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拍手レス

・アスカさん≫優人「返事が遅くなってしまい申し訳ありません。そして、拍手ありがとうございます、アスカさん」

信「それで、アリアは今年のバレンタインデーユウにチョコあげたの?」

アリア「ユウは甘いもの苦手なので、蕎麦粉を使った甘さ控えめのクッキーを…あと、やっぱりイギリスなので、ちょっと良い紅茶を送らせていただきました」

ラビ「あ、それ俺や優人たちにも送ってくれたやつだよな?」

信「美味しいブラウニーと一緒にねー。ホント俺たちにまでありがとねー」

アリア「いえいえ…正直…ユウはやっぱり送られてきても迷惑かなぁと思ったんですが…まあ、いらないなら信かラビにあげるでしょうし、いいかなーと…」

六花「ブッ!!いや…ちゃ、ちゃんと食ってたぜ…ユウのヤツ…」

夏「えっ、なになに?なんか知ってるん?りっちゃん」

六花「いや、さ……バレンタインの一週間後くらいにあたしユウの部屋行ったんだけどよ…そしたらアイツのベッドの下にさ、そのクッキーがまだあって……アリアがどのくらい送ったか知らねぇけど、おそらく一日一個ぐらいのペースでちびちび食ってたんじゃねぇかなぁ…アイツ」

夏「ブワッハ!!マジか!!なんやその可愛さ!!」

優人(そういえばユウ兄、昔から好きなものは大事に残して最後に食べてたっけ…)

信(っていうか、ベッドの下って……いまだにそんなベタなとこに大事な物隠してるのか…ユウ…)

俺と文化祭(準備編)

中間テストが無事終わり、じめじめした梅雨の季節に入った今日この頃。
信兄、ユウ兄、今陽泉は文化祭一色です。

雪国にある陽泉高校は、初雪も早いから、一学期から二学期の始めあたりに大抵のイベントを詰め込んでる。まあ、3年生の受験も考慮してるんだろうけど。
そして、中高が同じ敷地内にあるこの学校では、文化祭も中高そろって行われ、三日間にも及ぶかなり大規模なものになっている。

「優人のクラスは今年なにやんのー?」

放課後、部活にいく途中、むっくんと氷室さんに出会った俺は、一緒に体育館に向かう道すがら、文化祭について聞かれた。

「うちのクラスは茶道部の人が多いから、和風喫茶だって。来客した人にお茶を立てるみたい。お茶と一緒に和菓子も出すから、むっくんもよかったら来てね」
「うん。行く!」

……これは完璧和菓子目当てだな…。でもまあ、みんなそんなもんだよね。

「優人もお茶を立てるのかい?」
「うん。和尚の知り合いにお茶の先生とお花の先生がいたから、興味本位で習ってた」

知り合いというか、実際は和尚の飲み仲間に。「柳元の側いるとストレスたまるでしょう?こんどお茶を立てて差し上げますよ」とか「花が好きなら、それを活けてみない?」とか言われて。当時、色んなことに興味津々だった俺は、二つ返事で頷いていた。…別に年がら年中山駆け回っていたわけじゃないんだよ。

「むっくんや氷室さんのクラスは?」
「俺んとこはフリマだってー」

おお…!コストが少なくて尚且つ儲けがでる定番!!
あ、和尚のあの木彫りの熊ストラップ、むっくんとこのバザーに紛れ込ませようかな…。

「俺のとこは英国風喫茶だってさ。完璧アレンがいることにかこつけたよね、これ」
「あー…クラスに英語圏出身二人もいるもんねぇ…」

実際はアメリカ英語とイギリス英語じゃ色々違うらしいけど。

「まあ、イギリスにアレンのお姉さんがいるみたいだから、その人からスコーンの作り方や、紅茶の入れ方のアドバイスもらうって言ってたよ」
「へー兄弟いんだ」
「アレンのお姉さんは、俺の兄貴がここの高等部にいた時に留学してきたんだよ」
「え、じゃあ優人はアレンのお姉さんのこと知ってるのかい?」
「うん。アリアさんって言ってね、優しい人だったよー」

