目覚めた所は、教会の空室のベットだった。
「目を覚ましたかい?」と笑う神父はヤケに胡散臭く、それでも僕は感謝を述べる。
「あの……妻は……」
動かない体を何とか動かして、神父を見た。
神父は表情一つ変えずにこういう。
「嗚呼、君はどうにかなったけど、奥方は亡くなったよ」
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そこからの記憶はなく、ただただ、生かしてくれた神父への逆恨みと、何故自分を生かしたのか、という神への怒りだった。
しかし神父は。
「いいねぇ。そんな目をしているやつは死なないからな。逆恨みも冒涜も結構なことだ」
ケラケラと笑って僕をバカにする。
……否、今思えば、それが彼の人の救い方だったのかもしれない。
「……クソ神父ですね」
僕がまだ動かない体でそう言うと、神父がニヤリと笑う。
「いいじゃないか、世の中に一人くらいこういう神父がいても。それに。俺はお前みたいなやつ、死ぬ程見てる。みーんな神様を恨んで、自分は誰よりも不幸だって顔をして、立ち止まったまま誰かの所為を何十年と続けてる、つまんねぇニンゲンさ」
僕はそんな神父の態度に舌打ちをし、神父を睨む。
「まるで見てきたような口で言いますね」
神父はククク、と喉を鳴らして笑う。
「そりゃそうさ、俺はそもそも神父……なんて役職につくようなヤツじゃない。なんてったってニンゲンじゃないからな。お前らみたいな、短い寿命じゃないのさ」
嘘か本当か分からない表情で笑う。
「で、お前はこの後どうやって生きるんだ?」
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怪我が完治し、やる事も生きる場所もなくなった僕はそんな出鱈目な上司と仕事をした。
当然サボる事の大好きな上司は、何でも僕に仕事を押し付けてくるけど、おかげでこの数年は楽しく生きた。
……と、同時に上司のいうように、過去の自分と同じようなヒトにたくさん出会った。
お話を聞いて、前を向いて歩いてくれればいいけれど、そうじゃないヒトもたくさんいて。
いくら励ましても何かの所為にしないと生きれないヒトもいる。
分かってはいるけど、励まし続けるのはもう疲れた。
そう思って教会のドアを開けると二人のヒトが元気よく
「「ようこそ、アリス!!」」と言ってきた。
「……失礼します」
僕は扉を閉めてもう一度開けるも、変わらずキラキラとした瞳で二人に見つめられた。
「んんん……。これは、夢、かな?」
僕がそう言って自分の部屋に戻ろうとすると、もうそこには扉がない。
「勘弁してくれよ……」
僕は赤の城と白の城の説明を、半ば聞きながしながら溜息をついた。
この世界に来た日
(一刻も早く帰りたい……!)
シトルさんの神父成り立ての時とか。ちなみに世を恨んで死にたいくらいの時期があったので、目は光がない。
アリセパから元の世界に帰る時は、この時くらいに髪の毛切れたらいいね
表情練習。笑う時はちょっと困ったようにはの字眉毛。