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拍手レス

・夢叶さん≫信「拍手ありがとうございます、夢叶さん」

火神「先生黄瀬と一緒に暮らしてるとたまに黄瀬のテンションがウザくならねぇの?」

黄瀬「ちょっ!火神っちヒドッ!!」

信「へ?そんなことないけど。なんか年下の子に懐いてもらえると弟みたいで嬉しくって」

黄瀬「っ〜〜〜〜〜〜!しんさぁぁぁぁぁああああん!!俺信さんちの子になるッスぅぅぅううううう」

信「あはは。俺はいつでも大歓迎!」

夏「よし。結婚しよう、信。大丈夫、俺めっちゃ稼ぐから!だから黄瀬君を養子にして俺のお嫁さんにぃいいいいいだだだだだだだだだだ!!!!」

信「…………コイツのセクハラに比べたら、下心のない純真な黄瀬君のスキンシップなんてなんちゃないね。オラ、地面に頭めりこませろ」

黄瀬&火神「「(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」」

俺とルームシェア

「あ、蓮さん。お疲れ様でーす」
「おーお疲れ」

スタジオの隅で雑誌読みながら待機していた蓮さんを発見して、俺は声をかけた。
八神蓮、今話題沸騰中の実力派若手俳優。最近では、ドラマや映画だけじゃなく、CMや雑誌の撮影なんかにも積極的で、こうして休憩中に話す機会も増えた。

「どーよ?信との共同生活は」
「最初は結構不安だったんですけど、全然ストレスも感じなくって、むしろ快適ッス!」

何ヶ月一緒に暮らすかもわからない不安を抱えた状態で誰かと暮らすなんて、多少なりともストレスになるだろうと覚悟していたのに、俺の覚悟はあっさり思い過ごしに変わり、今では信さんとの共同生活に楽しさを覚えていた。

「今日のお昼のお弁当もすっごくうまくて!冷めてんのにおいしい弁当ってなかなかないッスよ!」
「あーまあ、家事の経験だけは長ぇからな、アイツ」
「でも、掃除は下手ッスよね。信さん」
「アイツのしてることは掃除じゃねぇ、立体空間パズルだ。もしくはジェンガ」

たしかに…アレはどこまで物が積めるか限界に挑戦しているようにも感じる…。信さん、他の家事は完璧なのに、なぜか掃除だけは苦手なんスよね…。
でも、それ以外のことではホントに世話になってると自分でも思う。俺がいつ帰ってきても、おいしいご飯用意してくれているし、時間が合う限り、一緒に食ってくれる。制服のシャツやネクタイがいつもシワなくパリッとしてるのは、信さんが丁寧にアイロンをかけてくれているからだし、部活やモデルの仕事で忙しい俺が勉強で遅れないように、教科書のポイントとなる所を教えてくれる。
親切で時々厳しいけど、とてもいい人だ。

「ほんと、いい人紹介してくれてありがとうございました。でも、なんであの時信さんを紹介してくれたんスか?」

ずっと前から引っかかっていたことを、この機会に俺は聞いてみることにした。
蓮さんは読んでいた雑誌を閉じて、俺と目を合わせると、ぽつりと言った。

「お前を初めて見た時、似てると思ったからだ」
「似てるって……信さんに?」

蓮さんは頷く。それに俺は軽く眉を寄せた。
…誰が見ても、俺と信さんは似ていないと思う。俺はよく喋る方だけど、信さんはどちらかというと聞き上手だし、大勢でわいわいいるよりかは、親しい少数のひとたちとのんびりするのを好むタイプだ。
嗜好にしたって、信さんはバスケはもうストバスとかのお遊びに留めてるし、甘い物は俺も結構好きだけど、信さんほどではないし…。っていうか、信さんはちょっと食べすぎだと思う。この間蓮さんから送られてきたケーキも、ほとんど信さんが平らげちゃったし…。糖尿病になんないんッスかね?

