ゆっくりと煙を吐き出す。見上げた夜空にはキラキラと宝石を散りばめたように星が瞬いていて、ああ戦場で見上げた時もこんな風に頭が空っぽだったなと苦笑した。
「‥すっかり悪人だな」
些細な事で仲違いをした。街で偶然にケフカと行動を共にしている謎の仮面の男と話をしているところを見られてしまったのだ。お互いに剣を構えてはいたのだが疑われるのは当たり前で、軍師も言い訳をしないのだ。
「信じるよ、俺は」「‥殿下」
殿下は止めてくれよとマッシュは笑う。軍師が泣いているように見えて、放っとけなかったのだ。
「大丈夫、誰も疑ってなんかないよ」「‥いえ、いっそ疑われた方が楽なのかもしれません」「命は粗末にするものじゃないよ」「分かっております、しかし、我は」「駄目、セッツァーだって心配してるんだから‥勝手に一人でいこうなんて思うなよ」
図星を突かれて、目線を逸らす。仮面の男に渡された石を天に翳せば魔大陸に行けるのだ。誰にも言わず隠してはいるが、バレてしまうのも時間の問題だろう。このまま誰かに剣を向けて裏切りという形で誰にも属さずに単独行動をするのもいいのかもしれない。
「(今なら殿下に‥いや、今はまだ)」「ほら、難しいこと考えてる」
頭を撫でられて肩が震えた。優しく大きな手は自分の夫を連想させるのだ。弾かれたように見上げたマッシュは豪快に笑って軍師を引き寄せる。
「でんっ‥マッ、シュ」「俺、信じてるよ」「‥その優しさ、いつか後悔致しますよ」
構わないよと抱き締める腕に力を込めた。軍師はやはり裏切るときはこの方に剣を向けようと強く思った。

あれ、いつのまにか殿下フラグ?賭博師はどうした←