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拍手レス

・ジンさん≫優人「気に入っていただけたなら嬉しいです。でもね…やってる方はアレ結構大変なんだよね…俺なんか特に長い台詞多いし…」

神田「長い台詞多いシーンで誰かがNG出すとお前、殺気立つよな」

ラビ「この間の混合のスクアーロとの口喧嘩シーンなんて、スクアーロが可哀想なことになったしな」

優人「あれはスクが悪いでしょ!?」

神田「まぁ…お前が一発OK出してんのにアイツ5回も同じ所で噛んだのは確かに…」

ラビ「スク、ヘタレだかんなぁ…本番弱いんさよ…」

優人「俺あの時肺胞が破れんじゃないかって思うほど怒鳴ったんだから!」

神田「最終的にはヴァリアー側もキレて他のメンバーがスクのこと抑えて『殴れ!優人!!』とまで言う始末だ」

ラビ「『ただし、顔じゃなくボディーを!』と付けたすあたり、あいつらも役者さねぇ…」

優人「それにツナも『俺、もうゼロ地点突破みせちゃっていいかな?』とか言ってたしね」

ラビ「台詞なしで立ちっぱなしってのも、地味につらいしな」

優人「ね」



・梓さん≫優人「混合の方では俺がツナ達をそそのかしました。あ、隼人が使ったのはチビボムっていって、サイズも威力も普通のボムより小さい奴だったから、柿の実は傷つけずにゲットできたよ」

綱吉「まさか雲雀さんの家だったなんて…!」

優人「雲雀さんの家お屋敷だからね〜。柿の木だけじゃなくて、梅とか桜とか菖蒲とか…季節ごとの花や木も植えてあって、専門の植木屋さんが丹精込めて育ててるから、実りもいいんだよ」

綱吉「だからってなんでそんな危険極まりない家をターゲットにするかなぁ!?」

優人「俺が純粋にあの家の柿を食いたかったから。ってのと、ツナと守護者の連携プレーを少し上達させるための訓練をリボーンからお願いされたの」

綱吉「リボォォオォオオオオン!!!」


・ブログの今昔柿取物語見ました〜の方≫夏「蓮は引きこもりやったからなぁ…なるべく外に出そうと、あの頃の信は色々試してたんや。それでアホなこともぎょーさんやったけんど…楽しかったわ…」

千博「そもそも柿泥棒をするきっかけになったのはなんだった…?」

夏「確か俺が最初『○○さん家の柿が実っとるから盗りにいこか?』って冗談で言ったんよ。もちろん信は最初反対したんやけど…優人が『柿ってどんな味なの?』って訊いてきてな…」

蓮「あ?優人柿食った事なかったのか?」

夏「猛暑でなぁ…柿は毎年高値で売りだされてて、しかも信がよく行くスーパーではばら売りされとらんで、4、5個パックに入れられて売られとったんよ。彩音さんたちはあんま家で食事とれへんし、信と優人だけじゃ片付かん」

千博「それで、ああなった…のか?それは蓮の為と言うよりは…優人の…」

蓮「あのな、アイツの脳内は7割が優人で構成されてんだぜ?後の2割が俺。そんで残り1割がちー、お前だ」

夏「すんません。俺、信の脳内に存在してへんけど?」


・どんな物語でも特徴のない人物は〜の方≫ロキ「うるせぇぇぇえええええっ!!平凡で何が悪いんだっ!!」

リーバー「おま…!お客様に向かって!!」

ロキ「黙っててくれ班長!!俺だってなぁ!科学者としてアリアを精一杯サポートできるよう日々知識と技術身につけてんだよ!!有事の際に少しでもあいつの負担を軽くしようと…!けど、いっつも美味しいとこをフィアに取られて…!!」

