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俺とモデル

※凍て花×黒バスパロです。

中間テストも終わり、梅雨の季節がやってきたある休日。この日は梅雨の中休みとだけあって、久々に青い空と太陽を拝むことができた。
信はこれ幸いと言わんばかりに、洗濯物と布団をベランダに干して、両手を上にあげて大きくのび上がった。

「ん〜〜〜いい天気〜」

夏が近づいて来たせいか、日差しも5月に比べてだいぶ強くなってきた。これなら、今日干した厚めの服もしっかり乾くだろう。

(さてと…今日は久しぶりに買い物行かないと…)

そろそろ食材も切れかかってきている。雨の日は、買ったものと一緒に、傘も持たなければいけないのが億劫で、信はあまり雨の日に買いものに行きたがらなかった。だが、今日は雲ひとつない晴天。久しぶりにスーパーに行って、食材や、他の日用品もアレコレ買いこんでおこう。
そうときまれば、さっそく出かける準備をしようと、信は財布と携帯を手にとった。すると、マナーモードにしっぱなしだた携帯が、チカチカ点滅していることに気づく。

(メール…?)

開いて液晶画面を見てみると、差出人は八神蓮。―――夏と同じく、信の悪友であり幼馴染でもある彼だった。大学に通いながら、俳優として働いていた彼は、今や人気急上昇中の若手俳優だ。

(なんだろ…)

不思議に思いながらメールを開けてみると、そこには短くじつにシンプルにしたためられていた。


かくまえ

「いや、誰を」

思わず携帯に向かってつっこんでしまった。学生時代、浮気がばれた夏を何度も匿った覚えはあるが、蓮を経由して信に頼みこんできたことはない。そもそも、就職してからというもの、忙しすぎて彼女一人作っていないと聞いている。なら、蓮だろうか?だが、信はその考えを打ち消す。自分のことならば、もう少し詳しい文面を蓮は書いてくるはずだ。恐らく、これは蓮の知り合いである「誰か」をかくまってほしいというメールなのだろう。

(なんか…文面から蓮が面白がっている雰囲気がひしひしと伝わってくるんだよな…)

伊達に何十年も幼馴染をやっているわけではない。たとえ、短い4文字の文とも言えない単語だけのメールだって、信にはわかるのだ。
だが、流石の信でも、この4文字からこれから起こりうることを予測するのには限度がある。

「……いいや、買い物行こう」

蓮のメールに翻弄されて、貴重な休日を潰すわけにはいかない。そもそも日時や詳細を欠いた蓮が悪い。信はそう思いたち、改めて財布と携帯をポケットに入れて買い物へと出かけていった。




「ふーっ、買った買ったぁ…」

今日に限って安く売っている品物が多く、ついつい買い込んでしまった信は、公園のベンチで少し休むことにした。持参したエコバックだけでは足らず、大きなビニール袋を一つ貰う羽目になってしまった。しかし、これで来週から再び梅雨に戻っても、雨の中買い物に行く羽目にならずに済みそうだ。

(あ…そうだ。久しぶりにブックマンの所にも寄ろうかなぁ…)

次男の友人の祖父が経営している小さな古書店がこの近くにあるのを信は思い出した。最近、雨ばかりで本を読み漁り、丁度新しい本が欲しいと思っていたところだった。
思いたったらすぐに判断して実行に移せ、が観野家の信条だ。重たいバックとビニール袋を持ち上げ、信は古書店のある方角へと足を進めた。


騒がしい大通りを抜けると、昔ながらのお店が立ち並ぶ、落ち着いた雰囲気の道に出る。そこに、ブックマンの経営する古書店は存在する。店の看板はどこにもなく、ただ営業中の札がぶら下がっているだけだが、読書家ならば、一度は訪れておきたい古書店とまで言われるのは、店主であるブックマンの知識量にあるだろう。世界各地をわたって、あらゆる本という本を読み、そして買い漁った彼の店には、古今東西さまざまな本が立ち並んでいる。この中には、オークションに出せば数十万はくだらない貴重書があるともっぱらの噂だ。

「こんにちはーお久しぶりです、ブックマン」

昔ながらのガラス扉をガラガラと音を立てながら開けると、そこにはすでに先客がいた。緑の髪をした長身の子で、メガネをかけていた。信も、179cmと男性にしてはけっこうある方だと自負していたが、カウンターでブックマンと話していたと思われるその子は、信の身長を軽く越していた。おそらく、2m近くあるだろう。

「おお、久しぶりじゃな。信」
「……それでは、俺はこれで」
「ああ。またなんかあったら来なさい」

すれ違う瞬間、信が軽く会釈をすると、緑の子も少し驚いたが、お辞儀を返してくれた。立ち振る舞いからして、けっこう良いとこのお坊ちゃんかな…と、信はぼんやりと思った。

「すいません、もしかして俺、話の邪魔しちゃいました?」
「いや、会計が済んで、少し世間話をしとっただけじゃ」
「俺は初めて見ましたけど…常連の子ですか?」
「ああ。信と会うのは初めてか……昔からウチの店で本を買ってくれるんじゃが、大抵休日は部活で忙しいようでなかなかこれんようだ」
「そうですか…」

休日にも練習があるということは、まず文化部ではないだろうし、やはり彼の身長からしてバスケ部かバレー部だろうか。信は、先程の子が出て言った扉を見つめてぼんやりとそう思った。

「ところで、今日はどんなようじゃ?」
「最近雨の日が多いんで、小説を何冊か買っていきたいな、と思いまして」
「そうじゃな…こう雨が多いと、本が傷んでしまって敵わんわい」
「そうですよねぇ…食中毒も流行りやすい季節ですし、気をつけないと…」

平積みにされている本を、ぱらぱらとめくって、読みたい本を漁りながら、信はブックマンとの世間話につきあう。

「ところで今日ラビは?」
「神田の練習試合だとかで、ビデオ係に借りだされておる」
「あー…すいません、うちのユウがいつも…」
「別にかまわん。というか、あいつは家におっても店番をサボってばかりで役に立たんから、神田が引っ張り出してくれた方が助かるわい」
「すいません。うちの子感情表現が下手で…っと、じゃあこれください」

レジに置かれた3冊の本を見て、ブックマンは溜め息をついた。

「またお前はマニアックなものを…」
「いやぁ…大抵の本は読んじゃったんで…」
「まあいい…ずいぶんと店に置かれたままになっておった本たちじゃ、買取り手がお前だということがいささか不安ではあるが、ずっとこの古書店に埋もれているよりはいいじゃろ…」
「なんで客の俺がそんな酷いこといわれなくちゃいけないんですか。常連客一人失いますよ」
「お前は何でもかんでも積み上げるじゃろうが!!」

