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俺と文化祭(一日目)

梅雨が中休みをもらってる頃、陽泉の生徒たちは文化祭に向けて忙しなく働いていた。

「おいゴルァ!!買い出し言ってきた奴ちょっとこっち来い!!なんでこんな高級小豆買って来やがった!!」
「だ、だって高級ってことはそれだけ味がいいってことだろ!?ならそれで客呼び込めるんじゃ…」
「そ、そうそう!!ウチのクラスは味で勝負ってことで…」
「あぁん!?原料の値が張る分、商品の値段も高くなんだろうがボケェ!!一個300円のおはぎなんて誰が買ってくれんだ!!大体インスタントコーヒーと、豆から厳選して焙煎したコーヒーとの違いもわからねぇような曖昧な味覚機能しか搭載してねぇお前らが味だのなんだの言うこと自体ちゃんちゃらおかしいんだよ!!わかったらとっとと買った店行って安い小豆と取り替えてもらって来い!!!」
「「はひぃっ!!!」」


「……俺、今優人のバックに神田先輩のスタンド見えたんだけど…」
「奇遇じゃな、福井。わしもじゃ」


「タツヤ―――!!姉さんからスコーンのレシピと美味しい紅茶の淹れ方マニュアル届きました―――!!」
「ありがとう、アレン。じゃあ、レシピは調理係の女子に渡して、俺らはさっそく紅茶の淹れ方勉強しようか」
「はい!あと姉さんから接客に対するアドバイスなんですけど…」
「ん?なんだい?」
「『人に頭を下げてると思うんじゃありません。金に頭を下げてると思いなさい』だそうです!!これならどんな腹立つ客が来てもなんとかやり過ごすことが出来るそうです!!」
「Oh………」


「アレンのねーちゃんってマジなんなの…?」
「アレン曰く、美人で優しくて強くて賢くて料理上手な自慢の姉らしいアル」
「そんな人間ぜってー存在しねーし…どんだけフィルターかかった目で見てんの…」


「みんな――――!!衣装出来たからサイズチェックお願い!!」
「おお、すまんな優人。お前もクラスの出し物で忙しいのに…」
「いえ、焔もたまに様子見て手伝ってくれましたし…」
「え!?あの人裁縫出来んのか!?」
「裁縫どころか家事全般出来るよ、焔は。もうどこに婿入りしたって恥ずかしくないぐらい」
「……見かけによらず、器用なんだね…」
「ところで、きつい所とかありませんか?」
「優人ーなんかこれチクチクすんだけど」
「ん?…ああ、今は刺繍の部分が肌に触れてるからね…本番はこの上着の下に一枚着ることになるから大丈夫だよ」
「わかったー」

怒涛の準備期間も瞬く間に過ぎて、文化祭当日。
夏の近づきを感じさせるような澄み切った高い青空の下、開催を告げる花火が上がった。

「いらっしゃいませー……って、むっくんに氷室さん。二人とも今は休憩?」
「そう。バスケ部のみんながいるクラスを回ってるんだけど、さっき廊下で偶然敦と会ってね。優人のクラスのお茶菓子食べに行くって言うから、一緒に来たんだ」
「俺んとこはフリマだからそんな人いらねーし、俺の当番午後からなんだよねー」
「それより…すごいな、優人のクラス…」
「ねーめっちゃクオリティ高ぇーじゃん」

机も椅子も教室からは綺麗に消え去り、床一面に敷き詰められた緋毛氈。教室の隅に立てられた赤い日傘。そして、店員は全員が着物姿。まるで野立を思わせるような雰囲気の喫茶店だった。

「ふふふ。でも実はあんまりお金はかかってないんだよー。緋毛氈は茶道部が使わなくなったお古貸してもらって、日傘は俺が寺の蔵から引っ張り出してきたヤツ。着物も古着屋さんから安布買ってきて作ったモンだし……その分、茶菓子や抹茶にお金回したから、今日はどんどん食べてってね!!」
「うん。食べる!」