リーバー「わかった!わかってるから!!お前の苦労と努力は班長の俺がよーくわかってるから!!ああ、拍手ありがとな!!」


・晴藤さん≫緑「拍手ありがとうございます、晴藤さん。ロキが何故二項目もあるのかは、誰かに一票入れればおのずと分かります(笑)作者的には信とアリアの接戦が怖くて仕方ありません。様子見るたびに順序が入れ替わっているんですよあの二人…!!どんたけお客様に愛情注がれてるんだお前ら!!ロキに少し分けてやれ!(笑)」


今昔柿取物語

それはとある秋晴れの日のこと。



「いっけぇー!信!ちー!日頃バスケ部でしごかれた経験を生かしてみぃ!!」



紅葉の深まった涼しげな秋の空の下、夏の声が響いた。
中学2年生にして、すでに身長が170を超えた信と千博は、その声と同時に走りだした。
助走を付けて、一気に攻め込み、そして息の合った呼吸で同時にジャンプし―――枝を叩いた。



「落ちたよ!夏!日頃無駄にパス回ししてんだから、落としたら殺す!!」

「まかしとき!!」



揺れた枝から振り落とされる、橙色の柿。たわわに実ったそれは、見るからに美味しそうだった。
次々と落ちてくる柿を一つも地面に落とすことなく素早くキャッチし、パスを回す。



「優人!」

「はーい」



まだ4歳の優人がくるりと後ろを向くと、すぽすぽと服のフードの中に柿は収まっていった。

「いやー。今年はええ実がなっとるわ。豊作豊作」
「ここの家の主人は、丹念に育てているから、他の家よりも実が大きいな…」
「優人、どんな柿のどんなデザートが食べたい?」
「なまでがぶっと!!」
「豪快だなオイ」

収穫した柿の前で5人がワイワイ騒いでいると、突然雷のような声が響いた。

「コォラァァアアアア!!!こんクソガキ共ぉ!!ウチの柿の木に何してくれてんねん!!」
「チィッ!留守やなかったんかい…!」
「リサーチ不足だったな…夏…」
「蓮、お願い」
「任せろ」

信に大胆不敵な笑みを見せ、蓮は家主の前に一歩でると手を祈るように組んで上目づかいで言った。

「お願いしますわ。素敵なおじ様。私達にこの美味しそうな柿を分けてくださいな」

男子の制服を着ていたって女に間違われる蓮が、今は着物姿に、黒髪のウィッグ、極めつけに薄化粧だ。落ちない男はまずいない。

「い、いや…その…まぁ…」

読み通り、赤面して目を泳がせ始めた家主に、蓮はにっこりと淑女の微笑みを送る。男なんてみんなこんなもんだ。
その隙に千博は優人を担ぎあげ、小声で合図を出す。

「…蓮が引きつけてくれている今のうちに逃げよう」
「ほいな」
「了解」
「はーい」

家主は目の前の美女に化けた蓮に釘付けで、もう信達四人のことなど視界に入ってはいなかった。
そして、50mほど距離をあけると、夏が叫んだ。

「蓮!もうええ!!」
「おう」

家主などにはもう目もくれず走り去る蓮。そして家主が夢から覚めたように正気を取り戻すころには、もう時すでに遅し。

「この…!柿泥棒どもぉぉおおおおおおおお!!!」

家主の悔やみきれぬ気持が、秋の空に向かって叫ばれた。


 


 




そして10年後、現在。

「山本!バックホーム!!」
「獄寺君お願い!!」

優人の鋭い声と、尊敬する綱吉からの頼みの声に、山本と獄寺の目つきが変わる。
握っていた小石を大きく振りかぶると、それは見事柿の枝に命中する。
獄寺の方も、チビボムを指で器用に弾き飛ばし、ボムほどの威力はない小爆発を起こして枝を折った。

