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拍手レス

・夢叶さん≫優人「拍手ありがとうございます、夢叶さん」

信「軍服は、クラスの女子たちが安くて同じような色した生地をお店駆けまわって探して来てくれたんだよ」

夏「俺と信が着るってなったとたん本気出しよったからな。ジョバンニが三日でやってくれました」

ラビ「そういや、アリアとユウは正確にはいつ頃付き合いだしたんさ?」

優人「俺も正確には知んない。おそらく知ってんのは当人同士なんじゃないかな?ただ、文化祭が終わった当たり頃だと思うんだけど…」

焔「ああ。確かに…神田の方からアリアの側に付こうとするようになったのはそれくらいだったな」

優人「それまでは逆だったもんね」

拍手レス

・高校の学祭を思い出しました〜の方≫信「拍手ありがとうございます、お客様」

優人「やっぱりどこの文化祭もノリは同じだよね」

神田「お前去年無理矢理ミスコン出されそうになってなかったか?」

優人「うるさい黙れ」

信「文化祭…よく眠眠打破とお友達になったなぁ…夏が無茶な企画立ち上げる度に、綿密な計画は俺に丸投げしてきたから…」

夏「俺やってあの時期はぶっ倒れそうやったって!でもせっかくの文化祭なんだから盛り上げたいやん!!」

優人「確かに一般公開の時行ったけど楽しかったなぁ…」

夏「せやろ!?」

優人「そんでタコ焼きとお好み焼きの粉物がめっちゃ美味かった」

神田「お前の思い出って必ず食いもんとセットだな」

桜が運んできた幸せ

※黒バス混合の番外編のような感じです
神田×アリア要素強いです。


ひらひらと舞い落ちる白い花弁を見上げながら、アリアは笑った。
やはり、留学先を日本にして良かった。この美しい桜を見るだけでも、来た価値があったというものだろう。
クラスメイトも気さくでユニークな人たちが多く、初めての留学で何かと不自由なアリアに色々と優しくしてくれて、こうして無事に進級することができた。
去年の今頃は、毎日肩に力を入れっぱなしで、空を見上げる余裕なんてちっともなかったのだが、今はこうして空を見上げて一息つけぐらいにはこの学校の生活に慣れてきた。
……ほんとうに、この一年でここを去らなければならいなのが惜しいくらいだ。

「アリア」
「あら、焔。こんにちは」
「こんな所で何をしておるのだ?早く食べんと昼休みが終わってしまうぞ」

そう言う焔も昼休憩をもらったのか、手には緑茶のペットボトルと購買のパンが見えていた。

「今日は天気も良いですし、外で食べようと思って場所を探していたら、こんな素敵な場所を見つけたんです」
「桜か……好きなのか?」
「はい。イギリスにも咲いてはいますが、やはり日本の桜は格別です」
「ほう、英国にも桜の木はあるのか」
「はい。でも日本の桜より開花はちょっと早いですね。あと、曇りの日が多いのでこんな青空の下で咲き誇っている桜を見るのは日本に来てからです」
「それはもったいないな。英国は雨の多い国と聞くが、やはりそうなのか?」
「そうですねぇ。雨はすごく多いです。そのせいか食べ物とかもナマモノより冷凍したものが多いんですよ」

日本とイギリスの文化の違いを話題にして盛り上がっていると、焔の鼻の先にひとひらの花びらが乗った。

「……む」
「ふふふ。まるで雪みたいによく降りますねぇ」
「そうだな……アリア、一つ桜にまつわるジンクスのようなものを教えよう」
「あら、なんですか?」
「こうやって落ちてくる桜の花びらをつかまえることができると、その人は幸せになれる…と、主が言っておった」
「優人ですか」
「うむ。主だ」

主は博識なのだとちょっと鼻を高くして言う焔に、アリアは小さく吹き出した。まったく、彼は相変わらずあの小さな主様をリスペクトしてやまないらしい。
アリアは試しに目の前に落ちてきた花びらに手を伸ばしてみたが、ひらりと身をかわして掌の上を滑るように逃げてしまった。…意外と難しい。

「…焔は優人から聞いてやってみましたか?」
「いや、我はやっておらん。我は今の生活に満足しておるし、幸せは今手にしている分で十分だ。このうえ幸せを求めるのは傲慢だろう」
「あなたはたまにお坊さんよりも悟ったようなことをおっしゃいますね」

