「ふむ。」
思わず僕は声を漏らしました。
二人の男が座り、向かい合う空間。
静かな世界で僕だけの声が拡がるのは、些か不思議な物で、僕はクスッと笑ってしまいました。
僕が話を聞いている相手−つまりは帝は怪訝そうな瞳で僕を見ました。
そんな顔をするなら、僕に相談するのは間違いだと思うのですが。
「つまりは貴方様は亰さんに何かあったら困る…と。」
僕がそう言うと、急にガタン、と帝さんが立ち上がりました。
「そうなのだよ、初陽君!!つい最近、悪い虫がついては居ないか、僕は心配で心配で…。」
所詮、妹溺愛者…とでも言っておきましょうか。
「で。どういったご要望で?」
私は些かつまらなそうに言うのですが、帝は気にしたそぶりもなく席に座り直しました。
「つい最近、ふらりと良く出かけるんだ…。もしかしたら僕に内緒で彼氏を作って、こっそり二人で出かけているのかもしれない…。」
僕は一つ、思いあたる節がありました。
嗚呼、しかし相手が相手なだけに面倒な話ですね。
「で、情報が欲しくて僕の所に来たのですか?」
早く終わらせて頂きたい所存です。
僕は諦めたように、溜息を一つ吐きました。
「明日、こっそり後をつけては如何ですか?」
++++++
次の日、廊下を素早く走る影一つ。
それが此方に向かってくるのが分かりました。
…どうせ帝です。
「初陽君!!」
嗚呼、ガタガタと震えて…面白い。
「彼氏…ではなかったでしょう?」
僕がにこやかに言うと、机に突っ伏して顔をあげなくなりました。
「共に世話してさしあげれば善ろしいのに。可愛らしい子エネコだったでしょう?」
クスッ。
昨日よりも静かに響く僕の笑い声。
「…最も、エネコへのトラウマをどうにか出来たら…の話ですが。」
「……っ!!酷い!!心の友ではないかっ!!」
「それとこれとは別の話です。」
僕が静かに言い放つと、頭を抱えたまま、動かなくなりました。
「分かりました。僕は幼女趣味ではないんですが。」
天にも縋るような瞳。
僕は友人には甘いようです。
++++++
その後、エネコ♀のつきのが来ます。
ちなみに帝が苦手な理由は、大量のエネコ♀に囲まれて、メロメロボディにやられた過去があるからです。
それまでは猫好きだったのに残念な話。