「落ちたぜ!優人!!」
「落とすんじゃねーぞ!!」

次々落ちてくる柿の実を、アレンから教わったジャグリングの要領でお手玉のように優人はあしらい、

「はい、ツナ後ろ向いて〜」
「うん」

くるっと背を向けた綱吉の服のフードに、等間隔でそれを投げ入れ、見事柿の収穫に成功した。

「よし!じゃあ雲雀さんがトンファー持って咬み殺しに来る前に全員ずらかるぞ!!」
「雲雀さんの家だったのここーーーー!?」
「十代目!急ぎましょう!!」
「ヤッベ!雲雀来たぞ!!」
「待ちなよ。そこの柿泥棒。さるかに合戦の猿かい?君達は」
「へーん。カニはそこで指くわえて見てろー。っつーか、カニ鍋なって食われろー」
「挑発しないで優人ーー!!」
「咬み殺す!!」
「ぎゃぁーーーーーー!!来たぁーーーーー!!」



今昔柿取物語



++++++++
秋っぽいものを書こうと思って書いたはずなのに、情緒の欠片もないな。秋っぽいセンチメンタルなものなんて一つもありません。あるのは食欲だけです。
ちなみに信達は中学時代は校則で必ずどこかの部活に所属しなければならなかったので、全員バスケ部に入りました。

夏→PG(ポイントガード)
千博→C(センター)
信→SG(シューティングガード)
蓮→マネージャー(美人&敏腕マネージャー。敵の情報はその美貌を武器に聞き出します)

拍手レス

・由美さん≫優人「拍手ありがとうございます、由美さん」

神田「ゲストにティキ・ミックを…?」

優人「えぇ〜…ティキは一生見習いスタッフ扱いでいいよ…」

ティキ「ひでぇな優人」

優人「だって来たってティキと話すことなんか何もないしー」

ティキ「今、思春期の子供を持った父親の気持ちがよくわかった…!なんか痛い…!!」

神田「お前限定でな」

優人「出来るならまともな人がいいなぁ…ツナとか、アレンとか、焔とか…」

神田「あんまり期待を抱くな。後で痛い目見んぞ」

優人「夢ぐらい見させて…」


世界を敵にまわした日


※前回、前々回に引き続き、凍て花の過去編です。
優人は出てきませんのであしからず。







もしかしたら、俺のした行為は間違っていたのかもしれない。
誰かから見ればそれは歪かもしれない。

間違ってる、とか。
ふざけるな、とか言われるかもしれない。

でも、それでもよかった。
それでも……。

 



―――…俺が蓮に抱く印象は、初めの頃から今までたいして変化していない。
初めて会ったときから、彼は他の人とは別の雰囲気を醸し出していた。
動物に例えるなら、猫が近いだろうか。とにかく警戒心が強く、うっかり手を差し出そうものなら噛みつかれそうだった。
そんな不思議な生き物の蓮に、俺は惹かれていた。


「同じ匂いでもしたんとちゃう?」


話を聞いたナツは、そう意見を述べた。


「同じ…?俺と蓮が?」

「少なくとも、俺よりはあの子に近い位置にいるはずやで、お前は」


この頃のナツは蓮のことを名前で呼ばなかった。おそらく、ナツなりの蓮に対する気づかいだったんだろう。
不思議そうに俺が首を傾げていると、ナツはこう言った。


「あの子、関西弁使わんやろ」

「あ…」

「あの子な…生まれてすぐ東京の方のおっきな病院に入院させられとったらしいんや。あの子のとーちゃんもかーちゃんも忙しくてな…それでも月に一回は見舞いにいけるようにはしとったんやって。けど、やっぱ寂しいやん…それって…」


何故ナツが俺と蓮が近いと言ったのか、それで理解出来た。
俺と蓮の共通点は『孤独』だ。それを二人とも経験しているんだ。
マイホームを手に入れてからは、父さんも母さんも以前よりずっと家にいる回数が増えた。
けれど、まだマンション暮らしの頃は、休日でも二人とも働きに出てたり、特に母さんなんかは、非番の日でも事件があったらすぐに仕事に戻らなければならなかったから、居る方が少なかった。