それが重要書類であろうと、貴重書であろうと、食べかけのお菓子の箱であろうと、四角で平面だったらとりあえず積み上げるというのが、整理整頓が出来ない信の悪癖だった。

「いや…でも、最近片付けたばっかりですし………大丈夫ですよ」
「わしの目を見て言え」

気まずくて、視線を店の外に移すと、信の目が不審な動きをする男を捕らえた。

「ブックマン、あれ…」
「ああ、気づいたか。さっきからここら辺をうろうろしておるんじゃ」

昔から、弟たちの行動を注意深く観察する癖がついていたからだろうか、信の眼は、不審な男ともう一人、路地裏に息を潜めて立ち往生している人物を捕らえた。

「……ブックマン、ちょっと荷物預かってて貰えますか?」
「…かまわんが、店の物は壊すなよ」

観野家三兄弟に関わる機会の多いブックマンは、彼らの破壊活動のこともよく知っていたので、事前に釘を刺しておくことを忘れない。信は、苦笑して「今回は手荒なまねはしないから大丈夫」と行って、店を出ていった。





――――まずい。しばらく身を潜めてやり過ごそうと思ったが、予想以上にしつこい。
しかも、先程携帯で誰かと話していたということは、仲間を呼ばれた可能性が高い。狭い路地裏に身を潜めている少年は、小さくため息をついた。……家の前に、パパラッチがいると少年の母からマネージャーが連絡をもらったのが2日前。しばらくホテルに潜伏していたが、その潜伏先のホテルにまで張り込まれたのが今日。ここまでなんとか持ち前の運動神経を使って逃れてきたが、そろそろ体力的にも限界だ。目的地は、もう目と鼻の先なのに。
少年は、悔しそうに被っていた帽子のつばを引っ張った。その時、後ろからぬっとあらわれた手に、口を塞がれた。

「むっ!?」

まずい、見つかった!?そう直感して、急いで抵抗しようとすると、すかさず耳元に小声で話しかけてきた。

「静かに。君、あの男に追われてるんでしょ?」

驚いて暴れるのをやめると、声の主は、口に当てていた手を話して、すっと身を引いた。そこにいたのは、20代前半ぐらいの男性だった。細身で穏やかな笑みを浮かべる彼からは、敵意といったものは感じられなかった。
しかし、警戒を弱めることはできず、少年は険しい眼つきで男に言った。

「……誰だよ、アンタ」
「驚かせてごめんね。ちょっとそこの古書店から、君が隠れている様子と、あたりを不審にうろついてる男が見えたから、追われてるのかなって」

男がそう言った時、ばたばたと足音の人数が増えて来るのが聞こえた。男はさっと携帯を取り出し、路地裏から手だけを出して道路を撮影する。撮影された画像には、先程の男に加え、二人の男が合流していた。

「あらら、増やされたか…ここも危ないかな…。とりあえず、俺がさっきまでいた古書店に行くからついてきてくれる?」
「………アンタがあいつらの仲間じゃないって保証はどこにもないッスけど?」
「別に信じられないなら付いて来なくてもいいよ」

あっさりとそう言う男に、少年は「へっ?」と間抜けな声を上げてしまった。

「こっちも善意の押し売りするつもりはないし、選択権は君にあるんだから、君が選んでいいよ。ただ、俺を信じるにしても、信じないにしても、決断は早くした方がいい。…あいつら、本格的に君のこと探しはじめたよ」
「えっと…こう言う場合、もっとこう…「ここは俺を信じて!」みたいなこと言うんじゃ…」
「初対面の人間を、いきなり信頼する方が難しいでしょ」

Confidence is a plant of slow growth.―――信頼という木は成長するのが遅いんだよ?
男は、その信頼という名の木を、すぐに芽吹かせることのできる人物を一人知っているが、あいにく自分はは彼じゃない。
少年は、少し躊躇った後、意を決したように頷いた。

「……わかった。とりあえずここはアンタを信じるッス。つーか、あんなダサい格好してる奴らとアンタが仲間とは思えないし」
「そう。じゃあ、ついてきて」

そう言うと、男は猫のようにするりと細い路地裏へ入っていった。込み入った民家の間と間を抜けていくと、男は急に立ち止まった。―――目の前が、行き止まりなのだ。目の前は壁、左は民家、右は古びたビルだ。逃げ場などない。

「……行き止まりなんスけど」
「人生の先輩として一つアドバイスしてあげるよ。『自分の通る道が、舗装された道ばかりだと思うな』」
「意味わかんねぇッス!!」
「ところで君、運動神経はいい方?」
「えっ、まあ…」

唐突な質問に、とっさに答えると、男は少年をつま先から頭までじっくり観察し、「なら大丈夫かな…」と呟いた。

「じゃあ、俺の後についてきて」

男はそう言うと、少し助走をつけて、ビルの雨どいを足場にして壁をよじのぼっていった。少年は数秒間口を開けて放心していたが、置いていかれたら大変と、慌てて男の後を追った。
先にビルの屋上についた男は、後から上ってきた少年に手を貸し、屋上に引っ張り上げる。少年が少し上がった息を整えていると、視界の隅に、無造作に置かれたロープがうつった。……もし、先程の質問に良い色の返事を返していなかったら、コレを使って上ることになったのだろう。

「おーホントに運動神経いいね、君」
「どうもッス……っていうか、お兄さんもかなり良いじゃないッスか…」
「うーん…秋田の田舎で習った木登りが、こんな都会のど真ん中で役に立つなんて思ってなかったなぁ」

感慨深いとでもいうようなしみじみとした口調で言う男に、少年はようやく少し笑った。

「ようやく笑ったね、君」
「………黄瀬ッス。オニーサンは?」
「俺は信。……さてと、安全地帯までもう一息だ。道路を挟んだ斜め向かいにある二階建ての古い瓦屋根の家が見える?」
「見えるッス」
「今からあそこに行くから。俺の後についてきて」

言うが早いか、信はビルの手すりの上に立つと、隣のビルの屋上に飛び移った。その後も、ビルの屋上や民家の屋根など道なき道を渡り、信と黄瀬はようやく目当ての家のベランダにたどり着いた。

「ようやく…到着ッスー…」
「おつかれー。さっ、靴脱いで早く入って」

信に促されて部屋の中に入ると、そこはどうやら居間のようだった。

「ここ、オニーサンの家?」
「いや、知り合いの家。……ちょっと待って」

信はそっと居間の襖を開けて、階段下の古書店の様子をじっと見つめていた。…どうも、空気がおかしい。不審に思って黄瀬も信の側に来て耳をすませると、下の会話が聞こえてきた。

「い…音した…ね?」
「頼み…すよ、おじいちゃん。ね?黄瀬君を……だして…せんかね?」

黄瀬はぞっと戦慄した。
まさか、一軒一軒聞きまわっているのか。しかも、黄瀬たちがベランダから入ってきた音を聞かれてしまったらしい。

「うっわー…ねちっこい…」
「ど、どうしよう…と、とりあえず俺、ここから出っ…」
「ああ。大丈夫大丈夫。ちょっとここで待ってて」

信はそういうと、居間を出て階段を下りていってしまった。
その間にも、下の階での会話は聞こえてくる。

「ねーお願いしますよおじいちゃん。俺らもコレが仕事なんですってー」
「だから知らんといっとるじゃろう」
「でもさっき二階から音がしましたよね?匿ってるんじゃないですか?」
「これもさっき言ったが、二階にいるのはあんたらの目当ての子でなく、ワシの孫じゃ」
「またそんなご冗談をー…って、おい、誰か降りてくるぞ!」