こういうところが、優人に「焔は欲がなさすぎる」と言われるゆえんなのだろう。
自分にはとてもまねできないとアリアは苦笑する。この花びらをつかまえるだけで幸せになれるのならば、私は何度でも手を伸ばすだろう。

「まあ、お主も暇な時にでもやってみるとよい」
「はい、ありがとうございます」

そう言い残し、焔は昼飯を食べに警備室へと行ってしまった。
残ったアリアは、先ほど買った紅茶と朝作ったサンドイッチ弁当を木の根元に置いて、落ちてくる桜の花びらを見上げながら、手を伸ばした。

「ほっ…はっ!……てやぁっ!」

されど、桜の花びらはアリアをあざ笑うように手の間をすり抜けて行く。

「むむむ…」

睨みつけても桜はアリアの手の中には落ちてきてくれない。
そこでアリアはふと気付いた。そうだ、なにも手じゃなくてもいいじゃないか。つかまえられればいいのだから…――――。



「いやー春さねぇ…ユウ」
「見りゃわかんだろうが。つーか、弁当に花びらが入ってきてうぜぇ」
「情緒ねぇなぁ…」

購買のパンをかじりながら寝転んでいるラビに、神田は紙パックの緑茶を飲みながら、そっけなく返した。ちなみにお弁当は優人お手製だ。今年中等部に入ってからというもの、「健全な体は栄養バランスのとれた食事から!」と言って押し付けてくる。まあ、味は確かなので文句も特に言わず受け取っている。

「あー…ほんといい季節さぁ…」
「そうか?」
「そうさー…あーチクショウ…絶対領域が憎らしい…」
「……?さっきから何でお前寝そべって食ってんだよ。行儀悪ぃ」
「いやーこうやって寝そべってみると、普段見えてるものも違った角度で見えて世界がガラッと変わって見えるというか…ちょっともうすぐアヴァロンが見えそうで見えないっていうか…」
「?」

先ほどから一定方向を凝視しているようだが、一体何を見ているんだ?
不思議に思った神田は、ためしにラビのように寝そべってその方向を見てみた。
そして、その先にあったのは―――

「っ!?馬鹿っ!!何見てんだお前!!!」
「イデェ!!だって絶景だろ!?これガン見しねぇやつは男じゃねぇって!!あのすらっと伸びた2本の足。ふくらはぎを包み、膝下までの紺の靴下。そして、スカートとの間で見え隠れする柔らかそうな太もも!見えそうで見えないチラリズム!!」
「生々しく実況すんなぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!」

もう一発ラビを殴って沈めさせると、神田は立ち上がって駆けだした。






「アリア!!!」
「あら、ユウ。もう昼食は済ませたんですか?よく噛んで食べないと消化に悪いですよ?」
「食ってたとこだ!つーか、お前何やってんだ!!」
「焔から、桜の花びらをつかまえると幸せになれるというジンクスを聞かせてもらったので、早速実行に移してみました」
「それは手でキャッチした場合だこのアホ!!いいからっ…!―――そのまくったスカートおろせ!!」

手でつかもうとしてもつかまえられなかったアリアは、あろうことか、スカートのすそを持って広げ、それで桜の花びらを集めていたのだ。
その成果あってか、アリアのスカートの中には数枚の花弁が入っていた。

「いくら裏庭だからって人こねぇわけじゃねぇんだぞ!少しは恥じらいもてこの馬鹿!!」
「ちゃんとスパッツはいてますから別に見えても大丈夫ですよ。ホラ」
「俺に見せんでいい!つーか、スカート使う前にハンカチ広げるとか色々妥協案があっただろうが!!」
「表面積がスカートより小さく、ゆえに非効率だと判断しました」

周りの目を少しは気にしろよボケ!!普通に歩いてるだけで他の野郎の視線がウゼェのに…!写真部に盗撮されて売られでもしたら!!
ああもう、何で俺もこんな厄介極まりない面倒な女を好きなんだよ!!
神田は頭を抱えたくなった。

