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ヴェネデッタ

紫、赤、青、紺、黄色でどうにかなったイラスト。これだったら、使ってない画材は断捨離出来るなぁ()
++++++
アルビレオ水彩用紙
ファーバーカステル
(アートグリップ水彩色鉛筆)
主線→ヴァンゴッホの灰色

たまに付いていけない


「You☆食レポ行っちゃいなYo!!」
「……はい?」

社長室に行って開口一番に言われた一言に、我が耳を疑って思わず聞き返す。

「non,non,non!そんな聞き返しダメダメねぇ」
「……はぁ」
「お茶の間はもっと煌びやかなアナータをお待ちなのデース」
「…肝に銘じておきます」

アルバニアがテンションに付いて行かずに、適当に返事をしながら、社長が前に言ってた話題を出す。

「確か食べ方が王子らしくないからって、撮影お断り……だったんじゃないですか?」
「残念デース。そうだったんだけどぉ、状況変わってしまったんだ…Yo!!」

社長が腰に手を当てて、半分体を捻ったポーズで指をビシッと指す。

(社長、そのポーズは一体なんなんですか)

アルバニアは突っ込みたいのをグッと抑える。
その隙を突いたかのように、大量の従業員がアルバニアを取り囲んだ。

「……は?」

忍者かのような無駄な動きでくるくる周囲を回る従業員。

「今からYou、table mannersを学んじゃいなYo☆これで話題性GETデース!!!!!」

ばっと飛び跳ねて、宙に浮く数十人の人影。
アルバニアが反射的に避けると、何人かが下敷きになった。

「社長!?こんなに人用意する必要あります!??」
「大丈夫デース!そして逃げても無駄なのデース!!!本物の王子様になるのデース!!!」

次の瞬間には、下敷きになっていた数人以外が起き上がり、また謎のレースが始まる。

「黙ってても仕事しますから!!!テーブルマナーくらいやりますから!!!!追いかけさせるのを止めて下さい!!!!!」
「却下却下却下!物語はtempoがあった方がもーりあがる!!!」
「そんなの知るかぁあああ!!!」

社長が手を上げたり、腰を捻ったり、まるで「履いてますよ☆」の芸人さんのようなポーズをしているのを横目で見ながら、社長室内を逃げ回る。

「はい、つーかまえましーた」

社長がそう言った瞬間床に穴が開き、アルバニアが落ちた。
そしてドッキリ成功の札。

(もう訳わかんねぇ……)

とんだ茶番に付き合わされた挙句、この後スパルタでテーブルマナーと食レポトークを身につけたアルバニアは、無事食レポの仕事を受けれるようになったという。

たまに付いていけない

++++++
食レポ書いてた筈なのに、こんな展開に。
閲覧頂き、ありがとうございました。

彼の笑顔は陽の光のようで

病室の個室。
ヴェネデッタは盛大に息を吐き出した。
溜息なんてした理由は、簡単である。
『義理母と父が面会に来た』
今のヴェネデッタにとっては、最も憂鬱な案件である。

もしヴェネデッタが小さな、それこそ母を覚えてない子供であれば、きっと義理の母とも仲良く出来ただろう。
母の愛を知って、母の事を好いていたヴェネデッタには、母を忘れるという事は出来ないし、そこに『母の成り代り』を用意されても母としてなど認められないのだ。

「偽善なんて最も嫌いよ。…可哀想な子を見るような顔なんて」

ヴェネデッタは布団に潜り込んで、時計をチラッと見る。

「…待ち合わせの時間まで、あと少しね」

ヴェネデッタが、そっと目を閉じてサイバーの世界へと向かう。

瞳を開けば、そこは美しいサイバーの世界。
待ち合わせ場所には、ほんの少し早くたどり着いた。
キョロキョロと周りを見回してみるが、まだ待ち人は到着していないみたいだ。