「……えーっと…ざっと考えてみたんスけど、俺と信さんの共通点が見当たらないっていうか…」
「お前、わりと何でもすぐ出来ちまうタイプだろ」

ズバッといきなり切りこんできた蓮さんの言葉に、心臓が跳ねた。

「やったことのないものでも、人の見てりゃすぐに要領つかんで出来ちまうし、むしろなんで周りが出来ないのかわかんなーいとか思ってるいやみ〜ぃな奴だろ、お前」
「…………」
「信もソレだよ。お前と同じ、いや信の場合はお前より一段階上だな」

お前、勉強はソコソコだろ。
また言い当てられて、俺はちょっと視線をはずした。蓮さんに笑われた。

「あいつはな、おそらくなろうと思えばなんにでもなれちまう。軍人、医者、パイロット、弁護士、警察官、政治家、デザイナー、歌手、シェフ、経営者、スポーツ選手その他色々……オペの仕方だろうが、魚のさばき方だろうが、アイツはすぐ覚える。一度見ればすぐできる。…お前もそうだろ?」
「えっと…医者とかは俺頭良くないんでムリっすけど…魚ぐらいなら楽勝ッス…」
「フン。嫌味な野郎め」
「ヒドッ!!」

蓮さんって実は結構口悪いッスよね!?

「……昔な、あいつがまだ大学生だった頃、ちょっと知り合いの秘書が体調不良で休んじまって、代わりにあいつにその仕事させたことあんだよ。そしたらあいつ、一週間で秘書の資格取りやがった」
「……は…」
「町中で逃走中のひったくりに出くわしてそいつを取り押さえたこともあったな。柔道なんか習ったこともねぇのに。「見たことあるから出来た」って、あいつは何でもないようにさらって言ってたよ」

すっと、背中をやけに冷たい風が撫でた。
俺も、今まで人の動きをコピーして真似ることはよくしていた。でも、信さんは多分俺よりも、コピーできる範囲が広い。それはおそらく、信さん自身のポテンシャルが俺より高いから。

「お前見た時、一目で信と同種だと思ったよ。だから、こそお前を信に託した」
「……どうしてスか?同族嫌悪で終わるかもしれないのに…」
「それはねぇよ。信は基本年下には甘いヤツだし、あいつは自分のことでキレたことはない。…少なくとも、俺の前ではな…」
「蓮さーん!お願いしまーす!」

タイミング悪く蓮さんに声がかかってしまった。蓮さんはスポットライトの方へと歩いて行く途中、一度だけ俺の方を振り向いた。

「…コッチの世界はお前の想像以上に魔物が多い。まだまだ青い芽のお前にはちょっと添え木が必要だ。……潰されんなよ」

 

 

 



―――…黄瀬はマンションのエレベーターの中でぼんやりとしていた。
今日は確か信さんの方が早く帰ってくるから、きっともう夕食を用意して待っててくれている…。そう考える一方、心には蓮の言葉が、魚の小骨のように引っかかったままで、いまいち気持ちがすっきりしなかった。

「お、黄瀬じゃん」

エレベーターを降りたところで、階段を使ってきたらしい火神と鉢合わせした。

「火神っち!今帰りッスか?ずいぶん遅いッスね」
「黒子たちとマジバ寄ってから帰ってきたんだよ。今週、マジバのシェイクとチーズバーガー100円なんだぜ」
「マジで!?」

明日あたり、先輩たちを誘って寄ろうかな…と考えていると、数歩前を歩いていた火神の足が止まった。

「火神っち?どうし…っ!?」

火神の隣に立った瞬間、鼻に入ってきた異臭に、黄瀬は素早く鼻を手で覆った。横を見ると、火神も眉間に深い皺を刻みながら鼻をつまんでいる。

「……なんだよこの臭い…」
「…なんか…汗のにおいと…歯医者のにおいと、病院のにおいが混じってるような…」
「『混ぜるな危険!』って感じのにおいだったよな…」

二人は鼻を押さえながらおそるおそる足を進める。
すると、信の部屋のドアの前で力なく座りこんでる人影があった。火神たちの気配に気づいたのか、座っていた者は、膝の間に埋めていた顔をのろのろと上げた。

「なっ…夏!?」
「おー…タイガーやないの…おばんですー」
「いや、おばんですってか、何でアンタがここに…!!」
「知り合いッスか!?火神っち!!」
「先生の学生時代のダチだよ!つーか、臭っ!!顔白っ!!大丈夫かアンタ!?」
「あははー…タイガーが、さんにんにぶんれつしてみえるわ…なんやこれ」
「しししし信さーん!信さーん!!あけてぇぇぇえ!!」

ご友人の方が色々ヤバイッスーーーー!!
そう叫びながらインターホンを連打していると、ただならぬ事が起こっていると思った信が、中から飛び出してきた。
そして、火神に肩を貸してもらってなんとか立っている夏を見つけた途端、憤怒の形相で怒鳴った。