階段を下りてくる音に反応して、男がカメラを構えて待ち構えると、階段から降りてきたのは、男たちの目当ての子ではなく、見ず知らずの男。

「おじいちゃん、騒がしいけどなんかあったの?」
「おお、信…いや、この二人が急に店に押しかけ」
「ねえ、君。この付近で黄瀬涼太君を見かけなかった?ホラ、モデル雑誌の表紙によく写ってる彼!」
「なんか知ってるなら、情報提供ってことでお金あげるよ!」

信は、鼻息の荒い二人の男に眉をひそめ、鬱陶しげに溜め息をついた。

「うちはただの古書店です。そんな有名人がいるわけないでしょう。わかったら、お引き取り願えますか」
「ちょっと待って!じゃあ、証拠に二階を拝見―――」
「あなた方は警察か何かですか?いきなり店にやってきて、本を買うわけでもなく人探し?そのうえ、家宅捜索?―――身の程を弁えろ」

その相手を威圧する声に、上で聞き耳を立てていた黄瀬も、思わず全身に鳥肌が立った。さっきまで、自分に笑いかけていた人と同一だと思えない。

「……どうしても二階を見たいというのなら、令状を持ってもう一度来てください。そしたら今度はこちらが営業妨害として訴えさせていただきますから」
「……っ、チッ!おい、行こうぜ」
「あ、ああ…」

信の気迫に気圧された男たち二人は、足早に店から出ていった。
男たちの足音が遠くへ行ったことを確認すると、ブックマンは疲れたように溜息を吐いた。

「まったく…なんなんじゃあの若造どもは」
「あはは、肩叩きしよっかーおじいちゃん?」
「やめい。気色悪い」
「そんな本当に気色悪そうに見られると俺も傷つくんですけど……まあ、いいや。もう下りてきても大丈夫だよ……黄瀬……涼太君?」

ガラス越しにさっきの男たちがいないことを確認し、信は二階にいる黄瀬を呼んだ。
黄瀬は、なるべく音をたてないように、階段を下りてくると、帽子をとって、ブックマンと信にお辞儀をした。

「お騒がせしてしまってもうしわけないッス」
「別にかまわん。騒がしいのには慣れておる」
「それにしても、ずいぶん追われてたね。何かあったの?」
「実は……」

黄瀬は、ここに来るまでの経緯をかいつまんで二人に説明した。

「それで…いま、雑誌の撮影で一緒だった方が、知り合いの家にしばらくいていいと言ってくださって…俺はそこに向かっていた途中だったんス…」
「うわー…必死だなー…マスコミ業界……」

蓮についていたパパラッチを夏と一緒に何度か撃退したことのある信も、その執着ぶりを思い出してげんなりとした。あの気味の悪さは、ちょっとしたストーカーとどっこいどっこいだ。

「どこに向かう予定だったんじゃ?」
「えっと、ここッス!!」

黄瀬はポケットにしまっていた住所の書かれた紙をブックマンに見せた。ブックマンは、しばし沈黙した後、信に声をかける。

「……信、お前も見てみろ」
「え、そんなに遠い所なんですか?」
「いいから見てみい。……お前もよく知っておる所じゃ」
「え?………んん!?」

信はかっと目を見開いて、何度も住所を見た。確かに信もよく知る住所だ。というか、ここは。

「俺の部屋!?」
「やっぱりそうじゃったか」
「えぇっ!?じゃあ、あなたが『観野信』さんッスかぁ!?え、でも、八神さん事前に連絡入れとくって…」
「ああ、来たよ…来たとも!連絡はね!!メールでたった4文字『かくまえ』って来ただけでそのご一切連絡なし!!」
「えーーーーーーーっ!?じゃ、じゃあ、信さん今日俺がマンション来ること全然知らなかったんスか!?」
「知らないよ!!だから、ふつうに買いものして調子乗って大量買いしちゃったんだよ!!もうどーすんの!大量の食糧抱えながら敵に見つからないように自分の家に帰るとか……!」
「まあ…周囲をうろついておる男どもは先程信が睨みを利かせたし、もうしばらくしたら離れるじゃろ……それより、匿う期間はいつまでなんじゃ?」

それは、信も是非とも聞いておかねばならないことだった。だが、肝心の黄瀬は、頬を掻いて曖昧に笑った。

「えーっと…それは俺にもわかんねぇッスわ…基本、向こうが諦めてくれなきゃ俺も実家帰れないし…」
「つまり…3日以下の場合もあれば、1ヶ月以上の可能性もあると」
「ハイ……」

蓮―――――――――――――――っ!!!!!
信は心の中で思いっきり叫んだ。なんでこんな重要なことを『かくまえ』の四文字で送ってきたんだオノレハ。

「えっと…やっぱり、無理…っすかね……?」

もうすでに諦めたように笑う黄瀬を見て、信は溜め息をついた。

「……君の衣服や私物はどうするの?それから学校は?」
「あ、明日マネージャーさんがこっちに届けてくれる予定ッス。学校の方は少し遠いッスけど…通えないわけじゃないんで」
「そう。……わかった。しばらく君を預かるよ」
「え…っ」
「どうせ広すぎる部屋だし…君一人くらいなんとかなるよ」
「い、いいんスか!?」

信は苦笑まじりに頷いた。……あんな捨てられる前の子犬のような顔されたら、放っておけるわけがない。

「じゃあ、改めてよろしく。黄瀬君」
「こちらこそよろしくお願いすます!」

こうして、信と黄瀬の奇妙な同居生活が幕を開けることとなった。


++++++++
無事にマンションに辿り着いてから蓮に抗議しました。

黄瀬「蓮さんひどいじゃないッスか!!なんでちゃんと信さんに連絡入れてくれなかったんスか!?」
蓮『連絡なら入れてやっただろう。信の奴携帯見てねぇのか?』
黄瀬「たった四文字の単語送っただけじゃ連絡入れたとは言えないッスよ!?」
蓮『バッカ。俺がただの善意で動くと思ってんのかよ』
黄瀬「ええええええええええええ!?」
蓮『今日は久しぶりの晴れ間だし、信なら絶対買い物に行くってことは俺にでもわかった。だから、お前の運を試したのさ。いない可能性が高くても、信に会うことが出来たならお前の勝ち。会えなかったらそれまでだ』
黄瀬「ヒッド!!あんまりッスよーーーー!!」