ヴェネデッタは息を吸って、吐き出す。

「気分を変えないと。アンジュを心配させてしまうわ」

そう言ってちょこんと花壇のふちに座る。
足元を見つめているヴェネデッタは、居場所がない子供そのもののようで、何処か小さく感じる。

ぼんやりと俯いていると、暖かい手が頭に触れた。
ハッとして顔を上げると、アンジュと目が合う。

「ヴェネ姉さん」

心細い気持ちに降ってくる声は、胸に染み込んで。

「ごめんね?待った?」
「いいえ、ちっとも」

安心したようなアンジュの声に、ほんの少し胸が軽くなった気がして、ヴェネデッタの口元が緩む。

「今日は何処に行く?」
「そうねぇ…」

考えている隙に、不意に腕を掴まれて腕の中に収まる。
ヴェネデッタは驚いて、小さく悲鳴をあげた。

「僕こうして貰えると、いつも幸せな気持ちになれるんだ!」

穏やかにそういう彼に、「嗚呼、励ますつもりで抱きしめてくれたのね」と嬉しく思ってその背に手をまわす。
無意識にすりすりと頬を摺り寄せると、アンジュは満足そうに微笑んだ。

彼の笑顔は陽の光のようで
(いつも彼女の心を明るく照らす)

1123

1123の日

アルビレオ水彩用紙
ファーバーカステル/アートグリップ水彩色鉛筆

素敵なレディが歌っている曲

「ねぇねぇ、見た?見た??」
「モチロンよ〜!イケメンよね!!モデルさんらしいわよ」
「なるほど、綺麗な訳だわ〜」
「ほんと眼福。私なんかアル樣とブライド様の雑誌の王子樣コラボに感動して、3冊買ったわ」
「そんなに買ってどうするの…」
「保存用、観賞用、布教用。ほんとこのコラボは夢のようだったわ…」

看護師達が楽しそうに無駄口を叩いているのが、廊下越しに聞こえる。

「王子様、ねぇ」

アル樣とか呼ばれているアイドルは、
お昼の時間のテレビによく出ている王子キャラで売ってる人だ。
時計をチラリと見れば、その噂の番組が始まる所。
私はテレビを付けずに『もう一人の王子』が何処にいるのか、中庭を見る。

……とは言え。
平日だけどそこそこ中庭には人がいる。
見られないものか…と期待したのが間違いだった。

「…ジュース買いにいこ」

私は自動販売機へ、だるだる向かう。
廊下の角を曲がった時。
ふ、とすれ違いざまに、何かいい匂いがした。

思わず振り返る。
私にはすぐに、理由は分からないが看護師達が言ってた『王子』だと分かった。

(急がない様に、心臓が悲鳴をあげない様に)

私は自分に言い聞かせながら、彼を追う。

(どうか見失いませんように!)

子供らしい好奇心だと、我ながら思う。

(あ、角を曲がった!)

その先は私も知っている。
病院の角部屋。
患者と面会者の休憩用旧多目的室。
新しく多目的室が出来てからは、あまり活用している人はみない。

(騒がれないように、人気のない所に…て事かしら?覗くだけ。静かにしなくてはね)

こっそり半開きになっているドアから顔を出す。
私がじっと見ているのを気が付かないのか、男はエレクトーンの蓋をそっと撫でてから開いた。

(逆光で顔があまり見えないな)

そう思っていると、ぽーん…と、音を確かめるように鍵盤をはじき、そして

「…あれ?」

それは私が良く知っている曲だ。
音楽家だった母の……
そして私が好きな『あの世界』で歌う歌の曲。

私がぽかーんとしていると、男が私の方に近寄ってきた。
彼が私の手を取り、こう書く。


『素敵なレディが
 歌ってる曲なんだよ』


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花梨さん宅のブライドさん、
レンタルさせて頂きました!
ツイッターにて素敵なネタ、
ありがとうございました。

ヴェネ視点が書きたくて書いてみましたが
お気に召したら嬉しいです。
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