「またかこのロクデナシ!!」
「しぃーん…なんかくわして…」
「その前にまず風呂だ!!ご近所さんに異臭騒ぎで通報されたらどうしてくれんだこの馬鹿!!火神君!悪いけどその馬鹿風呂場に突っ込んでくれる!?」
「お、おう…」
「黄瀬君はこの馬鹿の服洗濯機に突っ込んで!絶対自分の服と一緒に洗っちゃダメだよ。臭いうつるからね!」
「りょ、了解ッス」

信の飛ばした指示通りに各自テキパキと動いた。
火神と黄瀬が言われたことをやり終えてリビングに来た時には、信は増えた人数分の料理を作っている最中だった。

「あ、二人ともありがとう。ごめんねー巻き込んじゃって。火神君もよかったらご飯食べてって」
「んじゃあ、もらう。…それより、あの人なんであんなところで力尽きてたんだ?」
「あいつの職場って、研究中は忙しくて自分のアパートに帰る暇もないんだよ。だから研究室に寝泊まりしながら研究続けることが多いの。で、研究に一段落つくとアパートに帰れるわけだけど……何日もほったらかしにしたアパートに食料があると思う?コンビニ弁当買うにも、あの姿で店入れないでしょ?」
「……じゃあ、まさか…」
「そのまさかだよ。あいつは毎回俺んとこに飯たかりに来るの。しかも、俺の部屋にたどり着く前に力尽きて倒れてることがほとんど。…一回、同じ階に住んでるOLさんが先に見つけちゃってちょっとした騒動になったんだよ…あの社会人になっても自分の健康管理すら満足にできない馬鹿のせいで!」

ダン!!と、まな板の上に降ろされた包丁が、魚の頭と胴体を真っ二つに割った。

「ああ!!ちくしょう!!半年以上間隔が空いてたから油断してた!!アイツの中に生活能力なんて小指の爪ほども残ってないって知ってたはずなのに!!!」

ダン!ダン!と包丁で次々と食材を切っていく信の口調は、火神と黄瀬が今まで聞いたことがないほど荒いものになっていた。
特に学校での信を見ている火神には、どれだけ被っていた猫の皮が厚かったのかがわかった。
オイ、誰だよこの明らかに堅気じゃねぇ刃物の扱いしてる奴。

「はぁ〜っ。さっぱりしたわぁ…今日の晩飯なに?」
「風呂からパンツ一丁で出てくんなっていっつも言ってんだろうが!!」
「いだっ!!」

的確なローキックが夏のむこう脛を捕らえた。
先生って、夏にはわりと暴力的だよな…。信が調理した料理をテーブルに並べながら、火神は足を押さえうずくまる夏を眺めていた。

「せ、せやかて俺の服クローゼットのいつもの場所になかったし…!!」
「半年も同じ場所に置いておくわけないだろ…ったく、持ってくるからバスタオルでも巻いておけ!!」

包丁をまな板に置くと、信は肩を怒らせながら夏の服を取りにキッチンを出ていった。
夏は蹴られた足の痛みが治まると、結局パンツ一丁の格好のまま、冷蔵庫の中を開けて、中の物を物色し始めた。

「おい、夏…先生戻ってくるまでにタオル巻いとかねーとまた先生に蹴りいれられるぞ」
「え〜せやかて、あっついんやもん…」
「湯冷めしたらどうすんだよ。ったく、これでも羽織っとけ」

火神はそう言って、自分のスポーツバックの中からジャージを取り出して夏に投げた。今日はたいして着てないから、汗臭くもないだろう。

「お〜おおきに、タイガー」
「火神っち、信さんの友人の方とも知り合いなんスか?」

信の調理を引き継いで、アジにパン粉をつけていた黄瀬は、不思議そうに首をかしげた。今日はアジのフライだ。

「夏は一回俺らの学校に見学に来たことあんだよ。そんで誠凛の練習にまじってミニゲームやったんだ」
「えっ!バスケ出来て、信さんとも知り合いって…ってことはもしかして蓮さんとも知り合い!?」
「せやせや。れーちゃんとも知り合い。あと一人千博ってのもおって、学生の頃はその4人でずーっとつるんどったんよ」