黄瀬じゃいくら会話しても蓮に遊ばれるだけだと判断した信は、潔く自分に代わるよう黄瀬に言った。

信「……蓮、まずお前は俺と黄瀬君に謝ることがあるだろう」
蓮『は?なんで善意で手を差し伸べてやった俺に…』
信「―――蓮、怒るよ?」
蓮『………チッ、あーハイハイ。連絡を怠って悪うございました。これでいいんだろ?』
信「ぬるい。社会人なら菓子折りの一つも送ってこい!銀座の某有名ケーキ屋のケーキ10個!!」
蓮『それ単にテメェが食いたいだけだろうがぁ!!』
信「社会人なら誠意を示せ!!」
蓮『教育者なら手本を示せ!!』
黄瀬「あ、あのー…信さん…?」
信「じゃ、近日中に送ってね。ケーキ15個」
蓮『ちょ、テメ、何増やして―――』

ピッ

信「えーと、それで何?黄瀬くん」
黄瀬「えっ、いや…………何でもないッス…」

俺とガングロ

※凍て花×黒バスパロです。


部活を終えた緑間と高尾は、秀徳の近くにある大学の門をくぐった。土曜日の夕方のせいか、人は少なく、あまり大勢の人の視線を集めずに、二人はリアカーを駐輪場へと止めた。

「すっげー。俺大学とか来るの初めてだわ。やっぱ広いし綺麗だなー」
「……この大学は都内の中でも比較的新しいからな。スポーツでは剣道が有名だが、他の部活や勉学にも力を入れているのだよ」
「へぇー…じゃあ、ラビさんと神田さんがいる史学科は?」

高尾は携帯を開いて、メアドを交換したラビに、到着したことを知らせるメールを打ちながら隣でおしるこを飲んでいる緑間に尋ねた。

「……かなり高い偏差値だったな。秀徳からでも入れる学生は限られてくるだろう。ここの史学科の試験問題は、かなりマニアックなものが多いのだよ」
「マジで?うっわー…頭良いんだな…神田さんとラビさん…」
「いやいや、ユウは英語と歴史が得意なだけさ。理数系なんかもう絶望的。それにスポーツ特待生だから、少しぐらい成績悪くても単位くれるんさー」
「うぉっ!?いつからそこに!?」
「部活終わる時刻は聞いてたから、そろそろ来るかなーって、すぐそこの休憩所で待ってたんさ」

来るまで飲んでいた缶コーヒーをゴミ箱に投げると、ラビは剣道場のある方向を指さして「こっちさ」と二人に道案内を始めた。

「ラビさんは一般で入ったんですか?」
「俺は推薦さ〜」
「すっげー!じゃあ、めちゃくちゃ頭良い!?」
「いや、記憶力が良いだけさ。一度見たもんは大抵忘れねぇし。っていうか、真ちゃんとタカちゃんだって秀徳なんだから頭良いだろ?」
「いやいや〜ラビさんほどじゃねぇっスよ〜」

ラビと高尾は息が合うのか、二人で会話を続け、緑間はその後を追う形になった。

「っていうか、神田さんも朝からこんな時間まで練習やってんスね」

夕方とはいえ、今はもうあと少ししたら街灯の明かりが付きそうな黄昏時だ。

「いんや。今日は監督の方が用事あるとかで午前で終わりなんさ、本当は」
「え、じゃあ……」

その時、剣道場から聞こえてきた乾いた音に、高尾はふつりと言葉を切った。中をのぞいてみれば、そこには、袴姿で竹刀を振う神田がいた。

「すげぇ……」

姿勢一つとっても、まるで付け入る隙がない。声をかけることすら躊躇われるような気迫が漂っていた。そして、その一心不乱な後ろ姿は、緑間にとても酷似しているように高尾は感じた。
ラビは、神田の練習にすっかり見入ってしまった二人を見て、彼の弟であり、自分の小さな友人が言っていた言葉を思い出す。

―――ユウ兄はね、練習している時が一番綺麗だと思うんだ。きっと本人に言ったら、汗ダラダラ流してる姿のどこが綺麗なんだって怪訝な顔されるんだろうけど、やっぱり俺は、ユウ兄は努力している時が一番凜としてて好き。

……そうだな。俺もそう思うさ……優人。
口を開けば辛辣な言葉ばっかで、怒るとすぐ手が出て、素っ気ない態度ばっかとるけれど、そんでも、ユウの周りに人が居なくならないのは、こういうユウの姿を認めてくれる人がいるから。

「うわ……今のアレすごくね?真ちゃん」
「…………ああ」

そして今、新たに神田のひたむきな姿に魅入った者が二人。
……どうやらこれから、神田の周りは賑やかになりそうだと、ラビは楽しそうに笑みを刻んだ。



それからしばらくして、神田が出入り口付近に立ち止まっている3人の方向へ振り向いた。

「さっきからそこにつっ立ってなんか用か」

どうやら、後ろを向いていても人が来ていたことは察知していたらしい。
口下手な緑間に変わり、高尾が説明に出た。

「いや、お借りしてた刀返そうと思って。な、真ちゃん」
「……ありがとうございました」
「別に」

緑間の礼に素っ気なくそう返すと、神田は貸していた日本刀を受け取った。
お互い感情を表に出すのが苦手らしい。

「そんで、今日は世話になったんで、真ちゃんが食事でもどうかって。あ、もちろん奢りッスよ?神田さん何か食べたい物とか」
「天ぷら蕎麦」

即答だった。しかも今までにない食いつきだ。

「ぶはっ!どんたけ天ぷらと蕎麦好きなんですか神田さん!!」
「うるせぇ。日本人といえば蕎麦と天ぷらだろうが」
「……その意見は色んな人から総スカン食らうからやめた方がいいさ…ユウ」

特にうどん派の彼の長男からは猛反発を食らいそうだ。三男は冷静に「米はどうした」とでも言ってきそうだな…と、ラビはぼんやり思った。

「プククク……俺、神田さんのそーゆー我が道貫き通す所好きですよ」
「テメェに好かれても嬉しくねぇよ。むしろなんか腹立たしいからやめろ」
「うわ、ひっでぇ〜」

コミュ力高っけぇなぁ…タカちゃん…と、ラビは感じ入る。
このコミュ障神田と会話すると、大体の人は怒るか脅えるかのどちらかだ。こんな風に笑って流せる人材というのはなかなか希少なのである。

「んじゃあ、神田さんのリクエストとって、駅前のファミレスにしよっか、真ちゃん。あそこ和食メインに扱ってるし」
「俺は外食などほとんどしないのだよ。だから、ファミレスの位置はよくわからん」
「任せとけって〜俺がバッチリ案内しちゃる!」
「んじゃあ、今日は俺もそこで飯食って帰るさ〜。ユウ、早く着替えて来いよ」
「ああ」

剣道場の奥にあるシャワー室へさっと入っていく神田の後ろ姿を見て、ラビは堪え切れないといったように吹き出した。

「ブッ!ククククク…ユウ、めっちゃ上機嫌さ」
「えっ!?上機嫌!?あれで!?」
「表情はあんま変わってねぇけど、周りのオーラに花が飛んでたさ…真ちゃんが蕎麦おごってくれるつったから。ユウは奨学金とバイト代で生活費をなんとかまかなってるから、好物とか滅多に食えないんさー」

