*匣(密室・空間)にまつわる怪奇譚。
*とある廃墟のエレベーターの怪談。
*制限時間までに見付けられるのか。
*蜘蛛の絲に吊るされた個室の儀式。
*時として願望とは危険を伴うもの。



【:†四角い匣の怪奇・漆†:】



(とある廃墟にまつわる不思議な噂譚)
(その昇降機は異次元に通じるらしい)


夕焼けに揺れる陽炎の傍らで
その廃墟に逢魔ヶ刻が訪れる

訪れる人は皆紅い蝋燭を片手に
錆びたその場所を目指して歩く

物言わぬエレベーターの手前で
佇む人影はボタンに手を伸ばす

配列盤を決められた順番で押して
召喚の儀式をその術を違えぬ様に

時間が無いと焦りは禁物だ さぁ
存在しない筈の階のランプが灯る



薄暗い個室に揺らめいた灯火
その下には名が刻まれている

赴いたなら腹を決めるしかない
自身の名が刻まれた蝋燭を探せ

個室に入って始まる秒針の鼓動
紅い蝋燭に火を灯すまでの制限

無数に聳える蝋燭から一を探して
延命の儀式をその術を遂げる為に

早くしないと次は我が身だ さぁ
最終局面対価はその恐怖こそ勝る



長くて短い様々な天命の蝋燭
きっと此処は蜘蛛の絲の途中

極楽と地獄の狭間が現世ならば
こんな怪奇は日常茶飯事だろう

垣間見るのは希望か絶望か
閉じられた扉には口は無し

其処に在るのは善行か悪行か
その術を選び取れる儀式の業

夢か現か見えざる境界線の上で
吊るされる天命がまた一つ灯る


(とある廃墟にまつわる不思議な噂譚)
(その昇降機は蜘蛛の絲に吊るされて)



堕ちて来る魂を待ってイるノだソウナ…


*



続き>>>介錯的解釈文+あとがき。



*