俺が寂しくないようにと、週に何回か来るお手伝いさんを雇ってくれたりもしたけれど、それで家族の穴埋めが出来るわけじゃない。
俺は、その寂しさを紛らわすために、本…つまり、知識に逃げ込んだ。
知らない知識を吸収することで寂しさを一時でも忘れ、紛らわしていたかった。

そして、幼稚園に入園する頃には、俺はその年齢に合わないほどの知識を吸収してしまっていた。
だから、同い年の子との会話は本当に苦痛だった。話が全然噛み合わないのだ。
俺の持っている知識を、大抵の子は普通知らない。だから、会話をしていると「どうして?」なんて質問を投げかけられることなんてしょっちゅうだった。
だから、俺と会話して不快になった子は多いと思う。

そんな中、ナツという存在は俺にとってありがたかった。
ナツは、3人兄弟の末っ子として生まれたため、周りに常に大人がいる環境に育った。
そのうえ診療所にくる年下の子の面倒を見たり、注射を嫌がる子の世話をしたりしていたらしく、あの頃は他の子達に比べて随分大人びいて見えていた。

「俺、医者になるのが夢やねん。だから、いまのうちからいっぱい勉強しとこうと思って」

そう、当時のナツは、知識だけの頭でっかちになってしまった俺と対等に会話できる唯一の存在だった。
ナツという友達が出来てから、徐々に俺は孤独というものから解放されていった。
相変わらず両親は、俺が寝るまでに帰ってきてはくれなかったけれど、以前は寂しいだけでなく、恨めしいとすら思っていたことが、ちょっと寂しいな、と思うだけになったのは随分な進歩だったと思う。

けれど、蓮はまだその孤独から解放されない。
それどころか、俺よりももっと悪い。
彼は、自分が世界と引き離されてしまった存在だとさえ思っている節がある。

「……なんかなぁ、よくわからんけど、あの子のとーちゃんとかーちゃんもどう接していいかわからんのやて。自分の子供なのにやで?ずーっと長い時間一緒にいなかったから、どうしたらいいかわからんって…そんなもんなんかなぁ?」

「うん…親なのにね…」


ナツや俺が理解できないのも当然と言えば当然だ。
だって、俺達は子供だったのだから。
今では何となくその気持ちも理解できる年に近づいたけれど、当時の俺達には全く持って理解不能の領域に達した心情だった。

「せやから、あの子に信っていう知り合いができたのはいいことやと俺は思うで。すくなくとも、あのまま一人にしておくよりはずっとええ」

「うん。俺も蓮と一緒にいるのは楽しいし、もっと色々蓮のこと知りたいよ」

「そんならほい、コレ」

「?」


ポンと俺の手の平に乗った大きめの梨。
ずっしりと重くって、みずみずしい感じがする。


「親戚が大量に送ってきてな。俺ら家族だけじゃ食べきれんから、やるわ。あの子と一緒に食べ」

「うん。ありがと、ナツ」


ナツから貰った梨を持っていったん家に戻った俺は、台所から果物ナイフを取り出し、それを梨と一緒にビニール袋に入れると、一目散に蓮の部屋へと駆けていった。

―――…そして、この日が、俺と蓮の大きな転機だった。

いつものように垣をくぐって、細い轍とも呼べない藪だらけの中を突き進んでいた時だった。

ヒューヒュー

俺はその音を耳にして、思わず足をとめた。
聞き間違いかと思って、よく耳を澄ませて周りの音を拾う。

ヒュー、ヒュー

聞き間違いじゃない。
それが分かるないなや、俺は藪をかき分けて突き進んで行った。

「蓮!!」

もしかしたら蓮のお母さんにバレるかもしれないのに、俺は構わず大声を張り上げた。
蓮は顔を真っ青にさせて脂汗をかきながら、自分の胸を抑えて苦しそうに呼吸を繰り返していた。
―――…喘息だ。俺は即座に理解した。しかもこれは結構重度の発作だ。
俺はさっと周りに目を走らせて、呼吸器がないか探した。


(―――…あった!!)