アリアさんは、コミュ障のユウ兄と唯一渡りあえた女性であり、あのユウ兄と互角に戦ったという伝説を持つ人だ。在学中は、知らない人なんかいないほどの名物コンビだったとか。もしかしたら、岡村先輩や福井先輩当たりは、名前ぐらいは知っているかもしれない。

「ところで…バスケ部はなにするか二人は聞いてる?」
「いや…特に聞いてないな…」
「俺も知んなーい」
「そっか、じゃあ今日あたり話し合うのかな?」
「えー…バスケ部もなんかやんの?めんどくさー…」
「大丈夫だよ。バスケ部は人数も多いし、ちゃんとシフト組めばむっくんがお店回る時間も十分確保できると思うよ」
「……ホントに?」
「ホントに」

というか、いくら文化祭だからって、労働基準法すれすれのシフト体制つくるなんて俺と雅子さんが許しません。

「ま、何をやるにせよ、せっかくの文化祭なんだし、楽しまなきゃ」
「そうだな。俺も頑張って美味しい紅茶淹れられるようになるよ」
「…………俺んとこ、たぶんそんなに人いなくていいから、暇になったら、二人んとこ行って良い?」
「もちろん。いつでもきていいよ、敦」
「美味しいお菓子、用意しとくね」
「……ん」

まあ、とりあえずは、今日の練習も頑張ってこなさないとね。



「よし、じゃあ今日の練習はここまでだ!」
「「ありがとうございましたっ!!」」
「タオルとドリンクはここでーす!!どうぞー!!」

俺が叫んだ瞬間、わっと選手たちがドリンクの前に列をなした。毎回見てるけどやっぱ怖いな…自分より背が高い人が多いからなおさら。

「みんなちと集まってくれるか」

岡村先輩の声に、タオルで汗を拭いていた人も、水分補給をしていた人も、一度手を止めた。

「なんだよ、岡村」
「いや、ちと話し合っておきたいことがあってのぉ…」
「もったいつけてないでさっさと話すアル。モミアゴリラ」
「お前はいちいちわしを貶さんと気が済まんのか!?」

あぁ…また岡村先輩と劉先輩で口喧嘩始めちゃった…。コレを続けさせたら長くなるな、と直感した俺は、無理矢理会話を分断した。

「もしかして、文化祭のことですか?岡村先輩」
「おお、優人…そうじゃ、文化祭についてなんじゃが…」
「優人、こんな奴に先輩つける必要ないアル。モアラで十分アル」
「ついに原型すらない!!」

あー…また始まった…。俺が会話に入っても無意味だったなー。
そしたら、呆れた風情の福井先輩が、部員全員に説明してくれた。

「あー…まあ、文化祭なんだけどよ、2・3年は知ってると思うが、バスケ部は毎年出店することが決まってんだ」
「えー…決定事項なの?ソレ」
「嫌そうな顔してんじゃねぇ、紫原。クラスの売り上げは毎年集計されて寄付とかに出されちまうが、部活の売り上げは、ある一定額を寄付に出せば、残りは部費に回していいんだよ」

部費……その言葉に、俺は即座に手を上げた。

「ハイッ!ハイッ!!ボールが何個かツルツルになって光沢放ってきちゃったんで、新調したいです!!あと、赤の6、10、15のビブスと、青の4、8、9のビブスを修繕してだましだまし使っていますけど、そろそろ本気でヤバイです!!あと…あとは…えーっと、えーっと……」

あと何があったっけ?湿布とコールドスプレーもそろそろ補充したいし、ゴールネットも取り変えたい、ああ、考えれば考えるほど色々出てくる…。
俺が指を折りながら一人でうんうん唸ってると、近くにいた先輩達に抱きしめられた。

「うん…うん!!買ってやるからな!?お兄さんたちが稼いで全部新しくしてやるからな!!」
「そうだよな!優人最近見るたびお裁縫セット持って、穴空いたビブスちくちく縫ってくれてたもんな!?」
「俺らが使い古してボロボロにしちまったタオルは雑巾にしてリサイクルしてくれてたし!!」
「キツイ練習の後にはレモンの蜂蜜漬け作って持ってきてくれたりしたよな!紫原がほとんど食っちまったけど!!」
「えーと……?」

