シャツの裾

シャツが中途半端にはみ出てるよ、と言われ

うわーかっこ悪くて&お見苦しくてすみません、
て言ったら

そんな隙見せてると、そのうち誰かに襲われるよ、
と言われ


はぁ〜っ????


となったけど


日中、前にいた人のシャツが折り紙をそう折ったみたいにぴょんって飛び出してて

「うわっ、大人なのに、そういうところあるんだー!!!かわいー!!!」

て思って、自分が後ろにいたのをいいことにしばらく見てたのを思い出した。


こういうことか。

僕のことが好きなんじゃなくて、隙だらけでチョロそうだから好きってところか。

なーんだ。

でも、人間、そんなところもあるよね。


「遊べ」ない、けれど「遊び」たい人なら、なおさら。


僕ってたいていそういうポジション。

ホストに及ばず。
恋人でもなく。
友達の延長で。都合のいいニオイのする存在。

別に好き好んでそう振る舞ってるわけじゃないけどね。
残念な素質なんだろうね。


たぶんこんな僕を本気で本命にしてくれるのは榊だけ。

冷蔵庫

冷蔵庫を買った。
前のは壊れてしまった。

一人暮らし用の140リットルを使っていたが、これを機にサイズアップ。270リットル前後のものにした。

大は小を兼ねると言っても、大き過ぎてはもったいない。
届かない棚は無駄以外何物でもないし、また次壊れた時、中の物を急いで消費しようとしても、大半は諦めるしかなくなる。

150リットル×人数が一般的目安と言われたけれど、150でちょっと足りない僕らだったから、300リットル以下を探した。

これは榊からの提案で、目ウロコしたことだった。


最初、冷蔵庫の中はガランガランだった。
今は少しずつ慎ましやかに仲間が増えていっている。

僕の大好きなレタスは、野菜室に行儀よく座っている。

毎朝榊が仕事用のマイボトルにいそいそと氷を入れる。
背中がいつも嬉しそうだ。

重症

好かれてない
弄ばれてるだけ

好意を
自分に都合いいように
利用してるだけ


たぶん、お互いに。

吊り橋

地震にあったのは
オフィスでの残業中。


揺れ始めた時、上司が
「鮎川くん、きた、地震、」と言った。

僕は外部通信用のPCデスクの前にいた。
そこはスチールシェルフに囲まれて、ゴツい電子機器もたくさんある。
上司にすぐ出て来るよう呼ばれた。

立っていたせいで揺れに気づかず、僕は半信半疑で呼ばれるまま歩み寄って行った。
すると、途端にガタガタと音がするほどしっかり縦に揺れ始めて、みるみる怖くなった。



「デカイぞ、」

上司に手首を掴まれる。



僕は体から力が抜けてしまいそうだった。
膝に力が入らない。

そのままふたりでしばらく固まっていた。


揺れは思いの外続く。

「君は、ここにいて。
僕は一応逃げ道を確保しに行くから。
ここに、いて」

上司は、地震がトラウマ的に苦手な僕の様子をちらちら伺いながら、出入口の扉を開けに行った。


皮膚の表面はチリチリ痺れるようだった。


地震、こわい。
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