緑間と高尾は解せないといったように、眉間にしわを刻んだ。だが、ラビはその表情に、答えを返さず、苦笑をするだけだった。
これ以上は首を突っ込んで欲しくないということだろうか?と高尾は解釈した。

「まだそこにつっ立ってたのか、お前ら」

シャワーを浴びて、私服姿に戻った神田が、何してるんだ?と尋ねるように首をかしげた。

「いや、ただちょっと世間話してただけさー」
「というか、大学っていいっすねー。シャワー室ついてんだ」
「剣道の防具は基本洗えねぇから臭ぇんだよ」
「……やけに早かった気がするんですが…」
「ああ。ユウはシャワー浴びんのめっちゃ早い。いつも5分とかからねぇんさ」
「「軍隊か!!」」

奇跡のような確率で、緑間と高尾の声がそろった。
だが、これだけ神田が近くにいるというのに、汗の匂い一つせず、ほのかに石鹸の香りが漂っているということは、真実なのだろう。

「うるせぇな…剣道部のシャワー室は数が少ねぇんだよ。そんな状態で長浴びなんかしたらマジで迷惑になんだろうが」
「神田さん…」
「ユウ…成長したさね…っ。まさかユウの口から他人に対する思いやりの言葉が聞ける日がくるなんて…っ!これも信と優人の教育の賜物さねっ!!」
「ぷっ…お、俺も今ちょっと胸がトゥンクしましたよ…!ブフェッ!」
「目玉抉りだすぞテメェら…!大体、信はともかく、弟の優人にまで教育された覚えはねぇ!!」
「いやいや、ユウの人格矯正が成功したのは、絶対優人がいたからだって」
「んなわけねぇだろうが!!」

素直じゃねぇなぁ、とラビは内心で苦笑する。本当は神田だって自覚はしているはずだ。挫折や絶望を味わうたびに、幾度となく優人に助けられてきたということを。そうでなければ、優人に定期的に連絡を入れるなんてこと、神田がするはずない。

「チッ!くだらねぇこと言ってねぇでさっさと行くぞ!ラビ!」
「へいへい」

憤然と歩きだした神田の後を追って、ラビも少し大股で歩いてその隣に並ぶ。そして、不機嫌そうな神田の横顔を盗み見て、バレないように微かに笑った。
ホント、変わったな、ユウ。
昔は、お前に名前で呼ばれる日が来るなんて、夢にも思ってなかったさ。



 

一行が駅前のファミレスに移動すると、すでに店内は客で混雑している様子が、窓越しからうかがえた。

「あっちゃー…土曜だから混んでんなーやっぱ」
「でも、まだ夕食には早い時間帯だし、今はいればすぐに空くと思うさ」
「なら、さっさと店に入るのだよ…………っ!!」
「ん?どしたの真ちゃん…って、えっ!?」
「げっ!!」
「あれ?ミドリン!?」

入り口前で鉢合わせしたのはなんと、桐皇学園に行った、緑間のかつてのチームメイトである青峰大輝と、マネージャーだった桃井さつきだった。

「なんでお前らがここにいるのだよ!!」
「っせーな。さつきの買いものに付き合わされたんだよ…」
「というか、ミドリンが外食なんて珍しいねー」
「それは…っ」
「いやー今日真ちゃんがちょっと世話になった人達がいるんで、夕食でも奢ろうってことになったんですよ」
「あ、ミドリンのチームメイトの高尾和成君だよね?敬語使わなくていいよー同い年なんだし」
「あ、マジで?んじゃあ、遠慮なく」
「つーか、お前が世話になった奴って、そっちの後ろにいる奴らか?」

青峰の言葉に、桃井も高尾と緑間の後ろにいる二人に視線を向け、息をのんだ。毎月発売されるスポーツ雑誌を隅から隅まで読んでいる桃井には、そこ顔で、一目で誰かわかった。

「か、神田ユウさん!?」
「あ?知り合いか?さつき」
「そんなわけないでしょっ!!」

毎月同じ雑誌を買っているはずの青峰は、さっぱり覚えていないようだ。どうせ、バスケの特集ページしか見ていないのだろう。

「神田さんは今、剣道界で神童だって言われてるもの凄い人だよ!?」
「剣道のことなんて知るかよ」
「もう!」
「えーっと…この二人は真ちゃんの知り合いなんさ?」

すっかり会話に置いて行かれたラビが、首をかしげながら尋ねると、桃井は自己紹介もまだだったことに気づいた。

「あっ、すいません!中学の時、ミドリンと同じバスケ部のマネージャーやってた桃井さつきって言います!こっちが青峰大輝って言って、ミドリンの元チームメイトです」
「俺はラビさ。よろしくーそんでこっちがさっき自己紹介してもらった神田ユ―――」

神田の名前を最後まで言い終わることなく、ラビは口を閉ざしてしまった。
ラビだけではない。緑間も高尾も桃井も―――本人である神田でさえ、言葉を失っていた。

「ちっ、やっぱ男かよ」

残念そうにそう呟く青峰の手が触っているのは―――神田の胸板。どうやら、神田の性別の判断が出来ず、かなり思い切った行動に突っ走ったらしい。
ヤバイ…!ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!いち早く我に返ったラビの顔からは血の気が一気に引いて真っ青になり、冷や汗が流れた。
おそるおそる神田の顔を横眼で見てみると…………見なければよかった。そう後悔するような、人様に向けちゃいけない禍々しい顔つきをしていた神田がいた。

「青峰君!?」
「あー…すっげぇ美人だし、顔は好みなんだけどなーちっ、マジで男かよ」
「ぎゃぁぁぁぁああああ!!あ、あああああ浅黒君!!早く逃げるさーーーーーーーーー!!」
「あん?」

だれが浅黒だと抗議を上げようとした瞬間、青峰は自分の体が宙に浮かんだのを感じた。
80kg以上ある自分の体が、地面を離れて浮いていることが信じられず呆然としている間に、体はアスファルトに叩きつけられ、その衝撃により、青峰の記憶は途切れた。

「青峰君!?」
「ちょ、ユウ、おま…素人さんに大外刈りとか…!つーか、浅黒君白眼向いてるし!!」
「―――殺す」
「ちょっとユウ待ってーーーーー!!」

ラビは決死の覚悟で、神田を後ろから羽交い絞めにした。

「ユウ!ブレイク!!それ以上お前が攻撃したら、浅黒君マジで死ぬ!!」

しかも間の悪いことに、今日神田は真剣持ちだ。キレたら場所もわきまえずに抜刀しかねない。

「あ?殺すつってんだから死なすんだよ。このガングロクソガキの全身の皮剥いでやる…!!」
「ダメだって!!つーか、スタンド出てる!!鬼出てる!!」

ラビだけでなく、緑間と高尾と桃井にも、神田のバックに鬼が見えていた。なんだあれ、気迫というか殺意が見せる技なのか。

「うわぁ…神田さん怒るとマジで怖ぇ…俺、あの人なるべく怒らせねぇようにしよ…」

ある程度からかうのは、緑間同様楽しいだろうと思っていたが、緑間より遥かに短気で攻撃的だった。さっきの見事な大外刈りを見た後で、神田をからかいたいとは思えない。下手に突けば、今地面に倒れている青峰と同じ未来が待っている。