なんで先輩たちみんな泣いてんの?っていうか、筋肉がっちりついたスポーツマンにホールドされると流石に苦しい。

「……まあ、そういうわけじゃ。部費を潤すためにも、毎年どこの部も何かしらやる」
「去年はフリマでそこそこ儲けたんだけどさ、今年はまだ何やるか決まってねぇから、早いうちに決めておきてぇんだよ」
「今年もフリーマーケットするのはダメなんですか?」

ごもっともな氷室さんの意見に、岡村先輩と福井先輩は深い溜息をついた。

「それがの…ほんの1年前に毎年同じモンで出店するのは禁止になってしもうたんじゃ…」
「ある年から、剣道部が売上独占してよ…それから毎年剣道部だけが儲かるもんだから、部の間で条約が結ばれて、毎年違うモンだすってことになったんだよ」
「…………」

ごめんなさい。それ、多分俺の兄と、アレンのお姉さんです…。
それまで剣道部は、文化祭では剣劇を行うのが定番で、ユウ兄が入部たその年、ユウ兄を主役の義経にすえた『義経記』で、大儲けして、アリアさんが留学してきてからは、なぜかかぐや姫(アリアさん)をめぐって剣で戦う『竹取物語』を劇でやったらしい。そして、毎年超満員。あな、おそろしや。
不満を少しでもなくすために、2年からは演劇部と合同にしたりしたらしいけど、どうやら焼け石に水だったみたいだ。

「まあ、だからお前らも各自で考えておいてくれ」
「そー言っても…飲食店系はキツイっすよね?みんな自分のクラスの出し物ありますし…」
「あ、そーだ。この中で今年休憩所とかビデオ上映会とかほぼやる気ナシのクラスの奴どれくらいいる?」

福井先輩が尋ねると、ぽつぽつと手が上がりはじめた。

「6人か…んー食いもん系は当たればガッポリ来るけどなぁ……下手に外れると、材料費や機材だけかさんで大赤字になる場合があっからな……」
「あぁ…焼きそばで3つも店舗がでた年は、かなり熾烈な競争になっとった……」
「あー…あれなー…どこの年末商戦かと思うぐらい声出ししてたもんな…」

岡村先輩と福井先輩は過去の文化祭に思いをはせるように、遠い目になっていた。
やっぱかぶっちゃうとどうしても売り上げは落ちるもんね……。

「あ、ハーイ。質問」
「お、なんじゃ優人」
「こういうのって話し合いの場をもうけて一発で決めちゃった方が良いんじゃないですか?各自で考えておけって言っても、この練習の後、みなさん風呂入ってメシ食って寝るだけでしょ」
「「………………………」」
「オイ、全員が目をそらすなよ。一人ぐらい優人の目ぇ見ろ」
「お前の良い分はもっともなんじゃがな…優人…場所がないんじゃよ……」

え、でも、部室はさすがにキツイだろうけど、会議室とか図書室とか、寮ならロビーや食堂なんか、広い場所ぐらいいくらでもあるんじゃ…?
俺の表情から言いたいことを察したのか、福井先輩が理由を話してくれた。

「仮にレギュラーだけで集まろうとしても、こんだけデケェ奴らがいたら、それなりのスペースは必要だよな?けど、会議室はどっかのクラスや部が独占して使うと、贔屓だってクレームが来るから使用許可が下りねぇ。図書室も、本読まねぇなら出てけって図書委員に追い出されんのがオチだ。そもそも、共同スペースだと、他の部に聞かれる危険性がある」
「なるほど」
「他の部のはどうしてるアルか?」
「実家が近い奴の家にレギュラーが集まって会議…とかが多いな。けど、俺らの場合は…なぁ…」

