識が帰ってきたらしい。

口をもごもご動かして、質問してくる。

「あの…、また樹の上で寝てたの?」

「そ。」

嘘。

本当は靂以外の誰かに会うのが面倒で、隠れていただけだ。

俺が手短に答えると、靂は下げた眉のまま、「落ちたら危ないよ?」と言う。

全く。

騙されるなんて馬鹿な奴。

「てか、何か理由があって来たんだろ?説教なんかたれんなよ。」

俺はふて腐れたように言うと、靂がもっと困ったように眉毛を下げた。

「オヤツ、葉月お兄ちゃんが一緒に食べておいでって。」

手元を見てみれば、袋に入ったクッキーがある。

出来立てなのか、外の空気との若干袋が汗ばんでいる。

「そういえば俺も、冷やしてあるサイコソーダがあったなぁ。」

ぽつりと呟いて、歩く。

後ろを振り返れば靂が相変わらず困った顔をしているから、「来れば?」とだけ言った。

もう後ろを見ない。

だけど、後ろには人影を感じるから、大丈夫だろう。

俺と靂は微妙な距離感でゆっくり歩いた。

後には優しいクッキーの匂いを残して。

++++++

友達以上それ以上の“家族”です。

家族って大事。
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