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貴方がそれを罪だと言うならば

スピカの部屋。レティは今日も大好きな主人であり、姉のような存在であるスピカと眠っている。

レティは不意に目が覚めた。

照明が点いていないのに明るい月明かりが部屋を照らしている。レティはもう一度眠りに付きそうな瞼を擦り、目を開けた。

「……スピカ」

寝ている彼女からは、当然返答などない。

耳を澄ませば聞こえる程度の小さく謝る声と共に震える肩。…時折怖い夢を見るのだろう。今日のように、たまにうなされている日がある。

「スピカ、レティが付いてる。だから、スピカは独りじゃない。誰にも殺させない。大丈夫」

そう言ってスピカの胸元に擦り寄ると、スピカの寝息が、また安定したように感じた。

「スピカ、いい子。だから、自分を責めちゃダメ」

スピカの温かい体温に徐々に微睡みながら、レティも夢の中へと戻っていった。

貴方がそれを罪だと言うならば
彼女も共に背負うと笑うだろう

このまま一緒に居させて下さい

…遠くの方で雷が鳴っている。自室で作業をしていたシャルにも、その音は聞こえた。

(嗚呼、どうかこのまま、通り過ぎてくれますように…!)

心の中でそう願いつつ、手を進める。

空は曇天。苦手なモノ程目に映る…とはよく言ったもので、作業机の後ろの窓か稲妻が走る度に、その閃光でシャルはピクッと肩を震わせた。

…そう。誰にも言えない秘密なのだが、彼女は雷が大の苦手なのだ。

とはいえ理由は大層なモノではない。弟達には頼れる良い姉で在りたいし、母には「まだ治ってなかったの?」と突かれる。ヤムナにはどうしても好きだからこそ恰好付けたい部分もあって、言えてない。
こういった理由と何だか情けなくて、恥ずかしい感情が混じってしまい、どうしても素直に言えないで毎度強がるのだ。

しかし、彼女の雷が来ぬ事を願う気持ちを余所に、数分後には予想通りの土砂降りの雨。

ざぁぁああ…と地面を叩きつける雨音と、独特の雨の香り、それから明るく閃光は走って轟音を響かせた。

「…ひっ!」

思わず声を上げる。

「シャル様?」

同室のシャルの隣の席で、書類を分けていたヤムナと目が合う。

しまった、と思った時にはもう遅い。心配そうな顔をしたヤムナが、そっとシャルロッテの顔を覗き込んだ。

「…シャル様、大丈夫ですか?顔色が悪いです」

ヤムナがシャルロッテの頬を優しく撫でる。

「え、ええ。大丈夫よ。なんでもないわ」

大好きな人を心配させたくなくて、でも同時に心配してくれるのが嬉しくて、妙にドキドキしてしまう。

「シャル様、本当に無理はなさらないで下さいね」

「ありがとう」

胸がいっぱいでやっとの事でそう言うと、またタイミングよく雷が鳴った。どうやら外の木に落ちたそれに驚いて、反射的にヤムナにしがみ付く。

「…シャル様?」

…形としてヤムナを抱きしめる形となってしまって、シャルロッテは次の瞬間には離れた。

「…えっと、あの、その……ゴメンなさい!」

慌ててシャルがヤムナを見る。不思議そうな顔をするヤムナのあまりの可愛さに、シャルロッテは白旗を上げた。

「…あのね、私。雷が苦手なの」

そう言うシャルに、ヤムナは優しく笑って手を握る。そして優しくこう言った。

「このまま一緒に居させて下さい」

ドルミール取説

dormir作品取説
ちょっと特殊な作品ページなので取説を。
キャラ説明は此方
世界観説明は此方

◆何処から読めばいいの?
基本1話完結の短編なので、何処から読んでも問題はありません。お好きな所からどうぞ!

◆詩みたいなのが書いてあるけど
一応ドルミールの世界観が『夢島』に関する事柄を探す…という所から来ているので、彼らが見つけた1ページ、という設定です。決められた作品の数を書く事でストーリーが進みます。

◆ストーリー構成
ハジマリのページ(10作品)
↓破れたページ@(1作品)
↓赤のページ(5作品)
↓破れたページA(1作品)
↓青のページ(5作品)
↓破れたページB(1作品)
↓黄色のページ(5作品)
↓オワリのページ(1作品)

な感じの予定です。終幕までいけるか分からないですが、地道に頑張ろうと思います。

ドルミール掘り下げ

◆アニエス
子供の頃、特性発覚と共に崖に捨てられていた子供。アニエスが声も枯れる程叫び、弱りきっていた処、アンティアが助ける。その時神も仏もいないと絶望し、死を覚悟した彼女にとってはアンティアは女神に見えた。

◆左鏡と右鏡
この二人は特に暗い過去がない。互いに関わりたくない故に距離はあれど、 双子というのでなんだかんだで状況を二人で打破してきたのかもしれない。恨んでる…と言っても「ついてないなー」くらいの軽い気持ち

◆ベルノルト
『どうやら異端である』という事を、幼い頃より把握して生きてきた為、上手く立ち振る舞う事で生きてきたタイプ。何人も間引きをされている処を見たので、他者を信頼するという事を知らない。

◆アンネッタ
ドルミールの門に捨てられていた子供。赤児の状態で捨てられた為、歪んだ性格はしていない。まっすぐに『母』であるアンティアに甘えたり、ワガママ言ったりする。

◆漆/紅緒/飛雷/朝比奈/飛沫/紬
とある閉鎖した村にて大飢饉があり、真っ先に異端である夢特性や色違いのモノが間引きされた。その中で生き残りが、アンティアとクラエスとラウラに発見され、保護された。

漆は間引きされた事を合理的と感じており何とも思ってはおらず、紅緒は哀しいけれど仕方がないと諦めており、飛雷はまた捨てられる事を恐れ、朝比奈は自分を捨てた家族を恨むと共に新しく大切な人を作る事を恐れている。
飛沫は昔の事などどうでもよく、紬は自分の特性を理解してくれる人が増えれば…と活動している。

◆ローレンツ
特に差別のある場所で生まれた訳ではないので、己の特性を疑問に思い、それが解くことの手助けが出来るなら…と入った。

◆夕闇
自分の特性に振り回されて生きている彼だが、元々はその特性を崇められていた方の部族。裕福な暮らしに飽き、自由を欲したが為、ドルミールに入った。夕霧とは親族会で面識があるが、行方不明となったと聞いていたので、こんな所で出会うとは…な感じ。

◆夕霧
元々別の場所で住んでいたが、両親が亡くなって一人で盗んだりして生計を立ててた所、夕闇の住む村に、血縁として発覚したために養子として連れてこられた。特定のモノが崇められている状態が気に入らず、ある日村を飛び出す。いろんな世界を見て、流れ流れてドルミールの門を叩く。夕闇の事は純粋に記憶にない。

◆幸
ラウラが作ったデータバンク。夢特性ではあるが、特に何の記憶もない。今が生まれたてなので、いろいろこれから。

◆マナと蜜華
夢帰還。夢島の記憶は殆どない。点々と移動する…とされている、夢島の入り口に落ちていた処を拾われた。いつか自分の故郷に帰る為、手伝いをしている。
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