……2m越えが3人じゃ、一般家庭のお宅には入りきらなですよね…。福井先輩や氷室さんも結構身長あるし。
いや…でも待てよ…。

「ねえ、むっくん。寮の門限って何時まで?」
「んー?たしか9時ぐらい…」
「外泊届け出せば、どんなに遅く帰ってきても大丈夫だけどね、必ず理由は聞かれるよ」

9時なら結構余裕あるな…。今日は午前中が雨で、焔も車で来てるし。

「どうしてそんなこと聞くんだい?」
「えっと…みなさん今日、このあと何か予定とか入ってますか?」
「いや?ワシは特に…」
「お前が言った通り、みんな風呂入って、飯食って、寝るだけじゃね?」
「なら、これから俺んち来て、決めちゃいませんか?」
「「え?」」

ぽかんとする先輩たちの中で、氷室さんとむっくんだけが納得の顔になった。

「ああ、確かに優人の家ならこのメンバーでも大丈夫だね」
「あ、そっかー優人んちお寺だって言ってたもんねー」
「は!?寺!?」
「あ、俺実家が京都で、父親の友人の方の家に居候してるんです。その方がお寺の住職やってて…今ちょっと連絡してみますね」

ポケットからケータイを取り出して和尚にコールすると、そんなに待つことなく、和尚と繋がった。

『はいはーい。優人くんどうしたんだい?』
「あ、和尚。あのさ、今日バスケ部の人達を招待していいかな?文化祭の出し物を決めちゃいたいんだ」
『ああ、もうそんな季節か…早いねぇ。そういうことなら、私は全然かまわないよ。好きなだけ、母屋の客間を使うといい』
「ん、ありがとー和尚。……主将、オッケー出ました」
「そうか…少し変わってくれんか、優人。わしからもお礼を言っておきたい」

岡村先輩がそう言うので、俺はケータイを渡した。岡村先輩は、ケータイ越しの和尚に向かって急にすいませんと頭を下げて、お礼を言ってくれていた。……別にいいのになぁ。あの客間は、村のお年寄りたちのお茶会に使われるぐらい自由な共同スペースになってるし…。
あ、和尚の笑う声が、ケータイから零れてきた。和尚も俺と同じこと思ってるみたい

「はい…はい、それではお邪魔させてもらいます。……優人、ありがとな」
「あ、いえ」

再び戻ってきたケータイを、俺は耳に押し当てた。

『いやぁ、その年でしっかりした主将さんだね』
「うん。頼りになる人だよ」
『そうかい。あ、さっき主将さんにも言ったけど、せっかくだから、今日の晩御飯にご招待しておいたよ。みんな一生懸命練習してお腹空いているだろうと思ってね』
「ああ。そうだね…」

さて、なに作ろうか…カレーは一昨日作ったしなぁ…むっくんたちの意見も聞いてみよ…。

「じゃあ、そういうわけで今晩は団体が来るから、お弟子さん達にもそう伝えといて」
『うん。じゃあ、楽しみに待っているよ』


今日は俺んちで作戦会議です。

拍手レス

・ジンさん≫六花「拍手ありがとーございます。えー?別にいいぜ?そんな六花さんに痺れて憧れても」

神田「お前に憧れる人間がいたら、そいつは人として何かが欠落してる」

高尾「いや…神田さん六花さんの弟子なんスよね?」

神田「………世の中には下剋上っつーモンが常にあんだよ。覚えとけ」

ラビ「お前は一体何時代を生きてるんさ、ユウ」

神田「俺の周りにいる面子忘れたのかテメェ……残雪に、アリア、お袋、信…」

ラビ「あ、戦国時代さね。うん、そのメンツじゃ毎日が戦場だわ」

六花「おいおい。そんなこと言っていいのかー?あたしアリアに報告しちまうぜ?」

神田「!?なんでお前がアリアの連絡先知ってんだよ!!」

六花「言っとくけど、あたしとアリアメル友だからな?まあ、あっちは今イギリスだし、そんな頻繁にはメールしてこねぇけど、それでも大体週に1回は最低でもメール来るな」

神田「あのアマ……!俺よりマメに連絡取ってんじゃねぇかよ…!!」

ラビ(そりゃ、ユウが電子機器に弱くて、マメに返信しないって知ってるからだろ…)

六花(……剣道の邪魔にならねぇように、連絡我慢してけなげに待ってるっつー乙女心が理解できねぇのかねぇ…この朴念仁は)

高尾(あー…だから六花さんを経由して神田さんの様子を聞いたりとか?)