「……とりあえず、取った花びらハンカチに移して、即刻すみやかに早急にスカートを下せ」
「…………?はぁ…わかりました…」

実際は何も分かっていないながら、なんだか有無を言わせぬ神田の雰囲気にのまれ、アリアは大人しく従った。

「つーか、何枚花びら取ってんだよどんだけ欲張ってんだ」
「失礼な…幸せになってほしい人がそれだけ多いってことですよ」
「あ?」
「これはアレン。これはリナリーの分、こっちとそっちはユウとラビの分。……焔と優人の分に、この間図書室で高いところにあった本を取ってくれた岡村さんの分と、食堂でお金を払うのに10円足りなくて困っていた時に貸してくれた福井さんの分」

………ラビとセットみたいに扱われたのがすげぇムカツク。
つーか、誰だよ岡村と福井って。男か。また変な男ひっかけたのか。
何より腹立たしいのは、

「…テメェの分」
「え?」
「お前の分、どこにあんだよ」
「……あら」

ほら、忘れてた。
自分の幸せ取り忘れて、他人の幸せばっか取ってる。
俺が、一番気に食わないコイツの悪癖。
そんなに自分がどうでもいいか。そんなにないがしろにして、どうでもよく扱うお前を好きな俺は、一体何なんだ。

「まあ、なくても別に私はかまいませんし」
「…………」
「ユウ?」
「……少し、黙ってろ」

アリアの白い髪に、手を伸ばす。
意外にさわり心地のいい猫っ毛の髪は、すぐ指に絡んでくる。
そうやって俺の指を捕えたように、絡め捕えたものがもう一つ。
それが指先に触れると、それを指と指ではさんで、すっと髪をすくようにして抜き取った。

「……お前の分」
「え…っ」

絡まっていたのは、桜の花。それもはなびらなんかじゃなく、花一輪。スカートなんて反則技が許されんなら、きっとこれもアリだろう。
他人にばっかかまけてっから見落とすんだ馬鹿。

「つーかお前、飯は」
「……あ」
「……心底馬鹿だなお前!オラ、こっちきてさっさと食え!!」
「はいっ!」

「あぁ〜っ!休み時間がー!!」とか今頃悲鳴あげながら、木の根元に置き忘れていた弁当と飲み物を拾っていた。自業自得だ。

「好きなのか、桜」
「はい。イギリスにもありましたが、やはり日本の桜の方が私は好きです」
「………こっから、優人の村に行くまでの山道。…知ってるか?」
「えっ、はい…行ったことはないですが、そういう道があるのは優人と焔から聞いてます」
「……その山の山桜、今がちょうど見頃だが……今度、行くか?」
「……いいんですか?」
「別に興味ないなら」
「い、行きたい!見てみたいです!!」

必死で食いついてきたコイツの顔が可笑しくて、思わず笑ってその頭を軽く叩いた。

「なら、こんどの日曜だ」
「っ……お弁当、作りますね」
「天むすにしろ」
「了解です」

コイツの手を掴んで、食いかけで置いてきた弁当のもとへと戻る。
手なんか繋いでんの見たら、ラビがうるせぇから、見つかる前にほどくけど、とりあえず今は俺が繋いでおきたいから繋いどく。
……コイツが自分の幸せ掴まないんだったら、しょうがねぇからしばらくの間は、俺がコイツの幸せを掴んで渡してやろう。しばらく……三ヶ月くらい。
でもまあ、最終的には、コイツ自身が選んで掴み取らなきゃいけねぇけど。

覚悟しとけよアリア。
絶対お前自身の意思で、俺を選ばせるようにしてやる。





―――繋がれた手を直視できなくて、空に舞う桜を眺めるふりをする。
ああ、ちょっとジンクスの効果あり過ぎじゃないですか?一度に幸せが押し押せて来て心臓が壊れそう…。
……ねぇ、ユウ。私、あと一年しかないの。一年しか、あなたの隣にいることが出来ないの。だから少し、わがままを言うのを許してくださいますか?


今度のお花見は、みんなに内緒で、二人で行った思い出にさせてください。



+++++++
桜が開花しましたね。今年はお花見行こうかな…。
ちなみに、アリアと神田がいた裏庭は、中等部の校舎のすぐそばで、優人のクラスからよく見える位置(笑)
……翌日の神田さんのお弁当はお赤飯だったよ!がんばってね、ユウ兄!!