夏は冷蔵庫から冷えた牛乳を取り出し、勝手にコップについでいる。そんな勝手な振る舞いも、気心知れた友人の家だからこそ出来るのだろう。

「そういや、自己紹介してへんな。初めましてー信の親友の雨宮夏っていいますー。今はお薬作るお仕事しとります」
「ああ、だから研究とかなんとか信さんは言ってたんスね…初めまして、知ってるかもしれないッスけど、黄瀬涼太ッス」
「おう、信とれーちゃんから聞いとる。なんや大変な目にあっとるようやな。まあ、信がおったら最悪の事態にはならんから、気張り」
「……ッス…」

雑誌で見て知っている、ではなく、信と蓮から聞いたから知っていると言ってくれるのが、なんとなく嬉しかった。

「おら、さっさとそれ着ろ!」

部屋から戻ってきた信は、夏の顔面に向かって服を投げつけると、途中で放り出していた料理に再び取りかかった。

「ごめん。火神君、黄瀬君まかせちゃって…特に火神君はお客さんなのに」
「別にいい。メシもらうんだし、こんくらいはする」
「そうッスよ。信さんにはいつもお世話になってるんだし」
「……ホントごめんね」

二人とも、今時の若者にしては本当にいい子だと信は思う。あの悪友の世話をした後だと尚更。

「あとちょっとだし、火神君も黄瀬君も座ってて。あとは俺がやっちゃうから」
「おう」
「了解ッス」

火神と黄瀬が席に着くと、着替え終わった夏も席についた。
夏は信が調理に専念しているのを見ると、火神に向かって小声で話しかけてきた。

「タイガー、ほれこれテッちゃんが言っておった俺らの文化祭の時の写真とDVD」
「えっ、わざわざ持ってきてくれたのか!?」
「いや、俺も久しぶりに信の手料理食いたかったし、これはそのついでやついで」
「……サンキュ」
「ん。あとそのDVD見るには注意事項が一つあんねん」
「注意事項?」

首をかしげる火神に、夏はいたずらをするような子供の顔で笑っていた。

「おう。詳しくはケースに挟まっている紙を見てな」
「よくわかんねーけどわかった。…っていうか、前々から思ってたけどなんだよそのタイガーって」
「いや、俺関西人やし、阪神ファンやし…そしたらもうタイガーって呼ぶしかないやろ」
「意味わかんねぇよ!!」
「何々?何の話ッスか?」
「んー俺らの文化祭の時の写真とDVD。タイガーのお友達のテッちゃんが見たいゆーとったから持って来たんよ」
「夏、黄瀬は中学時代黒子と同じチームメイトだったから黒子のことは知ってるぜ?」
「あ、そうなん?」
「えっ!?信さんの!?なにそれ俺も見たい!!」
「バカッ!声デケェよ!!先生に聞こえちまうだろ!!」
「ははっ。知ったら没収確実やから気をつけてなー」

ついでに、その時は確実に夏の命も消えうせる。

「火神っち!俺にも見せて!!」
「やだよ!黒子が頼んだんだから俺らが先だっつーの!!」
「いいじゃないッスか!俺だって信さんの知り合いだし!!」
「他校のお前には関係ないだろうが!先生は誠凛の教師だぞ!!」
「別に信さんの学生時代の写真見るのに誠凛も海常も関係なくね!?」

ぎゃぁぎゃぁ、小声で言い争いを続ける火神と黄瀬を見ながら、夏は信に聞こえないようにテレビの音量を少し上げた。まあ、フライの油の音で、キッチンにいる信にはほとんど聞こえてないだろう。
そして、火神と黄瀬に目を戻すと、夏は目尻を下げた。
さっきから火神の言葉の裏には、先生は俺らの先生だ!という主張が見え隠れしているし、黄瀬は黄瀬で誠凛だけで独り占めするのはよくない!と、意地になっている。それに気づけないのは、二人の幼さゆえだろう。

(……ほんま…人気者やなぁ、信センセー…)

学生時代からの面倒見の良さは全然変わってないらしい。
きっとどの先生よりも生徒に献身的に尽くしているのだろう。だからこそ、こんなに生徒に好かれている。

「フライ揚がったよー。…何かずいぶん賑やかだったけど何話してたの?」
「いや?よう生徒に好かれる先生になったな、信」
「…は?」

片眉を器用に上げて怪訝な表情をする信に、夏はほんの少しだけ声に出して笑った。

 



