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ようこそ、死人の世界へ@フルビア

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世界を、愛していたかと問われると、分からない。世界に愛されていたかもどうかも。一瞬、そうほんの一瞬。幸せを夢みた事がある。普通の家、両親がいて兄がいて姉がいて、自分もそこにいてもいいと、肯定されるのを、夢見ていいのかもしれないと。

けれど結局世の中は残酷で、僕の命は悲しいくらい呆気なく散った。宝石だと間違われた野党に、お腹のコアを傷つけられたらしい。

死体になりそうな僕を何度か蹴った野党は、金目になるものがない事を調べて飽きたのか、その場を去った。

ふっと目を閉じた瞬間、声が聞こえた。

「やりそびれた事はないかい?……私はしっかり聞こえたよ。君の声が」

声はもう出ない。けれどそっとひんやりとしたモノが抱きしめた。

「君を私の箱庭へ案内しよう。なぁに、心配ないさ。そこはみんな幸せな世界。君の望む通りの配役で楽しく好きなように生きていけばいい。君はギニョールらしく、夢の住人でいてくれればいいのだから」

言っている意味は分からなかった。

けれど僕は最期の微睡みの中で、しっかり感じる。痛みもない、苦しさもない。ただただ安らかな安堵を。

「一ニ三(ウタカネ)様」

赤い髪の毛の、赤いフードを被った少女が彼女を呼び止める。

「なんだい?更衣(ワタヌキ)」

不思議そうに小首を傾げる。

「少女趣味なのはご存知ですが、其方の少女にもお姫様だっこですか?」

ムスッとしたモノいいに、思わず一ニ三が笑う。

「何がおかしいのですか!」

「いや、なに。ヤキモチ妬かれるとは思ってもなくてね」

そういう一ニ三に更衣は余計に顔を湯気が出そうな程、赤くして怒る。

「そんな訳ありません!!」

一ニ三はああそう?といつものように流した。

「さて。この子の新しい名前はどうしようか」

更衣がほてほてと後ろを付いて歩く。その更衣をひょいっと持ち方を変えて、二人を抱っこする形をとりながら、一ニ三は、うん、と声を出した。

「金の髪が美しいから、君は砂金(イサガネ)だ。どうか死後の世界では幸せに」

そういうと、風が吹いたと同時に三人は消えた。残ったのは、フルビアだったモノ、ただ独りだった。

君に宿屋を

電車の走る音。近所の親子の声。今日はどうやら月は出ない日らしい。真っ暗になった空。そよぐ風は優しくて、でも昼から夜に変わったからか冷たくなっていた。

おや、何やら戸惑っている人がいる。この街にはよくある事だ。

「どうしたんだい?」

と、僕が言うと、その娘は縋るような目で僕を見た。どうやら彼女は別の世界から来たらしい。

……うん。よくある事だ。ふらっと迷ってしまうことも、町長である一二三さんが呼ぶ事も。よくある「波長が合ってしまった」という事だ。

ちょうどいい。僕の役職は『宿屋』だ。仮初の住人が本当の役割を得るまでの仮宿と、君の役割が決まるまでは置いてあげよう。所で一二三さんの所には顔を出したのかい?

……まだなのか。じゃあ、自己紹介はまたあとで。だって此処では、君にとっての新しい名前が配布されるのだから

ブランカちゃん

とある国の王が望んだ。
黒檀の木のように黒い瞳に血のように赤い唇。
その金の髪は金糸の如く柔らく。
肌は雪のように白い…なんて前フリの物語。

美に執着していた母は、どんどん美しくなっていく娘に嫉妬し、また自分を見てくれない夫に悲嘆して、娘を森に捨てた。

森にいた7人の小人の家にたどり着いた娘を、以後3回に渡り殺めようとする。

例えば腰紐を締めてあげる振りをして締め上げて。
例えば毒の仕組まれた櫛に刺さして。
例えば半分だけ毒を仕込んだ林檎を食べさせて。

……私はそこで死んでもよかった。それが母の望む結末なら。その執着が、唯一、娘に対しての愛ならば、私はその愛を食らって死んでもよかったのだ。

けれど物語は、運命は……。

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暗い世界から暗転。
ぼんやりと開いた瞳で目を開けば、そこには父上と父上のお付きの医者がいて。