俺と生徒

『それでねーその時のむっくんの顔がおっかしくってねー』
「ふふ、そっかぁ…」

ほとんど毎日行っている近状報告。優人の報告は、最近「むっくん」と「ひむろさん」の話題ばかりだ。バスケ部のマネージャーとして、関わっていく中で、特に仲良くなれたのがその二人ということらしい。

『あと、この間レギュラーのみんなで一緒に食事しながら文化祭の出し物決めたんだー』
「あーそっか。もうそんな時期なのか…じゃあ、俺の学校もそろそろだなぁ…」

新設校である誠凛高校は、昨年は大きな学校行事を行うことができず、文化祭も体育祭も今年が初めてだった。今の二年生が一年生のときに樹立させた生徒会も軌道に乗ってきて、二年目ということで、教員たちの方にも若干余裕が出てきたから通った企画である。

(…ほんと、相田さんは生徒会をよくサポートしてくれてるよ…)

生徒会副会長でありながら、バスケ部のカントクもこなしている女子生徒を思い出し、自然と笑みがこぼれた。
企画自体を立ち上げたのは会長らしいが、可決にいたるまでの細々とした企画書を完成させたのは、彼女の功績が大きい。

『信兄の学校は今年が初めてだよね?なんか、副会長さんがすっごい才媛だとか』
「うん。正直、何人かの先生は、面倒だからやりたくないって顔してたけど…あそこまで練られた企画書だされちゃね。許可を出さざるを得ないって感じだったな」

生徒会と教員を交えた会議も何度か開かれ、それに参加した信は、企画書の問題点や穴を指摘したが、それに即座によどみなく答えられたのは、相田リコ一人だった。

「そうだな…今週の金曜にLHRがあるから、そこでクラスの出し物決めることになるかな…」
『そっか。頑張ってね、信兄』
「ふふ、優人もね。おそらく土日のどっちかはユウと一緒に見にいけると思うから」
『わかったー。じゃあね、おやすみ』
「うん。おやすみ」

通信を切ると、信はふぅっと息を吐いて、ソファーに体を預けた。さて、ウチのクラスは一体どんな出し物に決まるやら…。なかなか個性派ぞろいの生徒たちを頭に思い浮かべると、意味もなく笑えてきた。



――――…そして、金曜日。
LHRは、信の予想通り、文化祭の出し物を決めることとなった。
もともと文化祭に乗り気でなかった担任は、進行を副担任の信に丸投げし、職員室に戻ってしまった。今頃コーヒーでも飲んでるに違いない。

「ほら、チャイム鳴ったよー席付いてー。今日のLHRは文化祭の出し物決めるんだからー」

文化祭と聞いて、生徒たちが一気に浮き足立つのが信にはわかった。教員の中には未だに渋い顔をしている者もいるが、やはり生徒たちには楽しいイベントだ。

「んじゃあ、進行は学級委員長に任せていいかな?」
「はい」

委員長が教卓に出てくるのを見て、信は黒板横の教員用のデスクに移動する。

「んじゃあ、先生はここでさっきの英語の小テストの採点してますから。あとよろしくー」
「え〜ちょっとセンセー放置ですかー?」
「このクラスにはしっかり者の委員長さんがいますから。先生は安心して任せられまーす」
「放任主義ッスか!それ教師としてどうなんスか!?」
「ギャハハハハ!!」

さっそくお調子者の何人かが騒ぎだしたが、信はしれっと受け流した。

「先生には他にもやることがあるの。特に今回の小テストで赤点取っちゃった誰かさん達に、どういう補習をさせようか考えなくちゃいけないからねー」

笑っていたお調子者たちが、いっせいに青ざめた。どうやらみんな、その誰かさん達に心当たりがあるらしい。対して、後ろの方の席にいる火神の顔はちょっと誇らしげだ。なにせ、前日に信を廊下で引きとめて、分からない所をちゃんと教わっていたのだ。その甲斐あってか、火神の今回の小テストの成績は、非常に良かった。

「小学校じゃないんだから、一からコレやりましょうアレやりましょうって教師に言われなくったってわかるし、やられたらウザいって思うでしょ。このクラスの子たちなら、この程度のこと決めるのに、教師は必要ないよ。だから、先生は特に口出しはしません。もちろんアドバイスを求めるなら、それには答えます」
「ハイ。じゃあ、先生の期待を裏切らないようにちゃっちゃと決めるぞーお前ら」