六花(そーそー…今回あたしがユウに会いに来たのだって、もちろん助が必要だったってのもあるけど、なにより前日に『月末ですが、ユウはちゃんと食事を取っているでしょうか?』ってメールをアリアからもらったからだし…実際会ったらヒデェ面してたしよ…)

ラビ(……国境を越えて彼女に心配されるとか…)


六花の設定などは、次回の話に書いておきます。



拍手レス

・綾織さん≫六花「拍手ありがとーございます。綾織さん。まかせとけ。もう六花さん登場したからにはバンバン絡むからな!」

神田「だから嫌だったんだよ…アリア出ちまったら、ぜってーなし崩しにコイツも出てくるから……!!」

優人「にぎやかだよねぇ、関東組は」

信「そうだねぇ、主要キャラの密集区域にいるからねー」

優人「ふふふーその隙に俺は田舎で安閑と過ごすんだ!!」

信(………優人、文化祭とか夏休みとかそこらへんのイベントすっかり忘れてるなー…)

六花(面白いから黙っとこうぜ)

俺と師匠

※凍て花×黒バスパロです。
若干下ネタ入っているので注意してください。


練習を終えてシャワーを浴びた神田は、濡れた髪をタオルで乾かしながら、剣道場を後にした。
この季節になると、湿気でムシムシするのが苛立たしいが、髪が早く乾いてくれるから助かる。
道場を出ると、正門の前では、ラビが文庫を片手に神田を待っていた。

「お、ユウお疲れさん」

レポートがあるとかで、ラビも大学の図書館へ来ていたのだ。目当ての資料は見つかったらしく、肩にかけてあるバックは膨らんでいた。

「さっきタカちゃんにメールしたら、あっちも今日は午前中で練習終わるって言ってたから、一緒にメシでも食おうってことになったんだけど、ユウはどうするんさ?」

ラビと高尾は馬が合ったらしく、アドレスを交換してからというもの、ちょくちょくお互いの近状報告をしているようだった。ちなみに、神田も半ば強引にアドレス交換をさせられたが、高尾から送られてきたメールに彼が返事を返したことはいまだに一度もない。
そもそも神田は、メールという機能があまり好きではないのだ。あの細かいボタンをぽちぽちと押して文字を打つという作業が、どうも神田の性に合わない。

「いや…俺は帰―――」
「おーい、神田さーん!ラビさーん!」

誘いを蹴ろうとしたその時、間の悪いことに高尾の声が響いた。緑間は今日も相変わらずリアカーに乗っている。

「神田さんも一緒ってことは昼は和食でいいッスかー?」
「いや、俺は―――」

そこでまた間の悪いことに神田の携帯の着信音が鳴った。何の飾り気もない黒電話の音だ。
神田はことごとく会話を遮られ、忌々しげに舌打ちをついてから通話ボタンを押した。―――そこで液晶画面をきちんと確認しなかった事を、神田はすぐに後悔する。

『ユウ!!悪ぃんだけどちょっと助k…』

ブツッ

携帯からけたたましく聞こえてきた救援の声で、電話口の相手を特定した神田は、通話終了ボタンを強く押した。
関わってはいけない。本能と、今までの経験がそう告げていた。

「おい、ユウ…」

どうやら通話の声は漏れていたようで、ラビは呆れた目で神田を見ていた。

「俺は何も聞いてない」
「いや、ここにいる全員に声聞こえてたから」
「間違い電話だ」
「いやいや。あの声ぜってー『姉御』だろ」
「違う。アレは…アレだ。ケリーだったか、テリーだったか…」
「………ひょっとして、メリーさんのこと言いたいんさ?」
「それだ」
「『それだ』じゃねぇって。つーか、電話で火急を知らせるメリーさんなんか聞いたことねぇさ」
「……前々から疑問だったんだが、アレって、場所を点々と移動してればそのうち諦めるんじゃねぇのか?」
「もの凄く金と時間と労力がかかりそうな対処法さね。つーか、話ズレてる」