おまけ→
▼追記

拍手レス

・玲奈さん≫緑「返信が遅くなり大変申し訳ありませんでした。テニプリ…大丈夫でしたか…!?正直キャラ崩壊してないかドッキドキだったんですが…。でも、いままでに書いていなかったジャンルだったので面白かったです。拍手ありがとうございました」

拍手レス

・玲奈さん≫緑「こんばんは、玲奈さん。書かせて頂いたテニプリの小説をアップいたしました。キャラ崩壊していたらすいません。コミック読んで勉強しときます!暑い日が続いているので、玲奈さんもお気をつけて。それでは、拍手ありがとうございました」


・Dグレ連載読ませていただきました!〜の方≫緑「初めまして、ありがとうございますお客様。かなりスローペースでの更新になりますが、また気が向いた時に立ち寄っていただければ光栄です。拍手ありがとうございました」

テニプリ混合

「そういや越前、お前んち確か今日から親御さんいないんだって?」
「…ッス。なんか、全員それぞれ用事あるとかで、一週間くらい俺一人ッスね」

父の南次郎は、珍しく住職の仕事があるとかなんとか(真偽は定かではない)で、家を空け、母も友達と温泉旅行にでかけた。下宿している奈々子も、サークル活動だとかで、今日、大きめのボストンバッグを持って出かけて行った。
今日から一週間、越前家はリョーマ一人なのである。まあ、幸い夏休みということもあり、なんとかなるだろうと、リョーマは気楽に考えていた。

「へぇ〜。おチビ、寂しいなら俺が泊まりn―――」
「あ、結構ッス」
「…お前…先輩の心使いをバッサリ切るなよ…しかも菊丸先輩最後まで言ってねぇし」
「わぁ〜ん大石ー!おチビが冷たいー!!」
「いつも通りじゃないか?」
「大石先輩も結構天然と言う名の刀でバッサリいきますね…!」
「お疲れっしたー」
「越前んんんんんん!!!この状況放置してよく帰えれんなお前!!逆に尊敬するわ!!」

周りがまだ騒いでいる間に、越前は一足早く部室を後にした。
通学路の途中の自販機で、ファンたグレープを購入して、それを飲みながら、のんびりと歩道橋を渡る。沈む夕日が高層ビルに反射して、リョーマの横顔をオレンジ色に染め上げる。
車のエンジン音と雑踏が飛び交うオフィス街を抜けて、閑静な住宅街までくれば、家はもうすぐそこだ。

「あ…晩御飯の惣菜……」

出かける間際に、母がご飯は炊いてあると言っていた。
しかし、リョーマは普段から料理をするどころか、台所に立つことすらない。帰る時に、近くのスーパーで総菜を買っておこうと思ったのだが、ついいつものようにほとんど寄り道せずに帰ってきてしまった。

(……まあ、いっか……)

ここまで帰ってきて、今更スーパーまで引き返すのも面倒臭い。最悪、今日はふりかけごはんか塩おにぎりですませよう。
自分のミスにため息をつきながら、止まっていた足を再び動かそうとしたその時―――

「待ちやがれぇぇぇえええええええええええええ!!!!」

後ろの方から聞こえた怒号に、リョーマは再び足を止めた。
そして振り返えろうとした瞬間、自分の横を何かかが二つ、高速で過ぎ去っていった。

「待ってって言ってんだろうがゴルァ!!俺のパスポート返せぇぇぇぇえええええ!!」

……うわ、メッチャ速。じゃなかった。事件だ。わりと大変な。
リョーマは、背負っていたバッグからテニスラケットを取りだすと、飲み終えた空き缶をそれで思いっきり打った。
良い音を立てて飛んでいった空き缶は、一直線にひったくりの頭に向かって飛んでいき、「うっ!」と短い声を上げて、ひったくりは足をもつれさせた。
その好機を少年は見逃さなかった。

「にっがすかァーーーーーー!!」

速度を殺さず、そのままひったくりに向かって飛び蹴りを喰らわせた。
「ゲフッ!!」っと間抜けな声を上げて倒れこむひったくり。その手から離れるパスポート。少年は慌てて手を伸ばす。
宙を舞うパスポートは綺麗な放物線を描いて高く高く飛び、そして―――――


ポチャン

ドブ川の中へと吸い込まれていった。
かける言葉が無いというのは、今みたいな状況のことを言うんだな、と越前は漠然と思った。

「テメェ……」

ゆらりと振り返った少年の顔を直視した瞬間、ひったくりは「ヒッ」と短い悲鳴を上げた。

「人様のカバンからパスポート盗んだあげく、それをドブ川に捨てやがって…!ちったぁ地に足付けて自分でまっとうな金稼いでみろやこの屑野郎がぁぁぁああああああ!!」
「ゴフッ!!」

