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拗ねた唇に

流さん宅姫愛さん
×
我が家のワーヒド


「よっ…と。」

いつものように窓から不法侵入を働き、ワーヒドは姫愛の部屋に入った。

不法侵入…と言いつつも、部屋の鍵が開いてるという事は、姫愛が開けておいてくれたに違いない。

それが嬉しくて、毎度空を飛んで来てしまう。

ワーヒドは愛しい彼に構ってもらおうと、姫愛に甘えに行こうとした。

…なのに、だ。

どう見ても忙しそうな彼の背中を見たら、なんだか行くに行けない。

「姫愛ぁ、来たよ。甘えに行って良い?」

一応確認。

もしかしたら“良いよ”の一言が来るかもしれない。

「今忙しい。」

淡い期待を乗せて言うが、机に向かう姫愛の目が此方に向く事はなかった。

「つれない。」

思わず、唇を少しだけ尖らす。

もう一個ある椅子の背もたれを前にして座り、脚をぶらつかせるワーヒドが目の端に映る。

そのふて腐れた顔を見て、小さく溜息を吐いた。

姫愛はゆっくり椅子を立ち上がる。

「ワーヒド。」

呼ばれて上を向いたワーヒドの唇と、姫愛の唇が重なる。

途端にワーヒドの顔が真っ赤になった。

感極まったのか、震えるように声を出す。

「ひ、姫愛ぁ。」

もう一回、そうお願いしようと姫愛を見る。

「後もう少しで終わるから。」

その言葉に嬉しそうにワーヒドは笑った。

「分かった。じゃあ、いい子で待てたらくれる?」



(キスなんて卑怯!)
(機嫌も治っちゃうじゃん。)
ふりる†ふらくたる

日々草は忘れる


colorfulのメンバー
++++++

年末年始。

今年の汚れは今年のうちに…という理由により、ロートはそんなに散らかっていない部屋の掃除をしていた。

本棚をはたきでパタパタと上から下へ叩いて行けば、埃が下へと落ちて行く。

「…お?」

不意に目が合ったのは、赤い背表紙のアルバムだ。

それを手に取って眺める。

ぺらりと一頁をめくり、眺めてみると、懐かしさで無意識に笑みが零れた。

「みんな幼いなー。」

そこには記憶にあるモノばかりだけではない。

記憶の隅に追いやられ、忘れている事もあって、眉をしかめた。

「…これは、何だっけか。」

ソノオ付近の川。

バーベキューをしているような様子が写されている。

トントンっ!

「ロート、掃除終わったー?」

ノックの音の後に聞こえたのはシュバルツの声。

「シュバは?」

問いに問いで返せば、シュバルツは

「終わったよ。入って良い?」

と返事をする。

どうやらアルバムを見ていて、かなり時間を食われたらしい。

「おう。まぁ、調度良い所だし来いよ。」

ガチャリ。

音を立てて扉を開けたシュバルツを手招きする。

「ん?」

ちらりとアルバムを覗き込む。

シュバルツの唇は、小さく緩んだ。

「懐かしいね。」

「だろ?」

顔を合わせてニッと笑う。

「これ、むかーしにバーベキューやった時のだよね。ショコラとブランが食材を用意して、グリュンが機材組み立てて、みんなで魚を捕まえて。」

「良く覚えてんな、お前。」

「そりゃあね。」

感嘆の声を上げるロートに、シュバルツは悪戯っ子のように笑う。

「この次の日、ロート、テント中でおねしょして大変だったからね。」

「は?!」

大きい声で驚いた声を出す。

シュバルツがページをめくると、見事に地図を描いた布と怒られる二人が証拠写真として映っていた。

「ほらね。俺はおねしょしてないのに、一緒に怒られたの覚えてるもん。」

ケラケラ笑う所から、別にシュバルツが怨んでいる訳じゃない事は伺える。

「ははは…すまん。」

渇いた笑いと一緒に謝るとシュバルツは目をまんまるくした。


日々草は忘れる
(思い出を忘れても生涯、友情)


2011*05*11/琴音 記
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