スィフル
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雲もない漆黒の闇の中、静かに美しく微笑むのは三日月。
もし本物の翼があれば、何処までも羽ばたけたのでしょうか?
「…嗚呼、愚問でしたね。私共は所詮鳥の紛いであり、本物には成れぬというのに。」
引き寄せられるかのように窓辺に立ち、つい零れてしまった弱音。
私はまさか自らの口からそのようなモノが出るとは思っていませんでしたので、一度目を丸くしてからくすりと笑いました。
結局、どう足掻いても私は私なのです。
大切なのは鳥ではない私でも、そこで生きて行きたいか否か。
「誰も私を求めずとも、大切なのは己の意思。他者に必要か否かを求めるのは、他者に重荷になるだけでなく自分が苦しくなるだけですからね。」
誰に語るでもなくそう告げ、より一層増す暗明に、私は誘われるがままに肌かけを肩にかけると、ふわりと空へと飛びました。
いつか全てを
投げ出す前に
(月と共に空を泳ぐ)