男の急所に一発。容赦のない蹴りだった。
それからも少年の怒りは収まらず、自主規制をかけなければ危ないレベルの暴言を吐きながらひったくり犯を殴り続けていたので、家の前でこれ以上騒ぎを起こされては面倒臭いことになると、仕方なく、リョーマは声をかけた。

「ねぇ」
「あん?」

振り返った容姿にリョーマは思わず目を見張った。
大きな黒目がちの眼に、色白な小顔。一瞬、女子なのかと思ってしまったが、これまでの回想を頭の中に浮かべ、リョーマはそれを否定した。
女子にしては言動があまりにも乱暴すぎる。っていうか、男の急所を容赦なく蹴りあげる人間が、女子であってほしくない。

「……人んちの前でこれ以上騒ぎ起こすのやめてくんない?」
「あ、すいません。ここのお寺の方ですか。申し訳ないんですがこのゴミをそちらで火葬していただけないでしょうか。墓は無縁仏ので結構なんで」
「犯罪の片棒担ぎたくないからヤダ。っていうか、ゴミじゃないしソレ」
「ゴミだよ。社会の」
「スイマセン…ゴミでスイマセン……」

とうとうひったくり犯が泣きだした。

「……とにかく、向こうに交番あるからそこ行くよ。パスポート、再発行しなくちゃいけないんじゃない?」
「…………」

ようやく冷静になってきたのか。少年は黙ってリョーマの後についてきた。ひったくり犯を引きずりながら。
ちらりと、後から付いてくる少年の姿を盗み見ながら、リョーマはなんだか面倒臭いことに巻き込まれてしまったとため息をついた。

俺の不幸エンカウント率はハンパじゃない〜越前リョーマとの出会い〜
「再発行に2週間…だと…!?」
「え、そんなかかんの?」
「どうしよう…東京に親戚なんかいないし…ホテルにそんな何泊もできないよ…」
「……………あのさ、アンタ料理ってできる?」
「へっ?まあ…人並みにはできるけど…」
「ふーん。じゃあ、うち来れば?丁度今日から俺以外の家族出かけてて、一週間なに食べてこうかなって思ってたとこだし」
「………いいの?」
「何、不満なの?」
「いや、全然。むしろありがたいくらいだけど…でもいいの?自分で言うのもなんだけど、こんな見ず知らずの男家にあげて…」
「代わりにアンタには俺んちの家事やってもらうし。ギブアンドテイクだよ」
「……お言葉に甘えさせていただきます…」
「アンタ、名前は」
「観野…観野優人です」

+++++++
久しぶりに母国に戻って、東京見物に来たら、改札出た瞬間に引ったくりにエンカウントした安定の不幸体質。普段はイギリスに滞在。とりあえず、パスポート再発行するまで越前家に居候する代わりに、越前家の家事をすることにした。
しかし、お昼にと作ったお弁当を青学先輩らに見られ「越前に彼女が出来た!」と騒がれ、越前が否定するも、聞く耳持たず、それどころか連れて来いと詰め寄られ、翌日青学テニス部に連れて行く羽目に…。
ちなみに、優人にテニスラケットを持たせて、ボールを放つと、ほぼ垂直にボールを叩き落とされる。足も速いし、体力もあるので、どの位置にいても余裕でボールに追いつくのだが、もれなく叩き落とされる。自分の前に飛んでくるものは、地面へ叩きつける習慣が身についてしまっているため、テニスでは素人以前の問題。


<SAN値直葬罰ゲーム―青学―>

やることもないので、青学テニス部の見学に来て早2日。レギュラー陣は全員優人の顔を覚えたようで、優人がパイプ椅子に座っているのを見ると、気軽に声をかけてくれる。

「さて、今日のランニングで一番遅かったものにはこの新作ドリンクを飲んでもらう」
「「げ……」」

乾が手に持つ緑色を基調としたドリンクを見て、全員が顔を青ざめた。…そこらのドブ川から汲んできたんじゃねぇの?アレ。

「ちょっ、ちょっと待ってよ乾!さ、最近罰ゲームもマンネリ化してきたしさ、今日はちょっと変えてみない?」

ナイス!菊丸先輩!!
レギュラー陣は、乾に見えないように、グッとガッツポーズをした。

「ふむ…たしかにここ最近、改良しているとはいえ、同じような内容だったな。ならば、どんな罰ゲームがいいだろうか?」
「えっ!?えーっと……あっ!ゆ、優人!優人に決めてもらうってのはどう!?」