淡々と繰り返される幼馴染たちの言葉の応酬に、高尾が笑いをかみ殺してぷるぷるしていると、再び着信音が鳴った。今度は、ラビの携帯だ。
しかし、ジーンズのポケットから携帯を取り出そうとするラビの腕を、神田が掴んで阻止した。

「やめろ!出るな!電話口に待ち構えていんのは妖怪だぞ!!」
「いやだから姉御だって!」
「同じモンだろ!!どっちも同じバケモンだ!!」
「だったらなおさら出なくちゃ恐ろしいことなんだろ!?俺だって祟られたくねぇし!」

ラビも普段の飄々とした口調を取っ払って、神田に怒鳴り返す。お互い必死だ。

「とにかく早く出なきゃダメだって!姉御のことだから、下手したら大学の事務や学長にまで電話かけてくるぜ!?」

高尾と緑間は目を点にした。大学の学長にまで電話をかけてくる?どんなブッ飛んだ人だソレハ。
神田も流石にキャンパスの至る所にあるスピーカーから呼び出しをくらうのは嫌なのか、ぐっと押し黙って、腕を掴んでいた手を弱めた。
ラビは、神田のが掴む力を弱めた瞬間、その腕を振り払って即座に携帯に出た。

「あー…もしもし姉御?―――…………………………………………………ハイ、ワカリマシタ」

それが、通話中にラビが喋った全ての言葉だった。時間の経過とともにラビの顔はどんどん青くなり、有無を言わせることなく、ただ「ハイ」という承諾の一言をラビの口からぶん取っていった。

「召集命令さ、ユウ。昼飯は姉御が奢ってくれるから今すぐ来いだってさ」

神田はがっくりとうなだれた。それを横目で見ながら、ラビは深々と溜息をつく。
どんだけ足掻いたところであの人には逆らえねぇんだから、さっさと出りゃいいのに…。

「あ、真ちゃんとタカちゃんも一緒に来るさ?奢ってもらえんぜ」
「えっ、マジっすか?」
「……面識のない俺たちまでいいんですか?」
「いーのいーの。『飯を食うなら大人数』っていうのが姉御の格言だから」

むしろ喜ぶと思うさ。そう言うと、基本ノリのいい高尾は「じゃ、お言葉に甘えて」と笑顔でラビの提案に乗っかってくる。そんな自分の相棒を、渋い表情で見ながら、緑間は「…ごちそうになります」と言って頭を下げた。

「ところで、そのラビさんの言う『姉御』って人、どんな人なんスか?」
「んー?姉御はまあ、俺がこの名で呼んでる通り、すっげー姉貴肌の人なんさ。まあ、とりあえず歩きながら話そうぜ。あ、そのチャリアカーは大学の駐輪場にでも置いといた方がいいさ」

ラビの言葉に従い、一先ず駐輪場にあずけると、4人は歩き出した。
道中の話題は、もちろん『姉御』という人物についてだった。

「姉御は元々どっかの国の軍隊にいた人らしいんだけど…」
「地雷を踏み抜いてもぴんしゃんしてた伝説を持つバケモン」
「………まあ、その当時所属してた隊の上司と折り合いが悪かったらしくて…」
「上官をぶん殴って昏倒させた後、素っ裸にしてミサイルに括りつけて記念撮影してから脱隊」
「……それからは…ほとんど裸一貫の状態から自分の店立ちあげて、そんで成功して」
「裏町を牛耳る女傑」
「………ユ〜ウ〜?さっきからなんなんさ!?俺の説明に茶々入れてきて!!」
「夢や憧れを抱いたって現実を直視した時に辛いだけだろ」
「なあ、ユウちゃん。お前マジで姉御となんかあったの?」

幼馴染二人のやり取りをぼんやり聞きながら、緑間と高尾はラビと神田の言葉から、姉御なる人物を脳内で想像してみた。……どう頑張っても、ゴリラに女の服を着させたようなイメージしか浮かばなかった。

「ラビさん達はなんでその人と知り合ったんスか?」
「いや、俺が姉御と知り合ったのは中学の時からで、元々はユウの――」
「てめぇこンの馬鹿弟子ぃぃぃぃいいいいいいいいいい!!!!」