絶妙なタイミングで委員長が手を叩き、話が軌道へと乗った。
それを確認して、再び信は、紙面に赤ペンを走らせる。
耳に入ってくるのは「やきそば!」「喫茶店!」など、出し物に関する色んな意見だ。

―――…それからしばらくして、採点が終わっていない紙も残すところあと残りわずかとなった頃。

「……先生、ちょっといいですか?」
「ん?なに?」

委員長が控えめに信に声をかけてきた。

「とりあえずみんなにざっと意見を出してもらったんですけれど、この中で、規則上許可できないものとかってありますかね?」

黒板はすでに白いチョークでびっしり埋まっており、ずいぶんバラエティーに富んだものになっていた。

「……お化け屋敷はやめた方がいいかもしれない。規則上問題はないんだけれど、もうすでに上がってきてるクラスの内、2つがお化け屋敷なんだよね。お化け屋敷やるとしたら黒幕必要でしょう?足りなくなる可能性があるし、最悪どこかのクラスにその出し物を諦めてもらう可能性もあるからあんまりおススメは出来ないな。あと、なぜか合コンとかキャバクラとか書いてあるけどそれはもちろん却下です」

っていうか、誰が意見しやがった。こんなもの。

「あとはなー…喫茶店もなぁ…」
「えー!?別に飲食店の許可は下りてるしいいじゃないですかー」

この意見を出したらしい女子生徒が不満そうに口を尖らせた。
女子生徒たちは喫茶店という意見が多いのか、不安そうな顔を浮かべている者が多い。

「いや、ダメってわけじゃなくて、喫茶店なら喫茶店のコンセプトを決めておかないと大変だよってこと。やっぱりどこのクラスも喫茶店やりたいって所は多いから、ただお茶とお菓子をお客さんに出します、ってだけじゃ多分他のクラスの出し物と被って、閑古鳥が鳴いちゃう可能性が高いかな」
「先生、ちなみに今喫茶店やりたいって言ってるクラスはいくつありますか?」

委員長の質問に、信は深々と溜息をついた。

「最初に4クラス出し物が決まって報告があったんだけれど、その4クラス全部が喫茶店だったよ」
「4クラス!?」
「競争率高っ!!無理に決まってんじゃん!!」
「いや、他のクラスと違いをつければいいだけだよ。例えば、売る物を和菓子とかに限定して和風喫茶にするとか」

信が例に挙げたのは、実際優人のクラスでやると決まった出し物だ。陽泉は中等部と高等部が合同のため、競争がこちらよりもかなり激しい。そのため、他のクラスとの差別化をするのに色々意見が出たらしかった。

「先生」
「ん?なに黒子君」

一部の生徒たちが、ぎょっとして振り向いた。どうやら、黒子の存在を今の今まで忘れていたらしい。

「参考までに、先生が学生時代にやってきた出し物とかを教えていただけませんか?」
「えっ」
「あ、そっか。先生もちょっと前まで俺らと同じ学生だったんだよな」

火神が何やら納得顔になっているが、信が高校生だったのは、もう6年以上前だ。しかも、信は夏のお目付け役として、必ずと言っていいほど夏と一括りにされて、一緒のクラスに押し込まれた。そのため、毎年あのイベント好きの男に付き合わされて、無茶をやらされてきたのだ。

「えー…先生のは正直あまり参考にならないと思うんだけれど…」
「先生の学生時代の話とか聞きたい聞きたい!!」
「先生一体文化祭でなにやってたの?」

トークが大好きな女子たちは、さっそく食いついて来た。こうなると、大抵の女性は話すまでなかなか食い下がらない。
しかたなく信はあまり参考にはならないであろう自分の学生時代の話をした。

「えーっと、先生の通ってた学校は、学年によって出し物が決まってて、一年はステージ上の出し物か飲食以外の模擬店。二年は飲食も含めた模擬店。三年は自由参加だったんだよね。それで、一年の時は劇をやったんだ」

脚本・監督を夏が務めあげたため、もの凄くカオスな仕上がりになっていた。まあそれでも、ギャグちっくに物語が進んでいくせいか、生徒たちにはウケていた。教員はほとんどが渋い顔していたが。

「二年の時は、各国の軍服着てコスプレして、来店してくれたお客様と一緒に写真を撮ったり、お客さんも軍服着て写真撮ったりしてたなぁ」

二年のクラスの中に軍オタの子が一人いたのだ。その子と打ち解けた夏は、よくその子と雑誌なども読んでおり、「文化祭で各国の軍服着て写真撮影とかやったらおもしろいんとちゃう?」と、クラスに提案したのだ。おもしろくねーよ。
それがきっかけで、夏以外にあまり友達が出来なかったその軍オタの子は、他のクラスメイトとも仲良くなれたのだが、強制的にコスプレに付き合わされた信はいい迷惑だった。…俺、受付係に立候補してたよね?