「ブランカ様、おいたわしや」
「ブランカよ、体のどこも傷付いておらんようで良かった」

心底哀れんでるような医者とは裏腹に、商品を見るような瞳と物言いで言う父上。
吐き気がする程嫌いな父上に、やっとの事で聞く。

「……母上は?」
「今、処罰を考えておるところじゃ」
「……そう」

私はぼんやりと頭を動かす。
このまま母上は殺されるのだろうか。

「父上」
「……なんじゃ?」
「母上にどんな処罰をする予定かしら」

その場にいた人間が目ををあわせる。
何か口裏合わせをしてるような。
……嗚呼、うんざりするわ。

「結局未遂で終わったんだからお咎めなし、で如何?それに」

言ってやらないと分からない?
そうね、察してほしいは罪だわ。

「父上、貴方がそもそも他の女性に行く浮気者だったから、母上がより、“美しさ”という概念に囚われたのではなくって?処罰を受けるなら、貴方も同罪だわ。直接、じゃなくても、私を殺そうとしてるのよ」

何か父王の罵倒が聞こえた気がするけれど、同時に医者が止めに入ってるのが聞こえる。

「もし、母上に処罰を与えるなら、私もそのまま死ぬわ」

どうせこの国にいる限り、私は道具なのよ、と頭の片隅で考える。
私はゆっくりと、再度眠りについた。

貴方の生存を願った所で
(貴方は私を愛しはしないでしょうけれど)

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※ブランカが若干自分の存在に対して投げやりなのは、多分誰より自分が『物』だと無意識に思ってるのと、どうせ貴方達に対して、どんなに頑張っても無意味なんでしょう?の意味。
もうちょっと自分の事を大切にする事が出来るようになったら、彼女にとっての成長

この世界に来た日

目覚めた所は、教会の空室のベットだった。

「目を覚ましたかい?」と笑う神父はヤケに胡散臭く、それでも僕は感謝を述べる。

「あの……妻は……」

動かない体を何とか動かして、神父を見た。
神父は表情一つ変えずにこういう。

「嗚呼、君はどうにかなったけど、奥方は亡くなったよ」

++++++

そこからの記憶はなく、ただただ、生かしてくれた神父への逆恨みと、何故自分を生かしたのか、という神への怒りだった。

しかし神父は。

「いいねぇ。そんな目をしているやつは死なないからな。逆恨みも冒涜も結構なことだ」

ケラケラと笑って僕をバカにする。
……否、今思えば、それが彼の人の救い方だったのかもしれない。

「……クソ神父ですね」

僕がまだ動かない体でそう言うと、神父がニヤリと笑う。

「いいじゃないか、世の中に一人くらいこういう神父がいても。それに。俺はお前みたいなやつ、死ぬ程見てる。みーんな神様を恨んで、自分は誰よりも不幸だって顔をして、立ち止まったまま誰かの所為を何十年と続けてる、つまんねぇニンゲンさ」

僕はそんな神父の態度に舌打ちをし、神父を睨む。

「まるで見てきたような口で言いますね」

神父はククク、と喉を鳴らして笑う。

「そりゃそうさ、俺はそもそも神父……なんて役職につくようなヤツじゃない。なんてったってニンゲンじゃないからな。お前らみたいな、短い寿命じゃないのさ」

嘘か本当か分からない表情で笑う。

「で、お前はこの後どうやって生きるんだ?」

++++++

怪我が完治し、やる事も生きる場所もなくなった僕はそんな出鱈目な上司と仕事をした。
当然サボる事の大好きな上司は、何でも僕に仕事を押し付けてくるけど、おかげでこの数年は楽しく生きた。
……と、同時に上司のいうように、過去の自分と同じようなヒトにたくさん出会った。
お話を聞いて、前を向いて歩いてくれればいいけれど、そうじゃないヒトもたくさんいて。
いくら励ましても何かの所為にしないと生きれないヒトもいる。

分かってはいるけど、励まし続けるのはもう疲れた。

そう思って教会のドアを開けると二人のヒトが元気よく

「「ようこそ、アリス!!」」と言ってきた。

「……失礼します」

僕は扉を閉めてもう一度開けるも、変わらずキラキラとした瞳で二人に見つめられた。

「んんん……。これは、夢、かな?」

僕がそう言って自分の部屋に戻ろうとすると、もうそこには扉がない。

「勘弁してくれよ……」

僕は赤の城と白の城の説明を、半ば聞きながしながら溜息をついた。

この世界に来た日
(一刻も早く帰りたい……!)

必殺あずきバーブレード!!

もっちーのお家の二クルさんをお借りして