ぶわっと、風を巻き起こして黒い何かが緑間の横を通り過ぎた。
あまりに唐突なことで、目では負えず、一瞬大きなカラスが飛び去ったのかと思ったぐらいだ。
あの怒号さえ聞こえなかったなら。
一方、高尾には辛うじて見えていた。だが、信じられない光景だった。
視界の端に、女性が映った。そう思った次の瞬間には女性はもう自分の眼前に迫っていたのだ。
そして、自分の斜め前を歩いていた神田を蹴っ飛ばした。

「あたしからの電話には3コールで出ろって言ってあっただろうが!しかもなに途中で切ってんだテメェ!!」

口をぱかっと開けて呆気にとられるしかない緑間と高尾を見て、ラビは「あっちゃー」と言いながら、目を手で覆った。出来ればもう少し説明しておきたかったのに。

「えーっと…真ちゃん、タカちゃん大丈夫さ?」
「ラビさん…あの人って…」
「まあ、察しついてるとは思うけど、アレが『姉御』さ。本名・六花。ユウのお師匠さんなんさー」
「うぇぇぇぇええええ!?」

目をひん剥いて高尾は六花を見つめた。
ゴリラなんてとんでもない。超絶美人だ。さらっと腰まで流れる艶のある黒髪に、白雪の肌と赤い唇がよく似合う。モデル雑誌から飛び出して来たんじゃないかというぐらいの抜群のスタイルに。身につけている服やアクセサリーから、本人のセンスの良さがうかがえた。

「いっってえな!!なにしやがんだこの馬鹿残雪!!」
「うるせぇ、馬鹿弟子。頭は狙ってねぇだろうが。これ以上お前の頭が残念にならねぇようにっていうネーチャンのありがた〜い気遣いだ。泣いて喜べ」
「誰が喜ぶか!!」

あーあ…また始まった。姉御のユウいじり…。
往来で人目も気にせずぎゃんぎゃん騒ぐ二人を見てラビが嘆息していると、背中をちょんちょんと突かれた。緑間だ。

「ん?どうしたんさ?真ちゃん」
「いや…さっき神田さんがあの人のことを残雪と呼んでいたので…」
「ああ…残雪っていうのは、姉御のまぁ…昔のあだ名みたいなモンさ。お前らはフツーに六花さんとでもよんどきゃダイジョブ」
「わかりました」

さて、どーしたもんか。
ラビは再び目線を六花と神田に戻した。未だにあの師弟はぎゃんぎゃんと言い争いの最中だ。
というか、通行人にはもうチンピラ同士の喧嘩にしか見えないだろう。
あ、すいませんそこのお姉さん携帯取りださないでください。すいません警察とかマジやめてください。

「あーねーごー!そろそろどっか店入ろうぜ?俺腹減ったさ」
「ん?あぁ…悪ぃ。ホラ、行くぞユウ」
「チッ!俺は帰るから用件だけさっさと―――」
「今朝のお前の朝メシ当ててやろうか?」

うぐっ、と神田は言葉に詰まった。どうやら、神田が隠したかったことなど、六花にはお見通しらしい。

「今朝のお前の朝メシは―――白米と漬物」
「「ヒデェ!!!」」

ラビと高尾の声が綺麗に重なった。江戸時代の浪人か何かか、こいつは。

「どーせ、月末ですっからかんになっちまってんだろ?」

弟の優人にせがむにも兄貴としてのプライドが邪魔をし、兄である信を頼れば、やっぱり一人暮らしは無理だから一緒に住めと言われるのは必至。だから神田は誰にも助けを求めず、自分に出来る範囲内で節約して生活していたのだろう。

「……なんでわかんだよ馬鹿残雪…」
「そんなハリのねぇ肌と覇気のねぇ顔つきしてたら一発で分かるわ。何年お前の師匠やってると思ってんだ。ったく、今日は和食だな。ラビ、悪ぃけどお前もそれでいいか?」
「奢ってもらえんだし、それで構わないさー。あと、姉御。この子らも一緒にいい?っていうか、この子らと飯食う先約があって…」
「ああ…そりゃ悪いことしたな。えーっと…」
「初めましてー。高尾和成でっす!」
「初めまして、緑間真太郎です」
「おー。お前らも和食でいいか?」
「もっちろん。つーかホントにいいんスか?俺らまでご馳走になっちゃって」
「飯は大勢の方が美味い。気にすんな」

