初めてサイバーをダウンロードした理由は、患者仲間の勧めもあったが、ほんの少しの『好奇心』と『承認欲求』、それから『現実からの逃避願望』が主だった。
逃げたい事、とはたくさんある。
例えば『病気の事』『家の事』『未成年である事』。
どれもみんな重たい足枷で、仮に1つ解決した所で何も解決しない。
生きている限りつきまとうそれは、“『死』という概念でのみ救われる”と私は考えた。
助けてほしいと仮に声を荒げても、未成年に出来る事などたかが知れてる。
勿論例外はあれど、大人は『可哀想な子供』に、奇異の目を向けるだけだ。
「こんな事言う私は、可愛くない子供ね」
自嘲気味に笑い、鏡に映るサイバーの私を見つめる。
可哀想な子を見る目を必要としない、純粋な私を構築しようとサイバーでのキャラを、『いつか来る筈だった私』に設定した。
その姿はまるで私の母のようで、何処か懐かしい気持ちになる。
「私にだって、死に場所を選ぶ権利くらいあるわ」
そう鏡越しに言うと、私は光り輝くステージの上へ向かった。
光と闇の物語
(好きなだけ歌を歌い、好きなだけ踊れるこの場所で、私は最期を迎える)
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まだアンジュ君と会う前の話。
そういえばこういう掘り下げなかったなぁ、と思ったので。