「って、真ちゃん何やってんの?」

先程まで、高尾と同じように唖然としていた緑間も、どうやら落ち着いたらしい。だが、なぜか携帯を取り出して、失神している青峰を写真に収めている。

「こんな無様な青峰はなかなか見れないのだよ。黒子や他の帝光メンバーにもメールで送ってやらねば」

そう言っている間に、緑間はさっきの写真をメールに添付してかつてのチームメイトに送ってしまった。
あとで、返信のメールを見せてもらおうと思っている高尾も大概である。

「しかし…これではいつまでたっても店に入れないのだよ。高尾、なんとかしろ」
「俺!?いや、そこはフツーラビさんなんじゃ…」
「あの人は、押さえつけるので精一杯なのだよ」
「えぇ〜…んじゃぁ…効くかどうかわかんねーけどやってみるわ」

高尾は頭を掻きながら、神田に近づくと、大きく息を吸っていった。

「神田さん!!―――天ぷら蕎麦(鎮めの呪文)!!」

瞬間、あれほど怒り狂って暴れていた神田が、ぴたりと動きを止めた。そして、ゆらりと幽鬼のような顔を高尾に向ける。内心では怖ぇええええ!!と高尾も叫んでいたが、ぐっと勇気を振り絞ってその場にとどまった。

「ここで暴れちゃったら飯くえないじゃないっすか〜。ココは一つぐっと怒りをこらえて、早く店に入りましょうよ!!」
「…………」

数秒間の沈黙の後、神田は舌打ちして店の中へと入っていった。それを見て、高尾はどっと息を吐いた。神田に声をかけてから息を吐くまでの間、生きた心地がしなかった。

「タカちゃん…!よくやってくれたさ!!」
「ラビさん〜〜〜俺生きた心地がしなかったですよぉぉおおおお!!」
「そんなん俺もさぁぁあああああ!!」

固い握手をかわす二人を、緑間は冷めた眼つきで見つめて溜め息をついた。

「なにをしているのだよ。さっさと店に入るぞ。桃井、青峰もしばらく起きそうにない。かといって、お前が青峰を運んで帰宅するのは無理な話だ。目が覚めるまで、この店に入っていたらどうだ?」
「あ、うん。そうだね…元々ここで夕食食べる予定だったし…」
「ごめんな〜桃井さん。ユウの奴ホント手が早くて…」
「いえ、原因は青峰君ですし…」
「自業自得なのだよ。女性に対してやったら逮捕モノだ」

こうして、桐皇のエースとマネージャー、秀徳のエースとその相棒、そして、大学生の神田とラビというじつに奇妙な6人組での食事会が幕を開けた。



++++++++

おまけ

緑間からのメール
From:緑間
Subject:無題

討ち取ったのだよ(`・ω・´)キリッ

【画像】



みんなからの返信

From:赤司
Subject:Re:

でかしたよ真太郎www

偉大なる緑間大尉に敬礼!(`・ω・´)ゞ

From:紫原
Subject:Re:
ミドちんすげーww
青ちん白眼むいてるwww
m9(^Д^)プギャー

From:黄瀬
Subject:Re:

(゚Д゚≡゚д゚)エッ!?
どどどどどどういうことッスかぁ!?
緑間っち青峰っちに何か恨みでも!?


From:黒子
Subject:Re:

( `・ω・ ´)グッъ
青峰君は地黒だから気絶しても顔色があんまり変わりませんねwwwww


From:緑間
Subject:Re:Re:

いや、正確には俺ではない。俺の知り合いの方が討ち取ったのだよ。
本人の許可が取れたから画像をのせるのだよ

【画像】

 

 

「え、これ…」

―――――観野先生?
緑間から送られてきたメールの画像に写る男性に黒子はぽつりとそう呟いた。

拍手レス

・ジンさん≫紫原「赤ちんたちに動画おくんの?別にいいよー」

優人「返信来たら俺にもみして」

紫原「うん。優人の方もみしてねー」

優人「いいよー。猪とかはねー…森で遭遇して突進してくる奴らとかを叩きのめしてたらいつの間にか攻撃してこなくなったんだよね。あとは、たまに神域に琵琶弾きに言ってるせいかなー。普通、音がしたら寄ってこないはずなのに、音楽聴くと寄ってくるんだよね、神域の動物たちは」

柳元「いやぁ。優人君はこっちきた当初から山遊びにハマっちゃってねぇ…目を放すとすぐ山に行っちゃうし」

優人「いろんな動物がいてすごく新鮮だったんだよ」

氷室「どんな動物がいるんだい?」

優人「えーっと、猪でしょ、タヌキでしょ、狐、兎、鹿、ハクビシン、熊」

福井「かなりそうそうたるメンバーだな。オイ」

劉「っていうか、ガキが1人で出歩いていい山じゃないアル!!」
優人「大丈夫。奥深くに入らなければ。俺も小学校の低学年の頃は山の入口あたりで遊ぶだけだったよ」

柳元「小5になって私が解禁令だしたら、まっさきに飛んで行ったけどね」

優人「……だって…きょーみあったし…」

紫原「優人ー返信来たー」


赤司:将棋に向かってレモンスカッシュを吹いてしまった。僕の将棋の駒たちが酸の海に浮かんでいる。どうしてくれる。
緑間:しるこを返せww一体何しているのだよww
黄瀬:横隔膜引きつるほど笑ったッスwwwというか、最初登場した子たち可愛かったっすね!紫原っちのチームメイトの妹さん?
青峰:腹が!腹がぁ!!www
黒子:中二病で我を忘れているんだわ!!

アレン「さ、最後の二人が秀逸過ぎます…っ!」
福井「酸の海……!ぶはっ!!」
紫原「次優人の番〜」

夏:こんな時、どういう顔したらいいか分からないの……
信:笑えばいいと思うよ

神田:ラビ、お前にあいつらが救えるか
ラビ:分からない……けど、共に歩むことならできる!