優人の言葉の裏に、じゃんじゃん金落としていってね!!という意味合いが含まれていることを察した氷室は、苦笑いしながら二人のやり取りを見ていた。

「俺もいただくよ。えっと…席はどうすればいいかな?」
「ここは、明確に席とか作ってないんです。お客さんに座布団渡して、後は各自好きな場所に座ってもらうようにしてあるんです」
「ふーん。なんか花見の席みたいだね。あ、あそこ空いてるよ〜室ちん」

適当な場所を見つけて座ると、優人は紫原にお品書きを渡した。
さっそくお品書きに目を落とした紫原は、ゆるむ頬を抑えられなかった。おはぎにまんじゅう、煎餅などといった定番の和菓子から、練り切りやきんとんといった茶席ならではの上生菓子。洋菓子とコラボした抹茶のムースや抹茶を練り込んだフォンダンショコラ。
全て優人が監修をつとめたというから、味は当然保証付きだ。

「優人くーん!さっき上がったコレどうするの?」
「ああ、ソイツははんごろしね。次に来るヤツはみなごろしでお願い」
「はーい」
「「!?」」

料理とはかけ離れた殺伐とした用語に、二人は思わず顔を上げた。

「……優人…厨房で一体何が起こってるんだ…?」
「え?………………ああ!ごめんごめん!はんごろしっていうのは、おはぎのあんをつぶあんの状態にするってこと!みなごろしはこしあんのこと!」
「びびったー…厨房で気に入らない客にリンチかけてんのかと思った…」
「あはは、そんなわけないじゃない」

二人は同時によかったーと溜め息を吐く。

「やるなら正々堂々タイマンでいくよ、俺は」

全然安心できるもんじゃなかった。

「……なに昼間っから周りの空気凍らせてんのよ、アンタは」
「やっほー優人」

変な空気を一掃するように、登場して早々優人の頭に軽くチョップを入れる少女と、少し気の弱そうな少年。

「圭菜、翠。来たんだ」
「うん。圭菜は大道具担当で、俺は音響担当だったから、当日はほとんどやることないんだ」
「あ、むっくん氷室さん、コイツら俺の幼馴染で圭菜と翠って言います」
「初めまして、二人のことはよく優人から聞いています」
「は、はじめまして。優人の従兄弟で、水谷藍って言います…あ、翠はあだ名で、で、出来ればあだ名で呼んで欲しいです……お、女の子みたいな名前なので…」
「はじめまして。よかったら、一緒にどうかな?敦もかまわないよな?」
「んー?いいんじゃねー?」
「えぇっ!?」
「では、お言葉に甘えて」
「ちょ、ちょっと圭菜…!マズイよ…!!この人達、女子の中で凄く人気があるんだよ!?」
「はぁ?それが何よ」
「だ、だから…こんな人たちとご一緒なんかしたら、他の女子から妬まれるかもだし…」
「なんで人と付き合うのに他人の目をいちいち気にしなきゃならないのよ。だいたい誘ってきたのはあっちじゃない」
「で、でも…」
「あぁもう!うじうじ鬱陶しい!!この場であたしを敵に回すのと、他の女子敵に回すのどっちが怖いのよ!?」
「ひぇぇえっ!!圭菜ですっっ!!」
「ならさっさと座る!!」
「はいっ!」

座布団も敷かぬままその場に正座した翠を、氷室は唖然として見ていた。また優人とはずいぶんタイプの違う子たちだ。
優人は、そんな幼馴染達のやり取りを、半目になって見ていた。

「……圭菜、あんまり翠を怖がらせないでよ…ただでさえビビリなんだから…」
「根性がなってないのよ、根性が」
「はぁ……翠も、圭菜が大声あげたぐらいでいちいちビビらない」
「はい……」
「はい。じゃあお品書き。これ見て食いたいもん注文してね」
「あ、優人〜注文いいー?」
「どうぞー」