それはなんと、俺の足下に転がっていた。
おそらく、窓際に置いてあって、発作が起こった時にそれを取ろうとして窓の外に落としてしまったんだろう。
俺はそれを鷲掴むと、土足だということも構わずに、窓から部屋に乗りこんだ。


そう、この日、初めて俺は境界線を越えた。
蓮が絶対人を入れなかったテリトリーに俺は足を踏み入れたのだ。しかも土足で。
呼吸器を蓮の口に押し当て、ボタンを押した。

プシュッ、シュッという独特の音がして、それから間もなく苦しそうな蓮の表情が和らいだ。
それを確認してから、そっと呼吸器を口から離すとけほっと軽く咳き込んで、ぐったりとしていた。


「……薬、あるよね?どこ?」


蓮はすぐそばにある机を指差した。
白い薬の入った袋と、水まである。
袋に書かれた処方箋に従って蓮に薬を飲ませた。

貧血かと思うほど透き通った白い肌と、細い首筋が、なんだか悲しくて、見てて苦しかった。
じっと俺を見つめる蓮は、俺のことをどうすればいいか迷っているみたいだった。


こうげきしてこない?
おれをきずつけない?
信じてだいじょうぶ?

信じても、いい?


その瞳は、そう問いかけてくるようだった。
だから俺は、そっと彼に手を伸ばし、頭を撫でて、それから、落ち着かせるように背中を叩いた。


とんとん、さすさす
とんとん、さすさす

2回叩いて、2回さする。
俺が風邪を引いて咳が止まらない時に、父さんがやってくれているように。


「苦しかったね…怖かったよね……」


もう、大丈夫だよ。


「っ…うっ…うぅっ…」


…嗚咽をこらえるような蓮の泣き声が聞こえてきた。
本当は、これは俺の役目じゃないって分かってる。
これは、蓮のお母さんの役目だ。
けれど、蓮のお母さんもお父さんも、それをやってくれないなら、俺が代わりにやってあげようと思った。

誰にも守られずに、世界からはみ出してしまった蓮を、守りたいと思った。
守らなければと思った。

それは今思えば、これは使命感だったのかもしれない。
友情に部類するには、俺と蓮の関係はあまりに歪すぎただろう。


もしかしたら、俺のした行為は間違っていたのかもしれない。
誰かから見ればそれは歪かもしれない。

間違ってる、とか。
ふざけるな、とか言われるかもしれない。

けど、それでもいい。

言うだけ言って、この子に何の手も差し伸べない世界の大多数の奴らよりは、ずっといい。


世界を敵にまわした日
(ねぇ、蓮。以前の俺も君みたいだったって言ったら、君はどうする?)



++++
凍て花過去編の信視点。
信と夏は完全な友情で繋がっていますが、蓮とは歪な友情です。
どちらかといえば、兄弟のような思いが強いと思います。『絶対に俺が守るんだ』という兄の使命感を抱いて蓮と接している感じです。

永久に枯れぬ花

・前回に引き続き、蓮と信のお話です。
前回の注意事項通り、読んでも大丈夫な方のみご覧ください。









桜は好き、薔薇は嫌い。
曇りの日は好き、晴れの日は嫌い。
夕方が好き、昼間は嫌い。
家族は好き、他人は嫌い。

その中で、自分が一番嫌い。



「蓮君!」


あの日から、信は毎日のように俺の部屋へ見舞いにやってきた。
信の家と俺の家は垣で区切られているだけだから、子供が屈んで通ろうと思えば通れるだけの穴はいたるところにあった。
信はそこを使っていっつも俺の庭に侵入してくる。「勝手に入ってくるなよ」と言っても効果は無かった。
コイツは昔から、一度貫くと決めたことはとことん貫き通す奴だったから。