全員「「ブッハァ!!!」」

連携プレイで攻めてくる兄貴コンビ

俺と黒歴史

ようやく仕事を終えて、信は急ぎ足で体育館に向かっていた。
千博にメールで今どこにいるのかを尋ねたところ、体育館という返事が返ってきたのだ。嫌な予感しかしない。ほとんど競歩のような速さで体育館につくと同時に、どっと歓声が上がった。

「うぉっしゃー!ちーちゃんナイスリバン!!」
「これぐらい…どうってこと…ない」
「ちーちゃん…っ!イケメン!抱いて!!」
「断る」
「否定早っ!!」

どうも、3on3の練習に混ぜてもらっているようだった。スコアボードに目を移すと、23対31夏たちの方がやや優勢だが、実力はどっこいどっこいといったところだろう。特に夏はスタミナが落ちているだろうし、あと1分経ったらどうなっているかわからない。
……っていうか…

「なんでバスケしてんだよ……」

信は額に手をあてて天井を仰いだ。…もう、こいつら置いて帰りたいな…。

「あ、観野先生!!」

入り口で立ち止まっていた信を発見して、小金井が叫んだ。その叫びに、全員の動きが一度止まり、わっとすぐに信へ集まってきた。

「えっ、なに?」
「観野先生!握手お願いします!!」
「え、は、えっ?」

差し出された日向の手をとりあえず握ってみたが、何が何だかさっぱり状況がつかめない。

「えっと…日向君、これどういう状況?」
「いや、先生があの伝説の『御三家』の一人で同じポジションだって聞いて」

久しぶりに聞いた最悪の単語に、信は握手をしたまま固まった。なんで、彼がそんな10年以上前のことを知っている。なんで、隠していたのに……―――そんなの、答えは一つしかない。

「……夏」
「やーっと来たかぁ、はよ、日向君からゼッケン貰い。久しぶりに『御三家』勢ぞろ…」

刹那、夏は綺麗な放物線を描いて宙を舞った。信の膝蹴りが腹部にヒットした瞬間に吹っ飛ばされたのだ。
コートの中央に大の字で倒れていく夏に、選手たちは口をぱかっと開けて見ていることしかできなかった。
信は、倒れた夏につかつかと歩み寄り、その胸倉を掴んで一言。

「殺す」
「ちょ、信さん!ゴールデンタイムに放送できんような顔になってはるんですけど…!!」
「深夜枠にでも移ればいい。つーか、俺の生徒に何言ってんの?その口なんなの?二度とその口から余計なことが漏れないように熱した鉄で溶接してやろうか…」
「いやいやいやいやいや!!信さん!!話しあおう!?ここは民主的に話し合おう!?ちょ…関節技だけはやめてぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!」

夏の悲鳴が体育館中に木霊した。よく響く体育館内で、夏の絶叫は何度の反響して、阿鼻叫喚のようだった。

「え…っと……どういうことッスか?千博さん…」
「信は…『御三家』と、呼ばれるのが……大嫌い…」
「えぇっ!?」

ちょうどそこで、夏の断末魔が途切れた。どうやら制裁が終わったらしい。……手に若干付いている赤いものを見ないようにしながら、火神は信に尋ねた。

「なんで『御三家』って呼ばれんの嫌なんだよ?」
「火神君、敬語」
「……ですか」

敬語を見逃してくれるのは、あくまで学校外であって、学内では許してくれないらしい。
信は、忌々しげに夏を睨みつけ、憤然と溜め息を吐きながら言った。

「だって、御三家って…あまりにも大げさすぎる通り名だし、なんか中二病臭がぷんぷんするし…正直そこまで強くないよ。今のキセキの世代に比べたら、もう全然」
「先生も、キセキの世代はご存じなんですか?」
「今あそこで撃沈してる馬鹿から聞いてね。動画検索したらヒットして観てみたんだ。黒子君、キセキの世代の一人だったんだね。驚いたよ」
「いえ、僕はあくまで彼らのサポート役でした。本当に凄いのは彼らの方です」

普通に黒子を認識している信に、部員たちは仰天した。ビデオに映っていても影が薄い彼を良く認識できたな、と…。

「あの子たちに比べたら、平凡なバスケだったよ。……シルク・ドゥ・ソレイユみたいな空中パフォーマンス披露してる子とかいたし」
「ああ、確かに…彼のプレイはサーカス観に来たんだかバスケ観に来たんだかわからなくなるってよく言われます」
「うん。先生も一瞬どっち見てたかわからなくなりました」

ボールの存在がなければ、完璧にサーカスと勘違いしていただろう。とにかく、自分たちのバスケとは、色々違っていた。

「……聞いて、いいですか?」
「うん、何?」
「先生は、なんでバスケをやめてしまったんですか?」

『御三家』が活躍したのは、あくまで中学時代だけだ。それもかなり短い期間に突如現れ、煙のように消えていった。だからこそ、伝説扱いされることも多いのだ。

「……んー…別にバスケを嫌いになったわけじゃなよ。ね?」

千博に視線を向けると、微笑みながら静かに頷いた。

「ただ…上下関係の中で…バスケをするのが…嫌になった、だけ…」
「俺らの中学は先輩風吹かせたがる奴が多かったからなぁ…下級生はみな下僕やったわ」
「なんだ。もう復活したの?もっと強く抉ればよかった…」
「恐ろしいことボソッと言わんで下さい」

肩を組もうとする夏の腕を信はそっけなく払いのける。本当に親友なのだろうか、と部員たちは心の中で疑問を抱いた。

「俺達の…学校は、上下関係が厳しくて……上級生たちは、一年でスタメンに選ばれた俺らを…よく、思ってなかった…」
「風当たりも厳しくてな。バスケ自体は楽しかったんやけど、後輩いびりがきつくてなぁ…あの頃はよう耐えたと思うわ」
「あるんスね…そういう学校も…」
「うん。まあ、昔のことだけどね。それで、ある事をきっかけに、2年の秋に3人とも辞めちゃったんだ」
「えぇっ!辞めちゃったんですか!?」
「いろんなものが積もり積もって限界やったからな。まあ、辞めてからも後輩の指導はやっとったで?そしたら、あいつら全国行きよった」
「すげーーーーー!!」
「俺らも、嬉しかった…な」
「ああ。そんでその子らがそれぞれ違う高校に入って、チームを引っ張った結果、京都にバスケが強い三校が出来あがったって感じやな」

それもキセキの世代の影響で、均衡が崩れかけていることは、三人とも察していることだった。

「だから、本来なら、俺達の後輩たちこそが『御三家』って呼ばれるべきなんだけどね」
「あいつら、よう懐いてたからなぁ…全国行った時も『指導してくれた先輩のおかげです!』なんて言いよって……」

おかげで、自分たちが『御三家』などと大それた名前で呼ばれるようになってしまった。

「……高校に行ってからは、それぞれがやりたいことを見つけて、それに向かって励むようになっちゃったからね……」
「でも…たまに…ストバスに…出てた」
「せやな。まあ、バスケは今でも好きやで?俺ら」
「そうなんですか…」

黒子は、どこか嬉しそうだった。確かに部活としてのバスケはやめてしまったが、彼らは今でもこのスポーツを好いている。それに対してどう接していくか、自分たちとは少し形が違うだけなのだろう。
夏は、黒子の頭をわしゃわしゃと撫でると、リコに向かって一つの名刺を差し出した。

「そんなわけで、頑張る君らにプレゼント。―――わたくし、こういう者です」
「……え?……○×製薬会社!?」
「ウッソ!!超大企業じゃん!!」
「俺はそこでお薬作ってます〜。スポーツ医学は畑違いやけど、知り合いけっこうおるから、そこに書いてある番号に電話して俺の名前出せば、医薬品その他諸々安くしてもらえると思うわ。まあ…何人かモルモッ…検証実験に声かけられるかもしれへんけど」
「大丈夫です!どんとこいです!!」
「「カントクーーーーーーーー!!」」

