僕の夢、君の憧れ

旅行、しかも海外は特に久しかった。純粋なプライベートとなるとさらに遠い過去。そして榊と二人きりの旅行は実は今回が初めてだった。行き先は台湾、台北。

きっと何かが起きる、そんな予感がして、初めて旅行にテーマを掲げてみた(僕の心の中で)。

「暮らすように旅する」

なので、商品こそ大手旅行代理店のものだったけど、免税店もない完全フリープランにし、空港ーホテル間の送迎もなしにしてもらった。


榊も僕もそれぞれに複数箇所訪れているけれど、台湾が一番良かったと感想が一致。
街(都市設計、風土、観光)と人がとても心地良かった。

あまりに楽しくて、帰ってからも、旅行で訪れた人や移住した人のブログやSNSをたくさん見ている。もう次の旅の準備をしている。いつ行くかも決めてないのに。
台湾に関することならなんでも面白くていつまでも眺めていられる。

そんな様子を見られるより以前、休み明け出社早々「移住するって言いだすなよ」と会社の人に釘を刺されたり、榊からは予想通り「移住したいなぁ」と呟かれたり。


でも、僕は、移住も悪くないけれど、日本で台湾のように暮らすことだって可能だと思っている。
それでいいとすら思っている。

台湾でいいなと思ったことはなんだろう。
それを実践すればいいだけ。

(でも本来は、自分が背負いきれるのならば自由な暮らしをしていいもの、だよね)



僕は自分のキャパシティーを無視して、ただただ「完璧」を求めて苦しんでいた。
そう気づかせてくれた台湾。
そして、その「完璧」にも及ばない自分を、責めずに受け入れられるほどの心に広げてくれた台湾。なんて"ゆるい"んだろう。

はからずもリセットができ、苦しくなったら、自分自身から物理的にも精神的にも遠ざかれる場所にもなっている。すごく貴重な場所だ。




台湾訪問が叶ったのは、僕が春先に体を壊したのがきっかけだった。

数ヶ月の通院の結果、不調はストレス性のものと結論づいたが、ついでに見つかった「影」というのがどういうものか当時判断つくまではかなり暗い気持ちだった。(結果良性)

ある日の病院帰りに、現実逃避と榊との思い出作りをしたくて一人旅行代理店に立ち寄った。たまたま手頃でシンプルなプランのものがあったので(これより良いプランが未だに見つからない)、榊に相談するまでもなく、行くことにした。もう最悪は死ぬかもしれないし、と思っていたから。(大袈裟)


交際歴約10年にしてやっと(僕の)念願の二人旅行。
でもそれで良かったのかもしれない。ほどほどに旅慣れした上での、榊の憧れの土地、台湾だったから。大きな不安もなく、気負わず、効率が良すぎない程度にユルい旅だった。
毎日2〜2.5万歩歩いた。日本に帰ってからの方がはるかに暑くて苦労した。