歌奈
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「結婚に結び付かない関係なんて、新しい恋が始まっちゃえば、“こんな事あった”なんて思い出に変わるわよ。」
リリスが言ってた言葉を思い出した。
それでも『今』は好きで、その『今』がずっと続けば良い…と思っていたのは、ずっと前の話。
現在は新しい恋愛が始まるのが怖くて、一人で歩いてる時の空いてる右手が寂しくて、つい思い出を振り返ってしまう。
誰かと付き合ういう事は、“行動に制限される事”。
恋人が居ない状態は、身軽で自由。
…その筈なのに。
(自由ってこんなに、満たされないモノだったかしら。)
強気に家を飛び出した自分は、何処に行ってしまったの?
「空いてしまった右手も、もう聞けない名前を呼ぶ声も、もう遠い昔のようだわ。」
頬を伝うそれは見ない振りをして、街中を歩く。
嗚呼、今は次を考えられないけれど、もし次があるならどうか。
(どうか今度は素直になれますように。)
サンザシは散る
(たった一つの恋だった)
2013*10*17