先程からずっとお品書きを見ていた紫原は、氷室よりも一足早く注文を決めたようだ。

「えっとねーとりあえず、おはぎと大福と練り切りと抹茶ババロアと煎餅〜」
「はーい。氷室さんも決まりましたか?」
「うーん…少し悩んでるんだ…俺のクラスでも甘い物中心に出してるから、ここで食べ過ぎてしまうと午後に胸やけ起こしそうでね…」

確かに、アレンや紫原のようなお菓子大好きの大食漢は別として、甘いにおいが漂う空間にそう何時間もいたら普通の高校生男子なら参ってしまうだろう。特に陽泉の文化祭は3日も続くのだ。

「じゃあ、水もの菓子ならいいんじゃないかな?」
「水もの菓子?」
「えっと、くずきりとか寒天やゼリーとかですね。見た目も涼やかですし、のど越しもつるっとしててあまり甘い物が得意じゃない方にもおススメです」
「じゃあ、これと煎餅をいただくよ。あと、お茶はたててもらえるのかな?」
「はい。お客さんからの要望があれば」
「じゃあ、お願いしていいかな?」
「かしこまりました」

注文を取り終えた優人はさっそく厨房へと伝えに行った。
その様子をみながら、翠はどこかほっとしたように息をついた。

「よかった…優人。このクラスに馴染んでるみたいで…」
「ん?優人はそんなに人見知りする方じゃないだろう?」
「あ……えっと……」
「バスケ部のマネやってるせいで、クラスでハブられてるんじゃないかって心配してたのよ、翠は」
「!」

「圭菜っ」と、咎めるように翠が名を呼ぶが、圭菜はそれを無視していう。

「中等部にすらファンがいるほどの人気のメンバーの周りをうろついてるとなれば、そりゃいくら男とは言え、邪魔だと思う女子は少なからず出て来るでしょうよ」
「……優人は…俺たちと居ることでいじめに遭っているのかい?」
「さあね。あたしアイツとクラス違うし」

氷室は奥歯をかみしめた。
気づけなかった…。笑っているその影で、優人に辛い思いをさせているかもしれない可能性に。

「あの……そんなに深刻に考えなくても、大丈夫だと思います」

おずおずと、翠は氷室に話しかけた。

「もし仮にいじめに遭っていたとしても、それでもバスケ部のマネージャーでいようとしているのは、優人の意思です。バスケ部が人気だとわかっていても引き受けて、今もこうしてバスケ部に所属してるってことは、おそらく、優人自身がマネージャーを辞めたくないと思っているからだと思います」
「!」
「僕は優人の従兄弟で…昔から一緒にいるからよくわかるんです。優人は他人に指図されたぐらいで、自分の意思を曲げるようなことはしないって」
「……だが…やっぱり俺たちのせいでいじめに遭うのは…」
「へっちゃらですよ。優人は他人になに言われようと。武力行使に出たって、大抵の人は優人に敵わないだろうし……それに、いざとなれば焔も僕もいるしね」

氷室は首をかしげた。
初対面でのビビリ具合や体つきから見て、翠はあまり戦闘向きではないような気がするのだが…。人は見かけによらないということだろうか?
なにせ、あの華奢で愛らしい容姿の優人も、一蹴りでバインダーを真っ二つに割るような足技の持ち主だ。

「あと……圭菜があんなツンツンしてるのも、気にしないでください」

コソコソと、小声でささやかれた言葉に首をかしげると、翠はちょっと困った顔をした。

「最近優人が一緒にいても、紫原さんや氷室さんのことばっかり話すから拗ねてるだけなんです」

そう言って、眉をハの字に下げて笑う顔は、優人によく似ていた。
しかし、ということは圭菜はもしかして…。

「……ちょっと、さっきからなにコソコソ話してるのよ」
「え、えっと…なんでもない」
「圭菜は優人のことが好きなのかい?」
「ゴフッ!」

圭菜はお冷を吹き出した。

「な、な、な、なんであたしがあんな女男をっ!!」
「うわー顔真っ赤ー」
「うるさいっ!!翠!あんた何変なこと吹きこんでんのよ!?」
「わーーーー!!ごめんなさい!!」