ニッと笑って、六花はあっさり二人を歓迎した。
なるほど。こりゃ確かに『姉御』だ。高尾は密かに納得した。
それから六花は緑間と高尾をじっと見つめて言った。

「フーン…そっか。二人ともバスケやってんのか、緑間の方はピアノもやってんだな。高尾は下に兄弟いんだろ。…妹か?」
「え……」

高尾が笑顔のまま固まり、緑間は目を大きくして、息をつめた。

「え、え、なんで?」
「あ、悪い。商売柄、客の身なりでソイツの職業を大体察する癖ついちまっててよ。
緑間も高尾も身長は平均値以上言ってるし、二人ともしっかり筋肉付いてるってことは何かスポーツやってんだろ。日に焼けた形跡もないし、何より緑間のその手に巻かれたテーピングみりゃ、インドアスポーツで大体バスケかバレ―の二択にできる。極めつけは二人の着てる学ラン。それ、秀徳だろ?だったら、バスケ部員の可能性の方が高い。ピアノは指みりゃやってるって分かる。お前、相当自分の指大切にしてるな。いいことだ。
後は、二人の挨拶や話し方だな。緑間はそんな口数の多い方じゃねぇ。が、育ちは良いな。ちゃんと親の躾が行きとどいてるいい家庭だ。高尾は口数の少ない緑間に変わって、あたしに質問投げかけてきただろ。そーゆー気配りが出来んのは、兄弟いる家庭に育ってる奴だよ。特に下に異性の兄弟とかがいる奴は上手いな」

ま、何事にも例外はあるから一概には言えねぇけど。そこは経験で補えるしな。
さらっと、タネあかしをする六花に、緑間と高尾は唖然とした。

「え…六花さんって、探偵かなにかッスか?」
「そんなモンは、時間と金に余裕がある奴がすることだよ。あたしはどっちかってーと…夜のオシゴト的な?」
「っ!?」
「そ、それっていわゆる男に夢を売る店的な奴ッスか…?」
「おー…クラブにバーに居酒屋に料理屋…高級なのから庶民的なのまで何店舗か」

すんげぇ敏腕の経営者じゃねぇか!!高尾は心の中で大いにつっこんだ。
この不況のご時世に、それだけの店を持つことがどれだけすごいことか、子供の自分にもわかる。何者だこの人。

「まあ、基本全部接客業だから、自然と人を見る目は肥えんだよ。いいかお前ら、人を見る時はまず靴見て、次に腕の時計を見ろ。男はそれで大体の年収とランクがわかる」
「ガキに変な入れ知恵入してんじゃねぇよ!このダメ大人!!」
「姉御!この子たちコーコーセー!DK!!」

とんでもないアドバイスした六花を強く叱責するが、当の本人はどこ吹く風だ。

「なに行ってんだよ。こいつらだって後3年もしない内に大人の階段上っちゃうんだぜ?君はまだシンデレラだったのがあっという間に狼男だ」
「そんなことないさ!だって現にユウなんて彼女持ってんのにまだツンデレラだぜ!?」
「何言ってんだクソ兎ぃぃぃいいいいいいいいいい!!!」
「ユウちゃん…幸せは誰も運んでくれねぇし、赤ん坊はコウノトリが運んでくるわけじゃねぇんだぜ…?」
「んなこと分かってるわ!!!」
「だったら自分で歩いて幸せ掴みに行けや。歌にもあんだろーが。一日一発三日で三発、十月も過ぎりゃ子が出来るって」
「水前寺○子に全力で謝れぇぇぇぇえええええええ!!」
「ッ……ヒッ!…ヒック……!」
「あの…高尾が笑い過ぎて呼吸困難で死にそうになってるんで、そろそろ話を切って場所を移動しませんか…?」

そんなこんなで、このメンバーでランチなのだよ。


+++++++
ヤロー共がいても下ネタの「し」の字も出ないのに、六花がいると下ネタに走る不思議。

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