スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

マトリョシカ

10歳ユーリ
++++++

『ユーリって娘、ホント最低だよね。』

『分かる分かるっ!性格も悪ければ何にも取り柄がない。見た目が良いだけのバカ女だよ。』

『アハハハ!言えてるねっ!!』

『×んじゃえば良いのに。』

ユーリは、聞こえないかのように、その場を通り過ぎる。

悪口を言っているヤツらの前では、弱い所は見せたく無かった。

死角に入った頃、雨の中駆け出す。

後ろでは尚も嘲笑う声が聞こえる。

…聞こえるような気がした。


マトリョシカ


ザーザー雨が本格的に降り出した。

それでも必死に走り出して、逃げ出す場所を探す。

「っ…!!」

大きく土に足を取られ、水溜まりへと突っ込んだ。

それでも何かに耐えたような顔をして、立ち上がってはまた走り出す。

痛いのは出来た擦り傷ではない。

痛いのは心臓だ。

自らの種族と上手く行かず、それが悔しくて…悲しい。

がむしゃらに走り出して、何もかも洗い流したかった。

誰も彼女の事を理解するモノなんていない。

彼女の表面だけを見る他人は、誰も中身など理解しようなんてしていないのだ。

入り子人形のように固められた鎧。

幾重にも重なったそれを脱ぎ捨てて、裏切られるのが怖い。

苦しくて苦しくて、心の中で彼女は泣いた。

「誰か助けて…。」


Fin

続きを読む
前の記事へ 次の記事へ