目は口ほどにものを言うとかいうけど、この子の場合は口や目よりも顔が物語ってるなー…と、真っ赤になった圭菜の顔を紫原は面白そうに見ていた。あまりに真っ赤でりんごあめみたいだ。

「べっ、べつっ、別に私は!あ、あ、あんな…!優人のことなんか…!!」
「俺がどうかした?」
「ひきゃぁ!?」

突然背後から聞こえた声に、圭菜は肩を跳ね上げた。

「と、突然現れんじゃないわよ!バカ!!」
「は……?っていうか、顔赤いけど大丈夫?熱あるんじゃないの?」
「ない!」
「えー?信用ならないなぁ…小五の時38度の熱がありながら運動会に参加した前科のあるヤツの言葉なんて……」
「あ、あの時は………っ…!?」
「うーん…若干熱い…か?」

ひんやりと仄かに冷たい優人の手が、圭菜の額にあてられる。

「っていうか、俺さっき手洗ったから、今手冷たいんだよね」
「じゃあ、早くこの手どかせ!熱なんかないからっ!」
「うーん……」

未だに圭菜のことを疑っている優人は納得していないようだった。
優人は額にあてていた手をそのまま上に持っていき、圭菜の前髪をかき上げた。
そして、無防備になった圭菜の額に、自分の額を当てた。

「……うーん…たしかに熱はないみたいだけど…顔色悪いんだし、あんまり無茶しない方が……って圭菜……?おーい……聞いてるー?…けーい…?」

――――…刹那。


ゴッツ!!!

思わず周りが振り向くほどデカイ音を立てて、圭菜と優人の額がぶつかり合った。

「っ〜〜〜〜〜ぃってぇ!!!なにしやがんだバカ圭菜!!」


涙目になりながら額を抑える優人に対し、圭菜は真っ赤になってぷるぷると震えていた。

「馬鹿はどっちよ!!この…っ!バカッ!!」
「はぁ!?」
「そんなに言うならお望み通り帰ってやるわよ!!」
「は!?いや、別に熱なかったんだし…っていうか、オイ!お冷だけ飲んで注文ナシかよ!!せめて金落としてけ!!」
「え、そこなの?」

思わず翠が突っ込んだ。
氷室と紫原は、まざまざと見せつけられたラブコメに、唖然としていた。

「すげー…俺、デコこっつんをリアルにやるやつヤツ初めて見た…」
「しかも他意なくやってる所が凄いな…」
「へ?熱があるか確認するために普通やらない?」
「……優人のそう言う所は、ホント信さん似だよね…」
「……?まあいいや。ハイ、遅くなっちゃったけど注文の品です」

目の前に並べられた可愛らしい和菓子の数々に、紫原の意識は自然とそちらへそれた。

「すげ〜うまそー…これ全部手作りなわけ?」
「うん。材料は焔のツテで農高の人達から安く買い取ってきてもらった」
「ああ…確か薬草の講師として呼ばれたことがあるんだよね?」
「そうそう」

紫原はさっそく練り切りに手をつけた。今の季節を意識してか、蓮の花に見立てた練り切りは、花弁の先がほんのり薄桃色に色づいていて、見た目も綺麗だった。だが、やはり素人である生徒が作った物。若干花弁が歪んでいたりするのはご愛敬だ。

「ん〜〜〜おいしー…でも、こーゆー茶菓子って、みんなちっちゃいのが残念だよね〜〜」
「茶菓子はお茶の前に出される軽い食べ物だからね。一口か二口で食べられるくらいのサイズが基本なんだよ」