「今日はね、ナツと一緒に裏山に行ってきたんだ」


偶然にも、昔から俺の主治医をしている雨宮先生の息子と、コイツは友達だった。家も近く幼稚園も一緒らしい。
診療所に行った時に何度か顔を合わせたが、話したことは無い。向こうも、話しかけてはこなかった。
おそらく、先生からいろいろ聞いていたんだろう。
慣れない外出をして、ただでさえ神経質になっている俺を下手に刺激しないように、関りを持ってこなかったんだと思う。
アイツは昔っから、誰よりも自分勝手なようで、誰よりも人を気づかう馬鹿だった。


「はい、蓮君におみやげ」


窓枠に置かれたのは、燃えるような真っ赤な紅葉。俺の所にくるときは、必ず草花を持ってくるのが信の習慣だ。
俺が信の握手を拒絶していらい、信は俺に触ってくるような素振りは見せなくなった。
ちょうど、この窓が境界線。俺は窓の外には絶対出ないし、信も窓より中には絶対手を入れてこない。
俺達は、いつ崩壊するか分からない綱渡りの付き合いから始まっていたんだ。


「炎みたいだよね。ナツは、赤ちゃんの手みたいだなんて言うけれど、このもみじがひらひら舞っているのを見るとさ、火の粉が舞ってるみたいなんだ」


俺に土産を寄こすと、信はこうして必ずその土産を入手した経緯を俺に話して聞かせる。
その時絶対に「元気になったら蓮君も一緒に行こうね」なんて俺に言ってこないのが信の感覚の凄いとこだ。
コイツは、俺が外の世界をよく思っていないことを、何となく察しているんだ。
口に出さなくても、俺の雰囲気や言葉の節々に隠れた感情のみで。


「そう言えば、来年の春になったら小学校だけどさ、蓮君はきっと俺や夏と一緒だよね?同じ地区だし」


小学校…聴くだけでこんなに俺を憂鬱にさせられる単語は滅多にないだろう。


「俺は……行かない」

「え、どうして?」

「体、弱いから、しょっちゅう休む」


人とのコミュニケーションがとりにくくなっている俺は、こんな短い言葉を喋るときすら一苦労だ。
おそらく、信は失望するだろうなと思った。
きっと、俺と仲良くしようとしてたのは、初めて行く小学校という環境で、一人でも知っている奴がいた方が心強いからだ。
けど、小学校に上がっても、ほとんど学校に来れない俺では友達になる意味も無い。
だからこれからはもう、見舞いにも来なくなるだろう。
我ながらこの年でよくもまあここまで腐ったもんだと思う。人に対して、期待を抱けなくなっていたんだ。

「そっかぁ…蓮君あんまり学校来れないのかー…」


ほら、やっぱり残念がった。
この瞬間、こいつの中で俺の価値は無価値になったんだろう。
そう、思っていた矢先だった…


「じゃあ、蓮君が休んだ時は俺が勉強教えてあげるね」

「は?」


今コイツなんつった?


「何で…?」

「何でって、だって小学校で『さんすう』っていうのを教われば、自分でおかいもの出来るようになるんだよ?そしたら、自分の好きなおかし自分でちゃんとかえるじゃない!!」


しょうひぜいけいさんおぼえて、俺、ホールケーキお母さんに内緒で買うんだ!母さんいっつも買ってくれないから!
……なんとも小さくてお手頃な夢を抱いたガキだっただろう。あの頃の信は。


「それに、学校に通えば図書室で本かりられるから、蓮君に持っていってあげられるでしょ?」

「どう…して…」

「だって蓮君、いっつもつまんなそうに本読んでるから」


気づかれていた。本当にコイツは昔っから鋭い奴で、隠そうと思えば思うほど、コイツには気づかれるんだ。
だから、俺がコイツに隠し事出来たことなんか、一回もない。そして今日この日が、俺の隠し事がバレた第一回目となった。べつに記念すべき日でもなんでもないが。