「三年の時は自由参加だからクラスでは何もやらなかったんだけど、担任の先生に今年はステージ上の出し物が少ないからお前なんかやれとか無茶振りされて、友達とバンド組んでちょっとしたライブやったよ」

信が無茶振り去れた背景には、早々に大学の指定校推薦をもぎ取って、皆が受験に苦しむ前に、すでに安全圏にいたのが大きな要因である。任された当初は、適当にピアノでも弾いて時間稼げばいいかぐらいにしか考えていなかったのだが、それを耳に入れた夏が、千博と蓮も巻き込んでバンドにしてしまったのだ。
改めて振り返ってみても、信には参考にできるものはないように思えた。

「うーん…やっぱり6年以上前のことだし、自分たちで考えた方が……って、どうしたの?…みんな?」

気づけば、教室の大半の生徒が突っ伏して震えているという異様な光景が広がっていた。困惑して委員長を見ても、彼は肩をすくめて苦笑するだけだった。ますます意味が分からない。

「えーっと…みんなどうしたのかなー?」
「…っばい…」
「え?」
「ヤッバイ!!想像しただけであたし鼻血噴きそうになったんだけど!!観野先生の軍服姿とか!!」
「わかる!ヤバイよね!?」
「や…やばい…?」
「っていうか、先生!バンドやってたんなら俺らのバンドにゲストとして出演してください!!」
「先生の歌声聞いてみたーい!!」
「っていうか、先生写真とか録画とかないですか!?」
「え、いや、あっても多分実家の方だし無理かな…」
「っていうか、先生も参加してよ!そしたら絶対優勝狙えるって!!」

生徒たちと信がそんなやり取りをしている間、黒子は机の下で携帯をいじくり、メールを作成していた。


To:夏さん

>お忙しい所すいません。黒子です。
実はつい先ほど、観野先生がご自分の学生時代に、文化祭でどんな出し物を出したか話していたのですが、当時の写真や映像が残っていたら、送っていただけませんか?


「……おい、黒子……」

前の席に座っていた火神は、呆れたような目で黒子を見ていた。珍しく携帯をいじくっているかと思えば、こんなメールを書いていた。
バスケ部のメンバーの何人かは、以前、夏と千博が学校見学に来た時にアドレス交換を行っているので、連絡先を知っているのだ。

「だって気になりませんか?観野先生の学生時代」
「そりゃぁ…」

気になる。すごく気になる。
この隙がなく、いつも余裕そうに笑っている教師が、一体どんな学生時代を送ってきたのか。それは火神も非常に気になることだった。

「別にもらった写真を女子に売りさばいたりするわけじゃないんですから大丈夫ですよ。それに、夏さんに断られたら諦めます」
「それなら…まぁ…」

……いいのか?
火神が首をひねっている間に、騒がしくなった教室を静めるべく、信が手を打った。

「ほら、他の教室も授業やってるんだから静かに!先生も出し物に参加できるかどうかは、一応生徒会に伺ってみるけど、多分色のいい返事はもらえないと思うよ。あくまで生徒が主体だからね。それに、一部から贔屓だのずるいって声は必ず上がると思うし」

教師が力添えしていたから総合優勝を取った、なんてなったら、他の生徒からの不満は爆発するだろう。ただでさえ、文化祭に積極的ではない教員たちに生徒は不満を抱いているのだから。

「とりあえず、第一候補から第三候補まで決めないと。ほらほら、あと半分しか時間ないよ」

壁の時計を見て、生徒たちは慌てたようにまた文化祭の出し物の話に戻った。
信は、椅子にもたれかかって気づかれないように小さく溜め息をつく。

なんというか…いまどきの高校生ってパワフルだ…。


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