むっくんだと、全部一口サイズになっちゃうけど、と優人は苦笑した。

「でも、季節感が味わえてすごく楽しいよ。やっぱり日本の菓子はいいな」
「うん。俺も目で楽しむことが出来る和菓子はすごいと思う。ちなみに、氷室さんの寒天ゼリーはもうすぐ来る七夕をイメージしたものなんだ」
「七夕を……?」

はて、と氷室は首をひねった。薄い水色のゼリーの中に浮かぶのは、白い鳥。
七夕といえば、織姫と彦星ぐらいしか浮かばない氷室はなぜこれが七夕を表すのかわからなかった。

「あ……この鳥もしかしてカササギ?」
「そう」
「カササギ…?」
「えっと…織姫と彦星を会わせてあげるために、カササギは天の川に翼を広げて橋渡しをしてくれるという伝説があるんだ」
「へぇ!それは知らなかったな」

このゼリーの中に閉じ込められたカササギは、まさに翼を広げて、橋渡しをしているということなのだろう。織姫と彦星の一年に一度の逢瀬を果たす為に。

「なんだかロマンチックだね。食べるのが勿体ないよ」
「そう言ってもらえると、こっち嬉しいよ」
「室ちん食わねーの?なら俺が……ってッ!」
「こら、欲しいなら自分で注文しな。むっくん」

氷室の菓子に伸ばしていた手を叩かれた紫原は、口を尖らして優人を睨んだ。
いくら座っているとはいえ、それでも普通の人より頭一つ分以上高い紫原に睨みつけられるというのはかなりの迫力だが、優人はもう慣れっこなのか、どこ吹く風でお茶を立てていた。

「そういえば、抹茶って薄茶?濃茶?」
「薄茶。さすがに濃茶は高くてね……手が出せなかった」
「薄茶って言うのはなんだい?」
「抹茶って言うのは、主に濃茶と薄茶の二種類に分けられるんだ。濃茶と薄茶でその茶会に出される茶菓子も違うし、作法も違ってくるよ」
「そういえば…俺、抹茶を頼んでおいてなんだけど、こういう茶会の作法を全然知らないんだ…」
「そんなの全然かまわないよ。今回は訪れたお客さんに抹茶を味わってもらえればいいと思ってるし」
「それに形式通りにやってたら目茶苦茶時間かかるよ室ちーん」
「そうなのか?」
「うん。たしか丸一日かけたりする時もあるって赤ちんが言ってたー」
「そうそう。それに結構決まりごとも多いから、俺はこうやって形式にこだわらずのんびり飲む方が好きだなぁ。……よし、できた。どうぞ、氷室さん」

すっと、目の前に出された茶器を手に取り、氷室は一気に中の抹茶をあおった。
そして、ゆっくり茶器を口から離し、膝へ置くと、一言。

「………………にがい…」

その感想に、紫原はゲラゲラ笑い、優人と翠は苦笑した。

「室ちん、お菓子の抹茶味みたいな味がすると思ったんでしょー?」
「………うん。全然違った。なにこれ苦い」
「濃茶になるともっと苦いよ。俺も中学に上がるまでは抹茶苦手だったなぁ。ちなみに、薄茶は「たてる」、濃茶は「ねる」と言います」
「僕も抹茶は苦手だなぁ。氷室さんはまだいい方だよ。僕なんか、最初あまりの苦さに吹き出したし…」

口直しと言わんばかりに、氷室は無言で煎餅を口に詰めた。

「っていうか、優人って茶道習ってんだー?」
「うん。お寺だからさ、色んな檀家さんがいて、その中に茶道と華道の先生がいたんだよ」
「へぇー」
「二人ともよく俺に構ってくれて、たまにお寺に顔出してくれた時に色々教えてくれてねー」

