枯れ枝にも春

なんだったか今や判別不可能。
色を失って、木のように硬く太くなったハーブの枝。

手折ろうと指に力を入れたら、ポキリと軽快な音を立てた。

しかし折りきれず、
白茶のカサカサした皮が破れただけ。
間から、鮮やかでしっとりした黄緑色の太い繊維の束が覗いた。

雪解けの水を吸っていた。


春はすぐそこ。

pieces

棺の中は、
みんなの、祖母への想い、願い、記憶でいっぱいだった。

好きだったもの
印象的なもの
手紙、たからもの

パズルのピースを組み合わせるように。


さいごは祖母の顔が隠れてしまいそうなほど、ぎっしりと生花をつめた。

それはまるでレリーフのようだった。



パズルのようだったのは
棺の中だけではなかった。

誰かの一言から
きょうだい達のもつ
記憶を繋ぎ合わせることがあった。

姉曰く。妹、弟曰く。

断片を繋いで繋いで
全てがつまびらかになって初めて



「え、それって、もしかして…」



と、わかったことがあった。



胸が締めあげられるような切なさがこみ上げたけれど
誰もがじっと静かに堪えていたから、僕も、静かに受け止めるにとどめた。



おばあちゃん、僕は、そんなおばあちゃんの孫であることを、より誇らしく思います。

僕も、同じくありたい。

母の、さいごの悲痛な叫びと姿が焼き付いて離れない。

前を見続け、母を抱き締め続けた父親が、強かった。

僕らこどもはなにもできなくて

母と父、そして無抵抗に吸い込まれてゆく棺に、視線を往復させるしかなかった。




でもわかる。

ガバッと口を開けた炉の入り口の残酷さ。

金属の冷たさと
無機質な白さと、影。

僕もねゾッとしたんだよ。




通夜よりも
告別式よりも

一番つらかった。



さいごだから、じゃないよ。
あのつらさは。


僕も、いつかのこと、耐えられそうにない。

やっぱ泣くわ

「よろしく!」の一言で、お願いできちゃったのは助かった、と母。

迷惑じゃなかったか、よかった
(まだ引きずってたか)



これまでドタバタの中でも笑いが多かったから
通夜も、涙滲むくらいかと思ってたけど

やっぱ穴という穴からダラダラだった。


喪服の撥水加工が実力発揮して、涙が全部玉になって、キラキラ縦に並んでるのを見て
パール=涙って言われるのがわかった。



周りの人は
それでも悔いの残る家族を労り、

子や孫がたくさんいれば、
そういう場も自然と賑やかになって
笑いが増える。


実務的に、すべき、と思わないが
感情的には、それがいいと思う。


結婚。子孫。家族。

僕は役に立てたのかな

手伝いに実家に帰ったけれど、あれでよかったのかな。

かえって「仕事」を増やしてしまったような。



上司も、
「右も左も分からないだろうから、孫はね、言われたこととか、細々したこととかやればいいの。」
て言ってた。


じゃぁ迷惑だったかな。。。


たしかに、

段取り理解して、手配するので精一杯のところに
「なにしたらいい?」
なんて聞いてもね。

ごめん。




今更過ぎたことウジウジしても遅いんだけどね。

僕の悪い癖。

不安に駆り立てられて動いちゃうのも、
後で自己嫌悪するのも。
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