since

朝方が涼しいのは夏の証拠。梅雨が明けた実感。
それはもう秋へのレール。



「眠れなくなったのはいつから?」

寝しなに榊に聞かれた。
消灯直後、部屋も視界も本当に真っ暗の中だった。

前の会社を辞める直前が始まり、かな。眠れない時もあったけれど、20歳そこそこだったから、夜更かししたいっていうのもあった、と思う。その後、榊の生活リズムに合わせてちゃんと寝るように心がけて、一時落ち着いた。
また眠れないようになったのは

「「ここ、2、3年、か」な」

今回の不眠症状は、ボディーブローのようにじわじわと苦しい。
もどかしいような苦しい不眠は初めてだ。
本当に眠れない。じりじりと眠れないのだ。
したいこともない。なんなら心の底から寝たいくらいだ。けれどそれが叶わない。

榊の回答が僕の計算と概ね合致したことが驚きだった。
僕を本当によく見てる。なんだこの人。惚れるだろ。惚れ直すだろ。
僕より僕のことわかってるじゃないか。

「ありがとう」なのか、「すごいね」なのか、かける言葉を探して、求められてる言葉を知りたくて、榊の方に首だけ向けたけど、当人はもうすでに寝入っていた。まぶたが静かに合わさっている。

呆れたような、ほっとしたようなため息をひとつ吐いたら、自然な眠気がやってきた。