突然話題に上った優人は、お手玉に使っていたテニスボールを落として、びっくりした顔をしていた。

「せっかく見学に来てくれてるんだしさぁ!優人にもちょっと参加させてあげようよ!!」
「えっと…俺が決めちゃっていいんですか?」
「うんうん!!」

少し考え込むそぶりを見せてから、優人は言った。

「最下位の二組が『My Heart Will Go On』を熱唱しながらタイタニックの船の先端で恋人たちがやったあの名シーンを再現。 勝った人たちは、それを写メったり動画取って誰かに送りつけてOK」
「えげつないほどの精神攻撃!!」

+++++++
越前が罰ゲームを受ける時は、持ち上げられてライオンキングの名シーンに変更されると思われます。


<氷帝との練習試合を見物しました>

「なんや、青学さんとこにずいぶん可愛らしい子がおるわ」
「…うわ、マジだ。マネージャーでも入れたのか?」

忍足と宍戸がそんな会話をしていると、他の氷帝のレギュラー人たちも興味を持ったのか、青学のベンチの方を見てみると、確かに見かけない子が1人いた。

「マネージャーだァ?おい、手塚。こんな時季外れに入れたのか?」

本日の練習試合の打ち合わせをするために、丁度氷帝側のベンチを訪れていた手塚は、溜息を吐いて言った。

「……彼はうちのマネージャではない。あと、言っておくが男だ」
「へ……?」
「はぁぁぁぁああああああ!!?」
「嘘や!!あんな、おめめパッチリ色白のお人形さんみたいな男がいるわけあらへん!!」
「クソッ!あれで男って…!あれで男って…!!」
「おい、涙拭けよ…お前……」
「……ウス」
「ああ、樺地…ハンカチありがと…って、ずいぶん可愛いの使ってんなオイ!」

なんだか、試合前から氷帝のメンバーの精神を随分乱してしまったようだ。言葉で言うより実際本人に説明させた方がいいだろう、と判断した手塚は、ベンチにいる優人をちょいちょいと手招きした。

「どうかしましたか?手塚先輩」
「ああ、お前が見学する旨を氷帝学園に伝えるために自己紹介をしてほしいと思ってな」
「あ、はい。はじめまして、観野優人です。イギリスから一時帰国してたんですが、電車の改札出てすぐにパスポート盗まれて、その上パスポートが川ポチャしてしまったので、パスポートが再発行されるまで越前家にお世話になってます。今日はこちらの学校と練習試合があると聞いたので、見学に来ました」
「……と、いうわけなんだが、見学させてもらってもいいか?」
「かまわねぇぜ」
「ありがとうございます」
「そうか大変やったなぁ〜アメちゃんやるわ」
「わーい!」
((犯罪臭く見えんのはなんでだろう…))

忍足からもらったアメをカラコロと口の中で転がしながら、優人は手塚と共に青学ベンチへと戻っていった。




――――それから間もなくして、青学と氷帝の練習試合が開始された。
テニスシューズから火花飛び散るわ、ボールがフェンスへこませるわ、そのボール自体がVの字に歪んでるわ……青学の練習でも散々見てきたが、若者の人間離れ激し過ぎだろ、と考えたところで、そういや自分の身内も十分人間離れしていたことに優人は気付いた。

「これだから最近の若者は…」

自分もその若者のウチの一人だという自覚はない。

「スケスケだぜ!!」

耳を疑うような言葉にも、もう慣れた。…女子に言ったら平手もんだよね、このセリフ。

「……跡部さんちは、接骨院か何かなのかな……」

ぼそりと呟いたその言葉を耳にした青学のレギュラー人たちが、鍛え上げられた筋肉を総動員して爆笑を耐えていたのを、優人は知らない。

笑いをごまかすために誰かが言った「青学ファイットー」の声援が裏返って、何事だと手塚と跡部は思わずベンチを振り返った。


++++++
うーん…ムズカシイ…。
すいません、玲菜さん。

コミックも買ってないし、アニメも曖昧にしか覚えていないからキャラがよく掴めていませんね……。キャラ崩壊してたらすいません。
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