本人たちの意思を無視して、この中の何人かをモルモットに提供してしまった。そして、可能性として高いのは、スタメンではない一年3人組である。

「じゃあ…俺、も……」
「へっ?」
「ああ、ちーちゃんの実家は漢方売っとるんよ。ネットでもお取り寄せ可能やで」
「祖父が…経営して、いる……俺の、名前出せば……安くするよう、言っとく…」
「いいんですか!?」
「バスケに青春を捧げる青少年らに俺らが出来ることなんてこんくらいやし、遠慮なくもらっときー。そのかわり、中途半端な結果で終わったらあかんで?……そんなことになったら、この信センセーが君らを叩き潰しに来るからな……」
「あはは、ヤダなぁ、夏。俺が可愛い生徒にそんなことするわけないじゃない」

その笑顔に、全員の背筋が寒くなったのはなんでだろうか。
物理的には教師という立場上何もしてこないだろうが、精神的に恐ろしいことをしかけてくるかもしれない。そんなことを思わせる笑みだった。

「ありがとうございます。お二人から貰ったものを役立てて、必ずや全国優勝を果たしたいと思います。―――さぁ、そうとなったら練習再開よ!みんな!!」
「「おう!!」」

再びコートに帰って、ボールを手にとる選手たちの背を見つめ、3人はありし日々の自分たちを思い出し、目を細めた。
梅が雨に打たれて実り、雲が晴れたら、もう夏はすぐそこだ。


+++++++++
おまけ

その日の帰り道

信「あれ?優人からメール来てる」
夏「…ん?なんや、ムービー付きやん」

信が再生ボタンを押すと、画面には優人とアレンと一緒に、バスケ部のチームメイトと思しき人々が映った。

優人『ゆめだけど!』
アレン『ゆめじゃなかった!』
優人『ゆめだけど!』
アレン『ゆめじゃなかった!』

夏「あらやだかわいい」
信「あ…これ、トトロの庭に植えた木の実が芽吹いたシーンだ」
夏「あーなるほど…なんか和むなぁ、この映像」
信「トトロのシーンセレクト再現かな?」

優人『メイのバカっ!もうしらない!!』
アレン『うわぁぁぁああん!!お姉ちゃんのバカぁぁぁあああ!!』
優人『俺こんなデカイ妹もった覚えねぇよ!!』
アレン『仕方ないじゃないですか!あみだなんですから!!』

夏「ぷくく…アレンがメイちゃんで、優人がサツキちゃんか……優人、サツキちゃんのモノマネうまいもんなぁ…」

アレン『トトロ?あなたトトロって言うのね!?』
紫原『グォォォオオオ!!』
福井『オイ、紫原トトロの鳴き声超うめぇぞ!!』
劉『お前野生のトトロアルか!?』
紫原『中学ん時ねージブリのモノマネはやってみんなでやってたー』
氷室『すごいな!敦!!』
福井『おーし、じゃあ次主将も行こうぜ』
岡村『わしがか!?』


福井『……ん』
優人『え、あの…』
福井『ん!』
優人『あ…っ、待っ』
福井『やーい!おまえんち、おっばけやーしき!!』
優人『なっ!』
岡村『がんだぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!』
全員『『ブッハ!!』』
福井『あーはははははははははははは!!カ、カンタのばあちゃん…声っ!野太てぇ…!!』
優人『あははははは!!な、なまはげかと思った…!!』
紫原『ぶふっ、ちょ、優人…なまはげって…!』
岡村『なんでわしがカンタのばーちゃん役なんじゃーーーー!!』

アレン『あ、じゃあ次はラピュタやりますか?僕シータのモノマネできますよ』
福井『お、んじゃあ、お前シータで。氷室パズーで。岡村ムスカで』
岡村『なんでっ!?』
劉『いいからさっさとやるアル。モミアゴリラ』
岡村『だからそのモミアゴリラって何!?』
アレン『じゃあ、タツヤせーので行きますよーせーn…」
氷室『ワロス!!!』
アレン『バル…………っぇぇぇええええ!?ここでボケるんですか!?タツヤ』
氷室『え?アレ?掛け声はワロスじゃなかったのかい?』
アレン『バルスですよ!!っていうかこの状況がワロスですよ!!ああもう、優人たちお腹抱えて地面に丸まっちゃってる…』


―――…一部始終の動画を見終えた信と夏も、同じように腹を抱えて丸くなった。

夏「くっ…ぶはっ!何してんねんあの子ら!!」
信「あははは!まあ、楽しそうで何よりだけど…多分、これユウにも送られてるんじゃないかな…」
夏「口にもの入れておらんかったらいいけどなぁ…」
信「あーもー…思いっきりバカ騒ぎしてるし…」

信と夏は、動画の中で笑い転げる優人を見て、嬉しそうに目を細めた。どうやら、自分たちの弟は、遥かかなたの雪国で元気にやっているらしい。
ちなみに神田は…


岡村『がんだぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!』


神田「ブホォ!!!」
ラビ「ぎゃーーーーーーーー!?ユウ!?」

運悪く、緑茶を吹き出す運命となった。

拍手レス

・ジンさん≫優人「拍手ありがとうございます、ジンさん。あー…アレはね、焔に紫原さんのこと話したら『トトロもたしか2mぐらいだったぞ』っていうから、それで心の中のあだ名がトトロになっちゃったんだ。それで…相も変わらず俺を主呼びすることなんだけど…」

アレン「そういえば、僕もその経緯については詳しく知りませんね。どうしてですか?」

焔「主は山の主だたから」

アレン「……は?」

焔「主と山を歩いておると、普段獰猛なイノシシや熊も寄りついて来ん。それは主が山の主で、獣たちに一目置かれておるからだろう?」

アレン「………優人…」

優人「あはは…俺っていつからシシガミ様になったんだろうねぇ…なんかもう…説明すんのめんどくさくて…」

アレン「それで主呼びが定着してしまった…と」

優人「うん…」



・空沙さん≫アリア「拍手ありがとうございます、空沙さん」

六花「へぇ…ラジオネタを小説にリンクか…」

優人「まあ、今後の展開次第ではそうなることもあるかもしれないよね」

アリア「ちょ、待ってください!私任務でマダガスカル島に行くことになったら大変なんですから!!」

六花「アイアイかぁ…見たことねぇなぁ…まっくろくろすけと河童なら見たことあっけど」

優人「それだけ見たら十分じゃないかな」



・凍て花×黒バスの小説とても面白かったです!〜の方≫優人「ありがとうございます、お客様。乗せた当初は、自分以外に黒バス見ているお客様がいるかどうかドッキドキだったみたいだけどね、緑」

焔「ああ。わりと好評で喜んでおった」

黄瀬「じゃあ俺も出して欲しッスよ〜俺と青峰っちだけ仲間はずれで…」

優人「俺に言われても…出るとしたら、首都圏にいるユウ兄か信兄だし…」

黄瀬「うー早く共演したいッス!!」
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