お冷を飲んでようやく落ち着いた氷室は、ふうっと息をついた。

「初めて飲んだから、味には驚いたけど……ありがとう、優人。ごちそうさま」
「ふふ。お粗末さまでした。そういえばさ、アレンの様子はどんな感じ?最近忙しくて会ってないけど…」
「普段と変わらないよ。あ…でも、なんか妙にイキイキしてたな…『今年は気兼ねなく文化祭を楽しめて嬉しいです!』とか言ってたし…」

それに対し、優人と翠は重い溜息を吐いた。

「やっぱり六花さんに言ってないんだね…アレンさん」
「あーあ…俺、もうどうなっても知らない」
「六花って誰?」
「アレンさんのことが好きな人です」
「そんで、アレンが好きな人でもある」

氷室と紫原は驚きに目を丸めた。なんだか今日は人の恋話をよく聞く日だ。

「アレンって好きな人がいたのかい!?全然聞いたことなかったな…」
「ああ、アレン自身は六花さんのこと好きじゃないって否定してるんで。でも、アレはもう落とされてるよねぇ…六花さんに」
「うん…。意地張って否定してるようにしか見えないよね」
「六花さんも、もうちょっとアレンにちょっかいかけるの抑えればいいのに…面白がってかまうから、アレンもますます意固地になるんだよ…」
「……結局どんな人なの?」

紫原の問いかけに、優人と翠は顔を見合わせて、同じような困り顔を作った。

「六花さんを一言で表すのは難しいです…」
「うん。でも、強いて言うなら「すごい人」かな…」
「はぁ〜?」
「会えばわかるよ。特に氷室さんはアレンと同じクラスなんだから、会う確率高いだろうし」

それを、運が良いと言うのか、それとも悪いと言うのかはわからないけど。そんな意味深な言葉を残し、優人はその話を打ち切った。

「……まあ、アレンの話も気になるけれど、俺達は二日目から始まる部活の方の催しにも集中しないとな」
「あー…アレマジでだるいんだけど…」
「俺はちょっと楽しみ。ああいうイベントってわくわくする」
「そういえば…結局バスケ部って何をやるの?」

優人と氷室はにんまりと笑って言った。

「「それは明日のお楽しみ」」

 



おまけ→
▼追記

拍手レス

・ジンさん≫アリア「拍手ありがとうございます、ジンさん」

優人「ああ、まあ…原作の世界観とか設定からして重いからねぇ…」

六花「必然的に暗くて重いシーンは出てくるからな」

信「だからこそ、黒バスとかの番外編で思いっきりはっちゃけるんだよねぇ…」

アリア「というか、ギャグが書けないことに対する反動ですよね、アレ」




・久々の混合夢でしたね!〜の方≫優人「拍手ありがとうございます。うん…ホント、どの世界に行こうと俺のライフポイントがんがん削りにくるよね…みんな…」

ツナ「ゆ、優人…そんな遠い目しなくても…」

優人「しかも今回俺、ツナ達とほっとんど喋れてないし…なんか骸しゃしゃり出てくるし、っていうか、よりにもよって女の子を依り代にすんなよキメェ。クロームの口からお前の笑い声が聞こえるおぞましさったら……」

ツナ「優人!!しっかり!!なんか負のオーラめっちゃ背負ってるよ!?」

神田「ホント、考え込むと自分からどんどんドツボにはまっていくよな…アイツ」

焔「わかっておるなら見てないでフォローしろ!たわけ!!」



・凍てついた花×アニメKを書いて欲しいです。〜の方≫優人「拍手ありがとうございます」

信「うーん…Kとの混合かぁ…楽しそうだけど…」

優人「ぶっちゃけ、緑が内容よく覚えてないんだよね。手元に原作の資料もないし…」

信「登場人物の多さに、最初『主人公誰!?』って混乱したのは鮮明に覚えているらしいけどね」

優人「もうアニメ終わって大分経っちゃったからなぁ…ごめんなさい。緑もあやふやにしか覚えてないようなので、無理だと思います…」
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