「楽しみだなぁ、蓮君に聞かせられる話がたくさんできそう」

「……蓮」

「え?」

「蓮で…いい…」


家族以外で、俺は初めてその名を呼ぶことを許した。
何でかってきかれても、ガキの頃の俺の思考回路は今と全く違う為、今の俺に答えを求められても困る。
でもまあ、とりあえず信に対する警戒を一応は解いたんだろう。


「うん。じゃあこれからは蓮って呼ぶね」

 



――――…それからも信は毎日毎日飽きもせずに、俺に見舞いの草花を持ってきては、他愛の無い話を10分ぐらい話して帰って行く。
けれど、信が摘んできた草花は、三日もすれば全て枯れてしまい、俺はそれを見るのが酷く嫌だった。



「もう、持ってこなくていい」


ある日、俺は最低限の言葉でその意志を告げた。
目をまん丸に見開いた信は、首を傾げて聞き返してきた。


「どうして?」

「いらないもんはいらない。もう、持ってくるな」


当時の俺は言葉足らずで、この口のせいでよく周りに誤解を受けたり、傷つけたりもしていた。
不器用な俺の言葉を聞いて、その時信がどんな感情を持ったのか、俺は知らない。
ただ、しばらく考えるような素振りをみせると「わかった」とだけ言って、見舞いに持ってきた花を握ったまま帰って行った。
ああ、もう来ないかな…そう思うと、冷たい秋風が心を通り抜けた。

 


数日後、窓際に置かれた物体を目にして、俺は吹き出した。
まさか、ここまで奴が執着するとは。


『かれないお花です。もしよければどうぞ』


そう書かれたメモ帳と一緒に置いてあったのは、折り紙で作った花。確かにこれなら枯れないだろう。紙だし。


「ばっかじゃねぇの、アイツ…」


気管支の弱い俺は、あんまり笑うと発作を引き起こしやすいってのに、あの馬鹿俺を腹筋が痛くなるまで笑い転げさせやがって、笑い死になんて冗談じゃねぇぞ。
それからはまた、毎日懲りずに枯れない花を送ってきやがった。ただし、姿は見せなかった。俺にいらねぇって言われんのを怖がってたんだろう。
それは、しおりだったり、よく卒業式や入学式で目にする赤と白の紙の花だったり、ドライフラワーだったり、一番ビビったのはアレだ。コサージュ。白い椿のコサージュを送ってきたときには相当びっくりした。
実は彩音さんの物をこっそり盗んできたそうだ。後からそれがバレた時に、信はこっぴどく怒られたらしい。―――…と、いうのは、この数年後に信自身から聞いた話だ。


そして、俺の部屋が再び花で埋め尽くされそうになった頃、俺はようやく信に向かって手紙を書いた。
直接言ったりなんかしたら、言葉足らずの俺は、また誤解を受けるようなことを口走りそうだったからだ。


『花、ありがとう。けれど、部屋がもうすぐいっぱいになっちゃいそうだから、もうじゅぶんです。こんどからは、なにももたずにあいにきてくれても、だいじょうぶです。』

文章表現の拙さは目を瞑って欲しい。なにせ、あの頃の俺は、文字を書く機会なんてなかったんだ。
それを封筒に入れて、信に渡して欲しいと頼んだ時のあの母親の顔は今でも忘れられない。
他人に手紙を書くなんて、それまで一度もして来たことなかったんだから当然と言えば当然か。


その日の夜、布団に入りながら俺は初めて明日が待ち遠しくなった。
俺が書いた手紙を握りしめて、藪の中から信が顔を出すのが楽しみで。



永久に枯れぬ花
(今でも俺の机の引き出しに取ってあることは、あいつには絶対に知られたくない秘密だ)
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